
東北のローカル線駅。初老の係員・富樫が働く“落し物あずかり所”には、今日もさまざまな落し物が届けられ、そして自分が失くしたものを探す人々が訪れる――。『Lost & Found』は、年齢も性別も異なる駅で行き交う人々が、そうとは知らずに“落し物”を介して誰かと“つながっていく”群像劇だ。
監督は、ニューヨーク市立大学で映像制作を学んだ三宅伸行。帰国後も自主映画製作を続け、短編『遺影』が第2回山形国際ムービーフェスティバルで準グランプリを受賞。同フェスティバルのスカラシップを得て、初の長編となる『Lost & Found』を完成させた。
キャストは、主人公の係員・富樫にハリウッドでも活躍するベテランの菅田俊。若い駅員・萩野に演劇集団キャラメルボックス所属で本作が初の映画出演となる畑中智行。盲目の女性に多くの作品に出演する藤井かほり、さらに坂田雅彦、寉岡萌希、菜葉菜、ひもの屋カレイら、個性豊かな出演者たちが演技のアンサンブルを紡いでいく。
そして山形県ロケによるどこか郷愁を感じさせる風景と、光と影を巧みに活かした映像が、物語を優しく観客に届けていく。
オースティン映画祭2008で長編映画部門グランプリを獲得したのをはじめ、海外の多くの映画祭で入選を果たしている『Lost & Found』は、「世界が愛した才能〜Global Recognition〜」の1本として公開される。自ら海外の映画祭に出品し評価を勝ち得た新鋭監督の挑戦は、日本のインディペンデント映画の新たな可能性を提示する。

東北地方を走るローカル線の駅のホームに落ちていたひとつのキーホルダー。誰かの手によって拾われたその“落し物”は、終着駅にある“落し物あずかり所”へと届けられる――。
駅の落し物あずかり所では、富樫(菅田俊)という初老の男が係員をつとめている。寡黙で強面の富樫だが、忘れ物の傘を届けに来たサラリーマンの相馬(坂田雅彦)にお茶を勧めたりと丁寧に接する。
新しく落し物あずかり所の責任者となった若い駅員の萩野(畑中智行)は、棚に並んだ引き取り手の現われそうな落し物を見て早く処分したほうが効率的だと主張するが、富樫は告げる。「たとえゴミにしか見えなくても、届けてくれる人がいるかぎり、それは誰かの落し物だ」。
相馬は、落し物を届けに来た日から、たびたび落し物あずかり所を訪れるようになっていた。富樫が「いつでも遊びに来てください」と声をかける一方、萩野は露骨に相馬を迷惑がっている。
そして駅では、ベンチに忘れられた英文の古い日記を翻訳する少女、駅や車内の光景をデジタルカメラに収める盲目の女性、駅員の真似をする鉄道マニアの青年、タップシューズを網棚に忘れてしまった男性、祖父の思い出の品を探す外国人の青年など、さまざまな人々がすれ違っていく。
そんなある日、駅で“事件”が起こる――。