
石川県志賀町の港町・福浦。かつては活気のあふれた漁師町も、いまは人口減少と高齢化に直面している。だが、この町には数十年の歴史を持つアマチュアオーケストラがあった。クラシック音楽好きの水産会社社長によって創立された「福浦漁火オーケストラ」だ。若き日に名指揮者のマエストロ・オルフェンシュタインに師事しながらも不慮の事故によりプロ指揮者の道を断念した老指揮者・吉川先生を中心に、コンテストを目指して日々練習に励むオーケストラの面々だった。
ところが吉川先生が急死。町からの支援も打ち切られることになり、コンテストを来月に控えて漁火オーケストラは存亡の聴きを迎える。そんなとき、役場勤務でヴァイオリン担当の三村みどり(釈由美子)の頭に浮かんだのは、吉川先生が生前に何度か話していた孫娘のことだった。吉川先生の才能を受け継ぎ、高校生にして海外で指揮を学ぶリトル・マエストラ!
連絡をとってみると、吉川先生の孫娘は冬休みの間オーケストラの指揮をとってくれることを承諾。こうして、天才少女指揮者・吉川美咲(有村架純)が福浦にやってきた!
清楚で朗らかな美咲は、たちまちオーケストラメンバーの人気者となった。決して技術があるとはいえないオーケストラの演奏を批判することもなく、しかしときに丁寧なアドバイスを与える美咲。トロンボーン担当の漁師・荒沢源次(蟹江敬三)、トランペット担当の大野岩雄(篠井英介)とその孫でチェロ担当の高校生・正也(上遠野太洸)、フルート担当で食堂経営の井坂洋子(筒井真理子)、ティンパニ担当のタツ爺(前田吟)たちは、コンテストへ向けてこれまで以上に盛りあがっていく。
そんな中、オーケストラの練習場に東京から1本の電話がかかってきた――。