1966年、福島県。生活を支えるために働こうとする愛子(大池容子)だが、まだ16歳の彼女に仕事は限られている。それでも愛子には、仕事を得なければならない理由があった――。
2011年、東京の繁華街。西山怜(千葉美紅)は、中年男とホテルの一室にいた。行為を終えたあと自分が未成年であることを明かし、男から何枚もの紙幣を受け取る怜。さらに怜は、自分が震災の被災者であることを明かす――。
怜が東京に行く数ヶ月前のこと。福島に住んでいた怜は、同居している祖母の愛子(夏樹陽子)にSNSの使い方を教えて欲しいと頼まれる。ネットでチュニジアのジャスミン革命の様子を見た愛子は、SNSでの呼びかけがジャスミン革命に大きな役割を果たしたと知り興味を持ったのだ。やがてSNSを始めた愛子は、懐かしいある名前を検索する――。
1945年、福島県。15歳の英雄(杉山裕右)は、学徒動員で勤労に従事していた。同世代の少年たちとともに、ひたすら地面をツルハシで掘り続ける。自分がなんのためにそんなことをしているのかも知らずに――。
1966年。愛子の父・英雄(沖正人)は、地元で進む原発建設計画に反対していた。同じように計画に反対していた住民も賛成に転じて行き、いまや反対派は英雄のみ。そのために英雄も愛子も地域から孤立していた。そんな愛子を、同い年の健次(伊藤大翔)は見守っていくが――。
2011年、再会を果たす愛子と健次(勝野洋)。震災後の東京で生きる怜は街頭で義援金を集める沢田(黒田耕平)という青年と出会う。それぞれの時代で、それぞれが気づいていくもの、そして――。
あいときぼうのまち
監督:菅乃廣
出演:夏樹陽子 勝野洋 千葉美紅 黒田耕平 大池容子 伊藤大翔 ほか
2014年6月21日(土)よりテアトル新宿 ほか全国順次公開
2013年/カラー/DCP/ドルビー5.1ch/126分
1945年、学徒動員された少年。1966年、新聞配達で家計を支える少女。2011年、震災後の東京で体を売る少女。違った時代を生きる、同じ血をもった人々。そしてそれぞれの時代で彼ら彼女たちの運命を動かすのも、同じ力であった……。
福島にルーツを持ち、国の原子力政策に翻弄されたひとつの家族を3つの時代、4つの世代にわたって描く大河ドラマ、それが『あいときぼうのまち』だ。
監督は、福島県出身で、脚本家・プロデューサーとして活躍してきた菅乃廣。菅乃の父親は若き日に原子力発電所で働き、死を前にしたとき自分を蝕む病の原因が原発ではないのかと口にした。その体験が、菅乃が“原発”を題材に映画を作る原動力となった。そしてその菅乃の想いに応えるように『アジアの純真』(脚本)『戦争と一人の女』(監督)などの井上淳一が、時代を越えて紡がれる壮大な脚本を執筆した。
国や電力会社に批判的な内容であるためキャスティングは難航したが、夏樹陽子、勝野洋らのベテラン勢に加え、『アジアの純真』の黒田耕平、井土紀州監督作『泥の惑星』や『戦争と一人の女』で鮮烈な印象を残した千葉美紅、劇団“うさぎストライプ”を主宰する気鋭の劇作家・演出家である大池容子ら、幅広いキャストが菅乃監督のもとに集った。
『あいときぼうのまち』には、インディーズ映画だからこそ表現することのできた、国や電力会社への深く静かな怒りがある。だが、この作品が伝えるのは決して怒りだけではない。過去から現在へ続く哀しみへの鎮魂のように響くラストシーンは、未来への決意を感じさせ、きっと観客の胸に感動を呼び起こす。それが、この映画が伝える「あいときぼう」だ。
- 夏樹陽子
- 勝野洋
- 千葉美紅
- 黒田耕平
- 雑賀克郎
- 安藤麻吹
- わかばかなめ
- 大谷亮介
- 大池容子
- 伊藤大翔
- 大島葉子
- 半海一晃
- 名倉右喬
- 草野とおる
- あかつ
- 沖正人
- 杉山裕右
- 里見瑤子
- 笠兼三
- なすび(声の出演)
- 瀬田直
- 監督:菅乃廣
- 脚本:井上淳一
- 製作・エグゼクティブプロデューサー:小林直之
- 製作・プロデューサー:倉谷宣緒
- 撮影監督:鍋島淳裕(J.S.C)
- 照明:三重野聖一郎
- 録音:土屋和之
- 美術:鈴木伸二郎
- 衣裳:佐藤真澄
- 編集:蛭田智子
- 音響効果:丹雄二
- 監督補・VFXスーパーバイザー:石井良和
- スタイリスト:菅原香穂梨
- ヘアメイク:石野一美
- VFX:マリンポスト
- 音楽:榊原大
- オープニング曲:「千のナイフ」(演奏:榊原大/作曲:坂本龍一)
- 挿入歌:夏樹陽子「咲きましょう、咲かせましょう」
- 撮影協力:いわきフィルム・コミッション協議会/一般社団法人いわき観光まちづくりビューロー
- 製作:「あいときぼうのまち」映画製作プロジェクト
- 配給・宣伝:太秦