北海道の海炭市。この町では、さまざまな人々がそれぞれの生活を送っている。
井川帆波(谷村美月)は幼いころに親を亡くし、兄の颯太(竹原ピストル)と暮らしている。颯太の働く造船所が業績不振を理由に大規模な人員削減を実施し、ストライキの甲斐もなく颯太は仕事を失ってしまった。やがて大晦日を迎え、自宅で年越しそばを食べた帆波と颯太は、初日の出を見るため大勢の人で賑わう山へと向かった。
造船所のストがおこなわれていたころ、独り暮らしの老婆・トキ(中里あき)のもとを役所の職員・工藤まことが訪ねていた。町の再開発のため、トキを残して近所の人々はみな立ち退いていた。工藤は、このままだと強制退去になるとトキを説得しにやってきたのだ。
プラネタリウムの職員・比嘉隆三(小林薫)は、妻の春代(南果歩)の夜の仕事を苦々しく思っているが、妻は今夜も仕事に向かう。息子とは会話もなく、隆三の家には寒々とした空気が漂っている。そんな隆三は、いつもプラネタリウムにやってくる少年に声をかけ、星座盤をプレゼントする。
造船所の人員削減がおこなわれだしたころ、町のガス屋・目黒商店の社長・牛島春夫(加瀬亮)は、東京から来た萩谷博(三浦誠己)とともに浄水器の販売を始めていた。春夫は萩谷とともに得意先を回るが反応は芳しくない。家では妻の勝子(東野智美)と前妻との息子・アキラの関係がうまくいかず、春夫は苛立ちを募らせていた。
路面電車の運転手・達一郎(西堀滋樹)は、ある日、町を歩く萩谷の姿を見かける。萩谷はこの町の出身だったのだが……。
海炭市叙景
監督:熊切和嘉
出演:谷村美月 竹原ピストル 加瀬亮 三浦誠己 山中崇 南果歩 小林薫 ほか
2010年12月18日(土)より渋谷ユーロスペースにてロードショーほか全国順次公開 11月27日(土)より函館先行ロードショー
2010年/カラー/35mm/DTSステレオ/152分
大きな造船所のある町・北海道海炭市。仕事を失い大晦日を迎えた兄妹や猫と暮らす老婆、家庭の不和を抱えたプラネタリウム職員……。佐藤泰志の同名小説を原作にした『海炭市叙景』は、この町で生きるさまざまな人々を描いた群像劇だ。
原作者の佐藤泰志は北海道函館市の出身で、1977年に作家としてデビュー。芥川賞候補に5回、三島由紀夫賞候補に1回名前が挙がるなど期待されていたが、41歳の若さで自ら命を絶った。映画の原作「海炭市叙景」は、佐藤泰志が故郷の函館をモデルにした“海炭市”を舞台に綴った連作短編である。この作品の持つ魅力に惹かれた函館市の人々が市民映画として映画化を実現させ、映画『海炭市叙景』は誕生した。
『鬼畜大宴会』『ノン子36歳(家事手伝い)』などを手がけてきた北海道帯広市出身の熊切和嘉が、企画に賛同して監督を快諾。脚本はこれまでも熊切監督作品の多くを手がけている宇治田隆史が担当している。
日本映画界を代表する若手女優のひとりである谷村美月と、熊切監督作品『青春☆金属バット』で俳優デビューしたミュージシャンの竹原ピストルが兄妹役を演じるのをはじめ、加瀬亮、山中崇、三浦誠己、村上淳、南果歩、小林薫ら日本映画界の誇るキャストが出演。函館イルミナシオン映画祭の運営にながく携わるなど、函館に縁の深いあがた森魚も出演している。
音楽はソニック・ユースなどでの活動で知られるジム・オルークが担当。落ち着いたサウンドが映像を一層際立てる。
函館でロケ撮影をおこない、地元の人々が出演者としても多数参加した『海炭市叙景』は、まさに函館市民と映画人とのコラボレーションにより生まれた作品である。
- 谷村美月
- 竹原ピストル
- 加瀬亮
- 三浦誠己
- 山中崇
- 南果歩
- 小林薫
- 伊藤裕子
- 黒沼弘巳
- 大森立嗣
- あがた森魚
- 東野智美
- 森谷文子
- 村上淳
- 西堀滋樹
- 中里あき
- 監督:熊切和嘉
- 原作:佐藤泰志「海炭市叙景」(クレイン刊「佐藤泰志作品集」所収/小学館文庫刊)
- 脚本:宇治田隆史
- 製作:菅原和博/前田絋孝/張江肇
- 企画:菅原和博/「海炭市叙景」製作実行委員会
- プロデューサー:越川道夫/星野秀樹
- ラインプロデューサー:野村邦彦
- 撮影:近藤龍人
- 照明:藤井勇
- 録音:吉田憲義
- 美術:山本直輝
- スタイリスト:小里幸子
- 編集:堀善介
- 助監督:野尻克己
- 音楽:ジム・オルーク
- 製作:「海炭市叙景」製作委員会(アイリス/スクラムトライ/日本スカイウェイ)
- 特別協賛:北海道新聞社/六花亭/unb北海道文化放送
- 支援:文化振興基金助成金
- 制作プロダクション:ウィルコ
- 制作・配給:スローラーナー
- 宣伝:太秦
- 配給協力:シネマ・シンジケート
- 北海道配給:シネマアイリス