北海道の架空の町・海炭市(かいたんし)で暮らす人々の姿を描いた『海炭市叙景』が12月18日に渋谷ユーロスペースで初日を迎え、竹原ピストルさん、加瀬亮さん、南果歩さん、あがた森魚さんら出演者が舞台あいさつをおこないました。
『海炭市叙景』は、1990年に若くして世を去った北海道函館市出身の作家・佐藤泰志さんの同名連作短編集を、海炭市のモデルである函館市民の企画により、熊切和嘉監督のメガホンで映画化した作品。
熊切監督はノロウイルス感染のため舞台あいさつは急遽欠席となりましたが「自分にとっても転機になった作品です。劇場を出たあとにも海炭市の人々に想いをはせていただけたら作り手としてこれ以上の幸せはありません」というメッセージが代読され、熊切監督作品には2003年公開の『アンテナ』以来の出演となる加瀬さんは「(監督は)『アンテナ』のころから変ってないですね。撮影のときにモニターを見ないで役者の近くで見つめてくれる監督ってほとんどいなくなったので、監督に応えようとして自然自分の意識以外のところで体が動いていくところが監督の映画にはありますね」と監督についてコメントしました。
また、熊切監督作品への出演は3作目となるミュージシャンの竹原ピストルさんは「“映画の撮影で函館に行ってくるぜ”と友達に言ったときちょっと誇らしかったし、カッコいいぜと思いました」と話し、客席の笑いを誘いました。
『海炭市叙景』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった竹原ピストルさん、加瀬亮さん、南果歩さん、三浦誠己さん、山中崇さん、あがた森魚さん(左より)
井川颯太役の竹原ピストルさんは「いつものことですが、とても監督が楽しそうにしてらっしゃって、ぼくは嬉しかったですね」とコメント
牛島春夫を演じた加瀬亮さんは「ほんとに、こういう小さな映画が多くの人に初日から観ていただけることを嬉しく思います」とあいさつ
「前の日に1日リハーサルして、その翌日に撮りはじめるという贅沢な時間の使い方でした」と撮影を振り返った比嘉春代役の南果歩さん
「(監督は)魂の奥まで見えてしまう人だと思います。魂の奥まで一生懸命演じているのを汲みとってくれる」と萩谷博役の三浦誠己さん
工藤まことを演じた山中崇さんは「海炭市という町と、海炭市に住む人々をゆっくり味わっていただけたら嬉しいです」とあいさつしました
「原作の佐藤泰志さんとは1歳違いで、偶然ですけど思春期に同じ函館にいました」と話した喫茶店のマスター役のあがた森魚さん
市民の企画からスタートした『海炭市叙景』には、地元・函館で募集されたキャストも多数出演しており、山中崇さんは地元キャストとの共演について「役者だとか素人の方というのは気にならなくて、会話をするシーンでは会話のキャッチボールで投げてくる球が面白くて楽しんで捕る感じでした。予想していない動きとかセリフの言い方とかをされるので、自分が固まってしまっているところがわかって勉強になりました」とコメント。
函館にゆかりが深く「函館代表としてここにきました」とあいさつしたあがた森魚さんは「函館は映画とかCMでよく使われているところなんですけど、地元の人たちの自発的な発想から始まって、東京のみなさんの力も借りて1本の作品になったということは滅多にないことなので、ぼくはすごく高揚しています」と初日を迎えた心境を語りました。
フィリピンで開催されたシネマニラ国際映画祭でグランプリと最優秀俳優賞(キャストのアンサンブルに対して)を受賞したほか、松本CINEMAセレクト・アワードで最優秀映画賞を受賞するなど、すでに国内外で高い評価を受けている『海炭市叙景』は、12月18日(土)より、渋谷ユーロスペースにてロードショーのほか、全国順次公開されます。