車の中でタバコをふかす沙織(小泉麻耶)。やがて沙織は、車を運転する津田(津田寛治)とともに車を降り「客」のもとへと向かう。障害者専門の派遣型風俗店のデリヘル嬢、それが沙織の仕事。今日は沙織の初出勤日だ。
最初の客・水谷(管勇毅)は体を動かせない。ベッドに寝かせた水谷の服を脱がすと、そこには大きなタトゥーが。少したじろぎながらも「仕事」を続ける沙織。進行性筋ジストロフィーの水谷は、自分に迫りつつある「死」について沙織に聞かせる。
次の客は四肢に障害を持ち車椅子で生活する中嶋(ホーキング青山)。中嶋は、軽妙な話術で自分の障害さえあっけらかんとネタにする。そしてなんとか本番行為に持ち込もうとするのだが、沙織は調子を合わせつつそこはうまくかわしてみせる。
最後に訪れた家で、沙織は客の母親に出迎えられ戸惑いを覚える。バイク事故で不自由な体となった健司(森山晶之)は、サービスの途中で沙織を拒絶する。健司は事故のため勃起することも射精することもない。しかし、それを理解しない母親が勝手に店に連絡したのだという。なにも言えずに健司の家を出ていく沙織。
「ラクそうだし、体が動かない客なら怖くなさそう」。そんな考えでこの仕事を選んだ沙織だったが、初日から客たちが抱えるそれぞれの事情に触れていくことになる。
その後も沙織は、いくつかの思わぬ出来事を経験しながらも店での仕事を続けていく。そんな沙織はある日、衝撃的な事実を知ることになる。そして沙織は、街で偶然に健司と再会する。母親との関係に耐えきれず家を飛び出した健司とともに、沙織は小さな旅へと向かう――。
暗闇から手をのばせ
監督:戸田幸宏
出演:小泉麻耶 津田寛治 森山晶之 ほか
2013年3月23日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー
2013年/カラー/68分
沙織は今日も客の部屋を訪れる。沙織の仕事は障害者専門のデリヘル嬢。男たちとの触れ合いの中で、沙織が見出すものは?
日本全国には、18歳以上の在宅身体障害者が348万人いるという。そして、その障害者たちを対象にした障害者専門の性風俗店が実在する。『暗闇から手をのばせ』は、その店で働く女性を主人公にした物語だ。
監督・脚本は、編集者、マンガ原作者、映像プロデューサーの経歴を持ち、第12回テレビ朝日新人シナリオ大賞を受賞した戸田幸宏。現在はディクレターとしてドキュメンタリー番組に携わっている戸田が、取材を進めつつもテレビ局の意向により実現しなかった企画を自らの資金でフィクションとして映画化したのが『暗闇から手をのばせ』だ。
主人公のデリヘル嬢・沙織を演じるのは、グラビアアイドルとして活動するほか『エレクトロニックガール』で主演をつとめるなど女優としてのキャリアも積み重ねてきた小泉麻耶。『暗闇から手をのばせ』では、大胆なシーンにも果敢に挑むとともに、沙織の抱える孤独や欠落を巧みに表現し、女優としてのたしかな力を見せている。
そして、いまや日本映画界に欠かせない存在の津田寛治、舞台などで活躍する若手の森山昌之、個性派のモロ師岡、実際に四肢に障害を持つお笑い芸人のホーキング青山ら、多彩なキャストが共演する。
また、主題歌・挿入歌には音楽界で注目を集める“転校生”の曲が使われ、映画の世界をやわらかに広げていく。
障害者と“性”を売る者。それはどちらも“社会”からはみ出しがちな人々だ。『暗闇から手をのばせ』は、そんな人々の生きる姿をあたたかな目で描きだす。
- 沙織:小泉麻耶
- 津田:津田寛治
- 健司:森山晶之
- 水谷:管勇毅
- 裕美子:松浦佐知子
- 中嶋:ホーキング青山
- 小西:モロ師岡
- 監督・脚本:戸田幸宏
- プロデューサー:太田隆文/戸田幸宏
- 撮影:はやしまこと(J.S.C)
- 照明:吉角荘介
- 録音:丸池嘉人
- 美術:竹内悦子
- 編集:坂本久美子
- 整音・音響効果:小牧修二
- 助監督:下條岳
- 制作担当:白取知子
- 挿入歌・主題歌:転校生「きみにまほうをかけました」「爆音ヘッドフォン」(EASEL)
- 製作:戸田製作事務所
- 配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
- 宣伝協力:アムモ98