オボエテイル
監督:芳田秀明/明石知幸/久保朝洋
出演:村上淳 麻生祐未 吉田日出子/中村美玲 葛山信吾 篠井英介/香川照之 光石研 渡辺真起子 ほか
2011年1月8日(土)より新宿K's cinema、横浜ニューテアトルにてロードショー
2005年→2010年/カラー/HD−CAM→35mm(Blu-ray上映)/ビスタ/DTS/125分
幼いころに故郷から東京に越してきた若手作家。原因不明の頭痛に悩まされる女性。故郷の古い地図に奇妙な事実を発見した男性。盛岡を訪れたとき、それぞれの閉ざされていた“記憶”が蘇る……。『オボエテイル』は盛岡を舞台に“記憶”にまつわるみっつの物語を描いた、3話構成のオムニバス・ミステリーだ。
盛岡在住の直木賞作家・高橋克彦の短編小説の中から、直木賞受賞作である「緋い記憶」をはじめ「遠い記憶」「前世の記憶」と“記憶”を題材にした3作品を選び、盛岡オールロケで映像化した。
メガホンを撮ったのは『スイート・スイート・ゴースト』の芳田秀明(「遠い記憶」)、『免許がない!』『キリコの風景』の明石知幸(「前世の記憶」)、『富江 VS 富江』の久保朝洋(「緋色の記憶」)の3人。日活撮影所でキャリアを積んだ3人が、それぞれ異なるタッチで“記憶”のもたらす恐怖をスクリーンに描き出す。
「遠い記憶」では個性の光る村上淳が主演をつとめ、麻生祐未が謎の女性をミステリアスに演じる。「前世の記憶」は『22歳の別れ』の中村美玲が“過去”に戸惑う女性を熱演し、実力派・葛山信吾や独自の存在感を放つ篠井英介が共演。「緋い記憶」では、主演の香川照之はじめ、光石研、渡辺真起子、柄本時生と日本映画界に欠かせない個性派が顔を揃えている。
『オボエテイル』は2005年に完成し、ロケ地である盛岡で開催された第9回みちのく国際ミステリー映画祭で上映され大きな話題を集めた。その後、制作会社の事情により公開されないまま幻の作品となっていたが、3人の監督自身の熱意と尽力によって5年を経ての劇場公開が実現していた。いま“記憶”の封印が解かれる……。
「遠い記憶」
作家の倉本雄二(村上淳)は、テレビの取材で故郷である盛岡を訪れることになった。故郷と言っても、3歳のときに父が事故死して母(吉田日出子)とともに東京に引っ越してきた倉本に盛岡に住んでいたころの記憶はない。倉本の作品には子供のころの体験をもとにしたものがあるが、それも東京での記憶だ。盛岡にやってきた倉本は、取材のナビゲートをしてくれる相沢世里子(麻生祐未)という女性と出会う。倉本の作品の愛読者であるという世里子と盛岡を巡る中で、倉本が覚えていないはずの盛岡の記憶が蘇ってくる……。
「前世の記憶」
盛岡にある小学校を訪ねる藤山修子(中村美玲)。修子は、1964年当時の在校生名簿を見せてほしいと頼みこむ。返答を待つ修子の目には、野球帽をかぶった少年の姿が映っていた……。その1ヶ月前、修子は原因不明の体調不良に悩まされていた。恋人の青柳(葛山信吾)の勧めで、修子は精神科医の診察を受けることになった。医師(篠井英介)は、修子に催眠療法を施す。短大の合格発表、中学の修学旅行……催眠により記憶を遡る中で、修子が体験したはずのない記憶が浮びあがってくる。それは、修子の前世の記憶なのか?
「緋い記憶」
東京で働く山野良彦(香川照之)を、故郷・盛岡で暮らす友人の加藤(光石研)が訪ねてきた。加藤が持ってきたのは、古書店で見つけたという盛岡の古い住宅地図だった。地図には、ふたりが高校生だったころの町並みが一軒一軒の家まで細かく記載されている。地図を見て、高校生の記憶が山野の中に蘇る。しかし、地図には山野の探す家の場所が「空き地」と記されていた。家族と離れて下宿していた高校時代の山野が、あの夏に何度も訪ねた家が……。それからしばらくして、山野は思いがけないきっかけから、高校卒業以来初めて盛岡を訪れることになる……。