木下はつ実(吉倉あおい)は17歳の高校生。学校では親友のマリ(新木優子)とともに陸上部に所属し、長距離走者として毎日練習に励んでいる。夫を失い、ひとりではつ実を育てる弁護士の母・恵子(朝加真由美)は、部活の練習を終えたはつ実を車で迎えに行ったり、受験に備えて部活を引退するよう勧めたりと、はつ実に対して過保護気味な言動が目立つ。恵子がはつ実に携帯電話を与えたのも、はつ実の行動を把握するためだった。
母とふたり、新しい街へと引っ越してきたばかりのはつ実は、偶然のきっかけから古紙回収業者で働く青年・野口隆太郎(柳楽優弥)と知りあった。一見無愛想だが、はつ実の陸上への想いを理解し、はつ実に街のことを教えてくれる隆太郎の優しさにはつ実は惹かれていき、ふたりの距離は次第に近づいていく。
母親には隆太郎の存在を隠したまま、隆太郎とデートを重ねていくはつ実。だが、ある夜、はつ実の行動を不審に感じた母親から厳しく追求され、思いあまったはつ実は隆太郎とのやりとりを隠そうと自らの手で携帯電話を壊してしまう。
連絡をとる術を失くしてしまったはつ実と隆太郎。お互いを想いながらも、お互いの気持ちを知ることができない――。
そして、母親の誕生日を祝った夜、帰宅する途中で隆太郎の姿を見かけたはつ実は、彼の姿を追いかけて夜の街に駆け出す。久しぶりの再会を果たしたふたりだが、隆太郎は衝動的にはつ実を押し倒してしまう。
娘の様子に気づいた恵子は警察に届け出、はつ実と隆太郎は“被害者と加害者”の関係になる。事件の記憶に苦しむはつ実が抱える「ゆるせない」想い、その一方でかすかに残る「逢いたい」想い。その想いの行き先は――。
ゆるせない、逢いたい
監督:金井純一
出演:吉倉あおい 柳楽優弥 ほか
2013年11月16日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー
2013年/カラー/ビスタサイズ/107分
引っ越してきたばかりの街で出会った青年と恋に落ちた女子高生。しかし、ある事情からふたりはすれ違いが続いてしまう。そしてふたりが再会した日、青年は彼女を襲ってしまう――。
“デートレイプ”とは、恋人同士のような親しい間柄の男女間でおこなわれる性暴力のことである。『ゆるせない、逢いたい』は、近年社会問題となっているこの“デートレイプ”を題材に、若者の恋愛を真摯に描いた作品だ。
主人公のはつ実を演じるのは、映画初主演の吉倉あおい。ファッション誌「mina」専属モデルとして活躍し、映画やドラマで女優としての期待も集める新星が難しい役柄に挑戦。交際中の相手に襲われた衝撃に揺れる感情をしっかりと表現してみせた。
そして、はつ実と恋に落ちる隆太郎役でダブル主演をつとめるのは柳楽優弥。3年ぶりの主演映画となる本作では、後悔にさいなまれる青年を硬質な演技で表現、その力を存分に発揮するとともに、初主演の吉倉を相手役として支えている。
そのほか、はつ実の親友・マリに映画やドラマ、CMで注目を集める新木優子、はつ実の母・恵子にベテランの朝加真由美、さらに多彩な活動で知られるダンカンや、舞台でも活躍する原扶貴子、中野圭が作品の厚みを増していく。
脚本・監督は金井純一。2009年の文化庁若手映画作家育成プロジェクトに選ばれ、2012年の短編『転校生』が国内外から高く評価されている新鋭だ。本作では重いテーマを扱いつつ、若者の葛藤を描く青春ストーリーとしても成立させてみせた。また、光を巧みに使った映像にも注目だ。
主題歌は、ヒットメイカー・小林武史が書き下ろした「ライン」。シンガー・Salyuの歌声が作品を優しく包み込んでいく。
- 吉倉あおい
- 柳楽優弥
- 新木優子
- 原扶貴子
- 中野圭(劇団前方公演墳)
- ダンカン
- 朝加真由美
- 監督・脚本・編集:金井純一
- 製作:細野義朗
- 共同プロデューサー:坂本雅司
- プロデューサー:加藤伸崇/古賀奏一郎
- 撮影:清村俊幸(J.S.C.)
- 照明:石川欣男(JSL)
- 録音:間野翼
- ヘアメイク:橋本申二(atelier ism*)
- スタイリスト:工藤唯(anotoki)
- 助監督:ジョン・ヒジリ
- 音楽:吉田トオル
- 主題歌:Salyu「ライン」作詞・作曲・編曲:小林武史
- 製作プロダクション:シネグリーオ
- 宣伝:ブラウニー
- 宣伝デザイン:秋山京子
- 製作・配給:S・D・P