初夏。薮崎千華(新妻聖子)は、人間関係の悩みなどから会社にいくのが怖くなり、会社に向かう途中、あてもなく電車に飛び乗った。眠り込んだ千華が目を覚ますと、そこは千葉県横芝光町。窓の外には水田の美しい景色が広がっていた。
横芝光町で農業を営む広瀬晋平(筧利夫)は、水田の中で手紙の入ったペットボトルを見つけた。それは、水田を訪れた千華が、誰かに救いを求めて書いた手紙だった。手紙を読んだ晋平は、千華への返事を書く。
千華は母親(宇津宮雅代)の希望で子供のころからピアノを習い、音楽の道を目指していたが、父親(村野武範)との意見の違いから進路に悩み、大学に馴染めず中退してしまった。その後アルバイトを始めても長続きせず、人と会うのを怖れて部屋に引きこもるようになっていた。千華が晋平の水田と出会い、SOSの手紙を書いたのはそんなときだった。
晋平からの返事を受け取った千華は晋平と文通を重ね、やがて横芝光町を訪れるようになる。かつての職場の先輩の逸子(秋本奈緒美)とともに農作業を体験し、晋平と一緒に農業に携わる青年・新(三上真史)、晋平の農業の師匠・山原(松方弘樹)、晋平の姪・奈緒(紗綾)たちとの交流を深める中で、千華は久しく忘れていた生きることの喜びを感じていた。
千華が水田と出会ってから1年経った初夏、千華は泊りがけで横芝光町を訪れて農作業に従事する。そして、東京の母と手紙を交わす中で、母親との関係にまっすぐ向きあいはじめるのだった。
そんな横芝光町での日々を送る中で、千華は晋平が逸子に寄せる想いに気づいてしまう。翌朝、千華は晋平になにも告げずに町を出た……。
アンダンテ〜稲の旋律〜
監督:金田敬
出演:新妻聖子 筧利夫 松方弘樹 ほか
2010年1月23日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー ほか全国順次上映
2010年/カラー/ビスタサイズ/110分
世間にうまく馴染むことができず、引きこもりになった女性・千華。自然農業に取り組む晋平たちとの交流の中で、彼女はずっと忘れていたものを取りもどしはじめる……。
アンダンテとは“ゆっくりと、歩く速度で”の意味を持つ音楽用語である。旭爪(ひのつめ)あかねの小説「稲の旋律」を原作とした『アンダンテ〜稲の旋律〜』は、“アンダンテ”で再生に向かう女性の姿を農業や食の問題とともに描いていく。
主人公の千華を演じるのは、「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」など大作ミュージカルに出演し、歌手としての活動も好調な新妻聖子。映画初出演にして初主演となる本作では、悩みながらも一歩ずつ前に進んでいく女性を熱演している。
そして晋平には「踊る大捜査線」シリーズや大林宣彦監督作品など、ドラマ・映画・舞台と幅広く活躍する筧利夫。明るく実直な晋平を、筧ならではの持ち味で魅力的に演じてみせた。
そのほか、ベテラン・松方弘樹が貫禄の存在感を見せるのをはじめ、秋本奈緒美、宇都宮雅代、村野武範と実力派が脇を固めた。また、三上真史、紗綾のフレッシュな演技や、中条きよしが友情出演で登場しているのにも注目だ。
監督は『青いうた のど自慢青春編』で監督デビューし『愛の言霊』『春琴抄』など人間ドラマに定評のある金田敬(かねだ・さとし)。本作では作品のテーマに寄り添うように、登場人物の心象を丁寧に描き出している。
舞台となった千葉県横芝光町の全面協力のもと、実際に稲の成長にあわせ、2009年春から数ヶ月にわたり撮影を敢行。美しい田園風景は、この映画のもうひとつの主役となっている。
- 薮崎千春:新妻聖子
- 広瀬晋平:筧利夫
- 堀川逸子:秋本奈緒美
- 小林新:三上真史
- 高山奈緒:紗綾
- 薮崎由利恵:宇都宮雅代
- 藪崎信昭:村野武範
- 榎本隆之:ぶっちゃあ
- 吉原冴子:宮内知美
- 坂上靖史:萩野貴継
- 広瀬雄平:上田耕一
- 広瀬静子:正司照枝
- 駅長:中条きよし(友情出演)
- 山原健蔵:松方弘樹
- 監督:金田敬
- 原作:旭爪あかね「稲の旋律」(新日本出版社刊)
- 脚本:山田耕大
- 企画・製作:林壮三郎
- プロデューサー:利倉亮
- ラインプロデューサー:江尻健司
- 撮影:志賀葉一
- 照明:佐々木英二
- 録音:山口勉
- VE:小澤進司
- 美術:山田好男/早坂英明
- 編集:桐畑寛
- 助監督:江利川深夜/上野貴弘
- 制作担当:酒井識人
- 衣裳:村島恵子/澤田枝里
- ヘアメイク:大久保恵美子/間宮直子
- スチール:佐藤初太郎
- メイキング:榎本敏郎
- キャスティング:松永琴
- 音楽:山谷知明
- 製作:ゴーゴービジュアル/(株)ブルボン
- 制作プロダクション:株式会社レジェンド・ピクチャーズ
- 制作支援:千葉県横芝光町民の会
- 配給:ゴーゴービジュアル企画