幼い息子をひとりで育てている琴子(Cocco)には「世界がふたつに」見える。息子の大二郎に近づいてくる人が、優しい笑顔にも、悪意に満ちた凶暴な顔にも見える。どちらが本当かわからないから、琴子は子供を守るために近づいてくる者を殴る、蹴る。そして琴子はその町で暮らすことができなくなり、引越しを繰り返す。琴子に世界がひとつに見えるのは、歌を歌っているときだけだ。
張りつめた毎日を送る琴子は「存在していいか?」と確かめるように自分の体を傷つける。自分の細い腕が大二郎を支えているという想いが、琴子をさらに不安定にしていく。やがて琴子は幼児虐待の疑いをかけられ、大二郎は離れて暮らす姉の元に引き取られていった。東京でひとり暮らす琴子は、カウンセリングも断り、自分や周りを傷つける日々を送っていく。
久しぶりに姉から連絡があり、琴子は大二郎に会いに姉の暮らす沖縄へ向かう。空港へのリムジンバスの中、歌を歌う琴子。その姿を、ひとりの男が見つめていた。
家族に迎えられた琴子は大二郎と再会し、笑顔に満ちた朗らかな日々を過ごす。だが、まだ琴子は大二郎と暮らすことを許されていない。大二郎と離れ、琴子は東京へと戻る。
東京に戻った琴子の前に、小説家の田中(塚本晋也)という男が現われた。リムジンバスで聴いた琴子の歌が忘れられずに琴子のあとをつけていたのだという。「あなたを見てるとなんか心配になりまして」。近づこうとする田中を拒絶する琴子。しかし、琴子にどんな暴力を振るわれても、田中はあきらめようとしない。いつしか、琴子の気持ちにも変化が訪れる……。
KOTOKO
監督:塚本晋也
出演:Cocco 塚本晋也 ほか
2012年4月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー
2011年/カラー/FullHD/5.1ch/91分/PG-12
デビュー以来、独自の世界を作り出し多くの人々を魅了するシンガーソングライター・Cocco(こっこ)。世界のクリエイターに影響を与える映画監督・塚本晋也もCoccoの世界に惹かれたひとりであった。2004年の塚本晋也監督作『ヴィタール』へのCoccoの楽曲提供、2010年にネット配信された『Inspired movies』でのコラボレーションを経て、ついにふたりの表現者は『KOTOKO』という1本の劇場用映画を生み出した。
Coccoが演じる主人公・琴子は「世界がふたつに」見える。なにが本当かわからない世界の中で、幼い息子を守ろうとするゆえに不安定になっていく琴子。その琴子の歌声を偶然耳にして彼女に惹かれていく小説家・田中を塚本晋也自身が演じている。
『KOTOKO』の脚本は、塚本晋也がCoccoにインタビューを重ね、Cocco自身の体験を反映させながら作られた。さらに、Coccoは演技者としてだけでなく、音楽はもちろん美術など映画全般にスタッフとして携わった。『KOTOKO』は、まさに塚本晋也とCoccoがセッションをおこなうように作りあげられた作品なのだ。
完成した作品は、強い感受性を持ったひとりの女性が見る「世界」を、いまだかつてなかったほど鮮烈なイメージとして映像で描き出した映画となっている。
日本での公開を前に、第68回ベネチア国際映画祭でグランプリにあたるオリゾンティ部門最高賞を日本映画として初めて受賞したほか、第15回タリン・ブラックナイト映画祭では塚本晋也とCoccoのために「最高映画表現者賞」が急遽新設されるなど、すでに海外で高い評価を得ている『KOTOKO』。とてつもなく烈しいふたつの才能の結晶が、ついにベールを脱ぐ。
- 琴子:Cocco
- 田中;塚本晋也
- 監督:塚本晋也
- 原案:Cocco
- 脚本:塚本晋也
- 製作:塚本晋也
- 企画:Cocco/塚本晋也
- 撮影:塚本晋也/林啓史
- 照明:林啓史
- 美術:Cocco
- 特殊メイク・特殊造形:花井麻衣
- 編集:塚本晋也
- 整音・音響効果:北田雅也
- スチール:天満眞也
- 助監督:林啓史/藤田秦
- 制作:斎藤香織
- 音楽:Cocco
- 製作:海獣シアター
- 制作協力:シーオーダブルシーオー
- 配給:マコトヤ