蘇りの血
監督:豊田利晃
出演:中村達也 草刈麻有 渋川清彦 新井浩文 板尾創路 ほか
2009年12月19日(土)よりユーロスペースにてロードショー
2009年/ヨーロピアンビスタサイズ/モノラル/83分

1998年に『ポルノスター』で監督デビューして以降、『青い春』『アンチェイン』『ナイン・ソウルズ』と衝撃的な作品を次々と発表してきた豊田利晃が、多くの映画賞を受賞した『空中庭園』以来4年ぶりとなる新作『蘇りの血』を完成させた。
今回、豊田監督がモチーフに選んだのは浄瑠璃や歌舞伎の題材としても知られる説話“小栗判官”だ。毒殺されたのち、目も見えず口も聞けない餓鬼阿弥として現世に戻った小栗判官が、熊野にある「つぼ湯」につかることで元の姿に蘇るという伝説である。実際に熊野を旅しつぼ湯を訪れた豊田監督はこの説話にインスピレーションを受け、はるか古の時代を舞台としたエネルギッシュな蘇りの物語を生み出した。
主演には、BLANKEY JET CITY解散後、LOSALIOSをはじめ数々のバンドで精力的に活動する日本有数のドラマーであり、俳優としても唯一無二の魅力を放つ中村達也が起用された。彼のまとったワイルドな空気がスクリーンをとおして観る者を圧倒する。さらに『フィッシュストーリー』などの渋川清彦、『ゲルマニウムの夜』などの新井浩文が共演、危険な香りを漂わす男たちが顔を揃えた。そして、初監督作も話題の板尾創路や、マメ山田という個性派が独特の存在感を放つ。また、ヒロインには俳優・草刈正雄の実娘であり、ドラマ出演のほかモデルとしても活躍する草刈麻有が抜擢され、はかなげな表情の中に凛々しい強さをあわせ持った姫を好演している。
力強い映像と、中村達也と豊田監督がメンバーとして参加するTWIN TAILのサウンドによって描き出される「生命力」。『蘇りの血』は現代に贈る再生の神話だ。

腕利きの按摩・オグリ(中村達也)は、闇の世界を司る大王(渋川清彦)の砦へとやって来た。女遊びが祟って病をうつされた大王を癒すために招かれたのだ。
オグリの腕を気に入った大王は、体の毒が抜けるまでオグリをそばに置こうとするが、その日暮らしの好き勝手を好むオグリはその言葉に従おうとしない。さらに、大王のお気に入りであるテルテ姫(草刈麻有)に、大王のもとから逃げるのをそそのかすような言葉をかけたのが大王に気に触った。健康な肉体への嫉妬と自分に従わないことへの怒りから、大王はオグリを酒宴の席で罠にかけて惨殺してしまう。
あの世へと旅立ったオグリは、天国と地獄の間で奇妙な男(板尾創路)と出会い「やり残したことがある」と現世に戻ることを願う。「現世は地獄」と忠告しつつも、男はオグリをふたたび現世へと送り出した。
だが、現世に戻ったオグリは体の自由が利かない餓鬼阿弥の姿となっていた。オグリを見つけた和尚(マメ山田)は、オグリを蘇らせるために、人々の手を借りてオグリを“蘇生の湯”へと連れていこうとする。
そのころ、砦ではシュマ(新井浩文)という男が大王のもとを訪れていた。その隙をついてテルテは砦を逃げ出し、森の中で偶然にオグリと再会を果たした。テルテは、まだ体が硬直したまま、言葉を交わすこともできないオグリを元の姿に戻すため、懸命に “蘇生の湯”を目指そうとする。
一方、テルテが姿を消したことに気づいた大王は、手下とともにテルテを追う……。