
木下はつ実(吉倉あおい)は17歳の高校生。学校では親友のマリ(新木優子)とともに陸上部に所属し、長距離走者として毎日練習に励んでいる。夫を失い、ひとりではつ実を育てる弁護士の母・恵子(朝加真由美)は、部活の練習を終えたはつ実を車で迎えに行ったり、受験に備えて部活を引退するよう勧めたりと、はつ実に対して過保護気味な言動が目立つ。恵子がはつ実に携帯電話を与えたのも、はつ実の行動を把握するためだった。
母とふたり、新しい街へと引っ越してきたばかりのはつ実は、偶然のきっかけから古紙回収業者で働く青年・野口隆太郎(柳楽優弥)と知りあった。一見無愛想だが、はつ実の陸上への想いを理解し、はつ実に街のことを教えてくれる隆太郎の優しさにはつ実は惹かれていき、ふたりの距離は次第に近づいていく。
母親には隆太郎の存在を隠したまま、隆太郎とデートを重ねていくはつ実。だが、ある夜、はつ実の行動を不審に感じた母親から厳しく追求され、思いあまったはつ実は隆太郎とのやりとりを隠そうと自らの手で携帯電話を壊してしまう。
連絡をとる術を失くしてしまったはつ実と隆太郎。お互いを想いながらも、お互いの気持ちを知ることができない――。
そして、母親の誕生日を祝った夜、帰宅する途中で隆太郎の姿を見かけたはつ実は、彼の姿を追いかけて夜の街に駆け出す。久しぶりの再会を果たしたふたりだが、隆太郎は衝動的にはつ実を押し倒してしまう。
娘の様子に気づいた恵子は警察に届け出、はつ実と隆太郎は“被害者と加害者”の関係になる。事件の記憶に苦しむはつ実が抱える「ゆるせない」想い、その一方でかすかに残る「逢いたい」想い。その想いの行き先は――。