小日向登(辻岡正人)は、うまく言いくるめて見ず知らずの人の車に相乗りしたり、原チャリで北海道一周の旅に出たりと、破天荒な学生だ。大学でも貧乏学生の中心的存在となる小日向は、仲間たちと一緒になっての運動が原因となって退学処分を食らってしまった。
“大学をクビになった”登が見つけた仕事は、高円寺のリサイクルショップでのアルバイト。大学時代からの貧乏仲間と集まり、高円寺駅前の広場で宴会を開いていると、通りすがりの若者たちも集まってきて、どんどんと宴の輪は広がっていく。そして小日向や周囲の仲間たちの間で巻き起こっていくいくつかの事件。友人たちとの関係も変化していく中で、それでも小日向は宣言する。「“祭り”はこれからだ!」。
女優を目指す竹田成子(疋田紗也)は、新聞販売店でバイトをしながら劇団の稽古に励む毎日だ。父親は失踪し、祖母は入院。お金のやりくりに悩む母親(黄金咲ちひろ)の姿を前にして、成子は家計を助けるために夜の世界で働くことを決意する。
劇団の仲間に紹介してもらったのは、雪枝(神楽坂恵)がママをつとめる会員制のクラブ。まりあという名前で働きはじめた成子は、母の心配をよそに聞き上手が幸いして客の間で人気となっていく。だが、掛け持ちのバイトや劇団の稽古のために、同伴にもアフターにも応じないという条件で働いているため、雅(リエコ・J・パッカー)たち先輩のホステスの反感を買ってしまう。嫉妬や羨望が渦巻く中、成子は飛び込んだ夜の世界で生きていく。
おやすみアンモナイト
監督:増田俊樹
出演:辻岡正人 疋田紗也 黄金咲ちひろ 神楽坂恵 ほか
2010年1月30日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー
2009年/カラー/100分
中央線サブカルチャーの中心地・高円寺でリサイクルショップ“素人の乱”を経営し「貧乏人の逆襲! タダで生きる方法」「貧乏人大逆襲」などの著書で注目を集める松本哉(まつもと・はじめ)。学生時代からさまざまな“祭り”を仕掛け、新たなムーブメントを巻き起こしてきた松本哉の“革命前夜”が『おやすみアンモナイト』として映画化された。
『おやすみアンモナイト』は、松本哉をモデルにした「貧乏人逆襲篇」と、劇団員の女性を主人公にした「貧乏人抹殺篇」というふたつの物語が交錯することなく交互に描かれていくという独特の構成により、現代の若者の姿をリアルに描いていく。
「貧乏人逆襲篇」の主人公・小日向登を演じるのは、塚本晋也監督作品『バレット・バレエ』でデビューし、映画監督としても高い評価を得る辻岡正人。松本をモデルにした小日向の破天荒な人物像を見事に演じている。
そして「貧乏人抹殺篇」では、グラビアアイドルとして活躍し『新・スパイガール大作戦』などで映画にも挑戦してきた疋田紗也が待望の映画初主演を果たし、劇団員の竹田成子を体当たりで熱演している。
そのほか『泳げない女』の黄金咲ちひろ、『童貞放浪記』の神楽坂恵、『窓辺のほんきーとんく』の安藤彰則ら、個性的な出演者たちが脇を固めた。
ジャーナリストの昼間たかしが取材で重ねて得た実話エピソードをもとに脚本を執筆、『トウキョウ・守護天使』の増田俊樹がメガホンをとった。
閉塞感の漂う現在。ゼロ年代以降の新たな時代を予言する異色の若者群像劇がここに完成した。
- 小日向登:辻岡正人
- 竹田成子:疋田紗也
- 竹田奈津子:黄金咲ちひろ
- クラブママ・雪枝:神楽坂恵(友情出演)
- ホステス・雅:リエコ・J・パッカー
- 矢井田芳子:大塚麻恵
- 新堂剣:安藤明則
- 竹田道郎:増田俊樹
- 監督:増田俊樹
- 脚本:レイチェル・マキ/昼間たかし
- 制作総指揮:増田俊樹
- プロデューサー:森口あゆみ/出口毅
- 撮影:林益誉/本杉淳悟/岸野渉
- 録音:増田和由
- 編集:鵜飼邦彦(JSE)
- MA:楠目繁樹/飯田太志
- ヘアメイク:梅沢春奈/CHIDO/中田陽子
- 衣装:森口あゆみ
- 装飾:大塚麻恵
- 助監督:林益誉
- 演出補:椎葉智
- 音楽:菅野槙人(BLACK RIBONS)
- テーマ曲:山田勉「未来」/西口綾子「かくれんぼ」
- 製作:月の石製作委員会
- 宣伝協力:太秦/ロフトプロジェクト
- 配給:月の石
- 配給協力:n3o