会社員の勇治(森山未來)は、出張に前のりするため新幹線で広島へと向かっていた。折りしもその日は阪神・淡路大震災から丸15年を翌日に控えた1月16日。車内の電光掲示板にもそれを知らせるニュースが流れていた。そして新幹線が新神戸駅に着いたとき、勇治は不意に列車を降りてしまう。
新幹線を降りた勇治は、同じ新幹線で新神戸駅に着いた女性・美夏(佐藤江梨子)から三宮までの道を尋ねられる。一緒に行こうという勇治を訝しがる美夏だったが、勇治が自分と同じようにかつて神戸で暮らした経験があり、久々に戻ってきたのだということを知ると行動をともにする。
夜になり、三宮の居酒屋で呑むふたりは、互いの神戸での想い出を語りはじめる。小学校4年のときに震災を体験し、15年ぶりに神戸を訪れた勇治。中学1年生で震災を体験し、13年ぶりに神戸に戻ってきた美夏。それぞれの震災体験を語る中で、勇治のある言葉がきっかけとなり、美夏は店を飛び出してしまう。
しかし、ふたりは新神戸駅で再会を果たす。すでに終電はなくなっていたが、美夏は祖母の住む御影まで行かねばならないという。そしてまた三宮に戻り、震災の起きた5時46分に始まる“追悼のつどい”に参加するというのだ。勇治はタクシーを使おうと提案するが、美夏は歩いていくという。結局、勇治も美夏につきあって御影まで一緒に歩くことになってしまった。
夜の神戸の景色は、ふたりの記憶を呼び覚ましていく。お互いの名前も知らないまま、ふたりは震災がそれぞれの中に残したものを明かしていく……。
その街のこども 劇場版
監督:井上剛
出演:森山未來 佐藤江梨子 津田寛治 ほか
2011年1月15日(土)より東京都写真美術館ホール、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー
2010年/カラー/HD/ビスタサイズ/ステレオ/83分
阪神・淡路大震災から丸15年を目前とした新神戸の駅で出会った男女。同じように10代で震災を体験し、現在は東京で暮らすふたりは、互いの名前も知らないまま、それぞれの経験を語りはじめる――。
阪神・淡路大震災からちょうど15年を迎えた2010年1月17日にNHKで放映されたドラマ「その街のこども」が、放映後に寄せられた大きな反響に応え、テレビ未放映シーンも加えた『その街のこども 劇場版』として劇場公開される。
出演は『世界の中心で、愛をさけぶ』で脚光を浴び、その後も映画、ドラマ、舞台で活躍する森山未來と、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『すべてが海になる』などで実力派女優としての評価も高まる佐藤江梨子。神戸で生まれ育った森山は小学4年のときに、小学1年から神戸で暮らした佐藤は中学1年のときに、阪神・淡路大震災を体験している。『その街のこども』でふたりが演じるのは、自身と同じ年齢で震災を体験した役だ。神戸の街でふたりが交わすやり取りはフィクションであるが、そこからにじみ出るリアリティは、実際に震災を体験した者にとっての震災との“距離”を感じさせる。
脚本は『ジョゼと虎と魚たち』『天然コケッコー』などの渡辺あや、映像を彩る音楽は『色即ぜねれえしょん』『ウルトラミラクルラブストーリー』などの大友良英と、劇場用作品を多く手がけるスタッフが参加。「クライマーズ・ハイ」「ハゲタカ」など傑作ドラマの演出を手がけてきた井上剛がメガホンをとっている。
スタッフ・キャストが真摯に阪神・淡路大震災という題材と向き合い作り上げられた『その街のこども 劇場版』。劇場公開は、より多くの人々で震災への想いを共有しようという試みである。
- 森山未來
- 佐藤江梨子
- 津田寛治
- 白木利周
- 中川光子
- 監督:井上剛
- 脚本:渡辺あや
- プロデューサー:京田光広
- 撮影:松宮拓/青木智紀
- 照明:中村正則
- 音声:渡辺暁雄
- 美術:岩倉暢子
- 技術:坂本忠雄
- 映像技術:神戸大樹
- 音響デザイン:山田正幸
- 編集:狩森ますみ
- 記録:栗又三奈
- 助監督:近藤有希
- 制作:小林大児/的場政行/厚美有芳
- 音楽:大友良英
- エンディングテーマ曲:「その街の子供」歌・作詞:阿部芙蓉美/作曲:大友良英
- 協力:フェリシモ
- 後援:ヴィッセル神戸/大林組/オリックス・バファローズ/神戸新聞社
- 上映企画:NHKプラネット近畿
- 配給:トランスフォーマー