「あなたを救いたくて来ました」。週刊誌記者のキム・ヨンホ(ユナク)にそう声をかけられた日、新谷泉(原田夏希)は、誰にも知られることなく家を飛び出した。手近な荷物だけをまとめ、携帯電話すら捨てて。
泉は著名な指揮者である夫・新谷吉彦(三浦誠己)から日常的に激しい暴力を受けていた。ヨンホは吉彦が泉に暴力をふるっている証拠の写真を撮影しており、記事で取りあげようとして泉に接触を図ったのだった。
あてもないまま電車を乗り継いだ泉は、寂れた小さな街へとたどり着いた。泉は立ち寄った喫茶店で住み込みの家政婦を募集する張り紙を見かけ、そこに書かれた連絡先へと電話をかける。
一方、ヨンホは泉が失踪したことを知るが、記事として扱うことはできず、大手芸能プロダクションの社長・三浜作次郎(名高達男)とタレント・大道ひな(かでなれおん)の薬物使用疑惑を追うことになっていた。
泉は「高田洋子」という偽名を名乗り、年老いた画家・天坊八重子(江波杏子)の家で住み込みの家政婦として働くことになった。偏屈で口の悪い八重子だが、泉に深い事情があることを察しつつも詮索することなく泉を雇ったのだった。
泉が八重子のもとで働きはじめてしばらく経ったある夜、八重子は泉を馴染みの店へと連れていった。店の主はオネエのサクラ(小木茂光)。慣れた調子で八重子と憎まれ口を叩きあうサクラは、新しく店で働きだした青年を八重子と泉に紹介する。サクラから「ジュンちゃん」と呼ばれるその青年は、まぎれもなくあのヨンホだった……。
ヨンホが自分を追ってきたのかと動揺する泉。やがて泉のもとにヨンホから「取り引き」を持ちかける電話が入る……。
無花果の森
監督:古厩智之
出演:ユナク 原田夏希 ほか
2014年6月14日(土)より シネマート新宿ほかにて全国順次公開
2014年/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/98分
2007年に母国・韓国で、2009年には日本でデビューを飾り、日韓両国で人気のグループ・超新星。そのリーダーであるユナクが、作家・小池真理子の芸術選奨文部大臣賞受賞作を映画化した『無花果の森』で初の映画主演をつとめる。
著名な指揮者のDV(家庭内暴力)疑惑を追う週刊誌記者・ヨンホ。指揮者の妻でありDVに苦しむ泉。つかの間近づいたふたりは、都会から遠く離れた小さな街で再会を果たす。ふたりとも、逃げる立場となって……。
ユナクは、ジャーナリストという夢と現実とのギャップに揺れるヨンホを好演し、俳優としてのたしかな力量を見せる。そして、テレビ小説「わかば」で主演をつとめ、その後は映画・ドラマ、舞台で活躍する原田夏希が、落ち着いた演技でヒロイン・泉の微妙な心理を表現してみせた。ユナクと原田夏希はラブシーンにも挑戦。透明感を持つふたりの演じるラブシーンは、美しく純粋な大人のラブシーンとなっている。
さらに、江波杏子、小木茂光、三浦誠己ら実力派俳優が共演し、個性的な登場人物をリアルに作品世界に息づかせてみせた。
『さよならみどりちゃん』『「また、かならず会おう」と誰もが言った』のプロデューサー・丹羽多聞アンドリウと監督・古厩智之が本作でもタッグを組み、脚本は丹羽プロデュース作品に多く参加する林誠人。静かなタッチで登場人物ひとりひとりの感情を丁寧に描いていく人間ドラマとして映画『無花果の森』を完成させた。
ロケ撮影による情緒豊かな風景の中で描かれる男と女の物語は、“逃げる”ことで新しく生まれるものがあることを教えてくれる。『無花果の森』は、人知れず静かに実る“愛”の映画だ。
- キム・ヨンホ:ユナク(超新星)
- 新谷泉:原田夏希
- サクラ:小木茂光
- 新谷吉彦:三浦誠己
- 橋本健次:徳井優
- 吉田悠一:木下ほうか
- 栗田千春:MiNo
- 水沢なつみ:瀬戸早妃
- 大道ひな:かでなれおん
- 三浜作次郎:名高達郎
- 天坊八重子:江波杏子
- 監督:古厩智之
- 原作:小池真理子「無花果の森」(日本経済新聞刊)
- 脚本:林誠人
- プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ
- 製作:宮崎恭一/小野田英雄/大崎幹
- 撮影:清久素延
- 照明:三田村拓
- 録音:大竹修二
- 美術:須坂文昭
- 音楽:遠藤浩二/大竹史朗
- 主題歌:MiNo「ジュエリーボックス」(作詞:MiNo/榊いずみ・作曲:小倉良)
- 特別協賛:VanaH(株)
- 製作:アタデューラ
- 製作・配給:BS-TBS