R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私
監督:竹中直人
出演:平田薫 安藤政信 綾部祐二 津田寛治 ほか
2013年2月2日(土)より新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
2013年/カラー/1:1.85/106分|R-15

多忙を極める仕事や職場での人間関係で心をすり減らす毎日の中で、自分を解放するためのひそかな愉しみ。27歳のOL・立花百合亜(ゆりあ)にとって、その愉しみとは自分の身体を縄で縛る「自縛」だった――。
「第7回女による女のためのR-18文芸賞大賞」を受賞した蛭田亜沙子の小説『自縄自縛の私』が、竹中直人のメガホンによって映画化を果たした。自縛という題材を女性ならではの視点で描き多くの読者の共感を得た原作を、竹中監督は竹中監督はあたたかく主人公を見つめるような視点で映像化、どこかユーモラスでキュートな作品に仕上げてみせた。
主人公の百合亜役に抜擢されたのは映画やドラマ・舞台で活躍する平田薫。透明感が魅力の彼女が、本作では実年齢より上で仕事の悩みを抱えた役柄に挑戦。自縛シーンをはじめとして大胆なシーンも堂々と演じ、女優としての新境地を見せた。
そして、頼りない百合亜の上司・矢村には安藤正信、学生時代の百合亜の恋人にはお笑いコンビ・ピースの綾部祐二、会社の常務で厳格な渡瀬には津田寛治、さらに山内圭哉、銀粉蝶、馬渕英俚可、米原幸佑ら多彩なキャストが集まり、百合亜を取り巻く人間模様を、個性豊かに描き出してみせた。
劇中に挿入されるイラストは、海外小説の挿画も手がけるイラストレーターの平尾香によるもの。やわらかなイラストは竹中監督自身によるナレーションとあいまって、絵本を読み聞かせられるような懐かしさと優しさを映画にもたらしている。
“ひみつ”を抱えながら日々を過ごす百合亜の姿は、きっと彼女と同年代の女性たちに共感をもって迎えられるはずだ。毎日にちょっと疲れている人たちへ贈る、ホッと息をつけるような大人の寓話だ。

子供のころから勉強も運動も人並みでごくごく平凡な大学生の立花百合亜(平田薫)は、インターネットで自分自身の体を縄で縛る「自縛」の世界を知り、手近にあった荷造り紐で自分の体を縛ってみる。そして「自縛」の魅力を知った百合亜は、縄や手錠を買いそろえ、ひそかな趣味として自縛を楽しんでいた。
ところが、ある日アパートを訪ねてきた恋人の持田裕太(綾部祐二)に自縛姿を見られてしまったのが原因で、裕太から別れを切り出されてしまう。ショックを受けた百合亜は、それ以来、自縛をやめた。
やがて百合亜はごく普通な就職活動をして、ごく普通の広告代理店へと入社した。27歳となった百合亜は主任となり、中途入社で年上の弘前恵美(馬渕英俚可)と新入社員の桜井達也(米原幸佑)という部下もできた。部下ふたりはアクが強く、上司の矢村修司(安藤政信)は頼りない。ストレスを溜め込む百合亜は、再び自縛の世界へと足を踏み入れる。
自縛の趣味を再開させるとともに、自縄自縛ブログを開設した百合亜。ブログがきっかけで同じ自縛の趣味を持つ「W」と名乗る男性とメール交換をするようになった百合亜は、部屋で自縛を楽しむだけでなく、自縛したままジョギングをしたりと徐々に趣味をエスカレートさせていく。
会社では、大規模なコンペティションを前にして常務の広瀬(津田寛治)から厳しい意見が出され、百合亜の仕事も多忙を極めていく。そして百合亜は、縄で縛った体をスーツに包んで出社するようになっていく――。
誰にも言えない「ひみつ」を抱えた百合亜が行き着く先は――。