
「あなたを救いたくて来ました」。週刊誌記者のキム・ヨンホ(ユナク)にそう声をかけられた日、新谷泉(原田夏希)は、誰にも知られることなく家を飛び出した。手近な荷物だけをまとめ、携帯電話すら捨てて。
泉は著名な指揮者である夫・新谷吉彦(三浦誠己)から日常的に激しい暴力を受けていた。ヨンホは吉彦が泉に暴力をふるっている証拠の写真を撮影しており、記事で取りあげようとして泉に接触を図ったのだった。
あてもないまま電車を乗り継いだ泉は、寂れた小さな街へとたどり着いた。泉は立ち寄った喫茶店で住み込みの家政婦を募集する張り紙を見かけ、そこに書かれた連絡先へと電話をかける。
一方、ヨンホは泉が失踪したことを知るが、記事として扱うことはできず、大手芸能プロダクションの社長・三浜作次郎(名高達男)とタレント・大道ひな(かでなれおん)の薬物使用疑惑を追うことになっていた。
泉は「高田洋子」という偽名を名乗り、年老いた画家・天坊八重子(江波杏子)の家で住み込みの家政婦として働くことになった。偏屈で口の悪い八重子だが、泉に深い事情があることを察しつつも詮索することなく泉を雇ったのだった。
泉が八重子のもとで働きはじめてしばらく経ったある夜、八重子は泉を馴染みの店へと連れていった。店の主はオネエのサクラ(小木茂光)。慣れた調子で八重子と憎まれ口を叩きあうサクラは、新しく店で働きだした青年を八重子と泉に紹介する。サクラから「ジュンちゃん」と呼ばれるその青年は、まぎれもなくあのヨンホだった……。
ヨンホが自分を追ってきたのかと動揺する泉。やがて泉のもとにヨンホから「取り引き」を持ちかける電話が入る……。