
斑目久太郎(北村一輝)は元・加賀藩剣術指南役。かつては“まだら鬼”の異名をとった剣客であるが、ある理由からいまはしがない浪人の身。妻子を故郷に置き、江戸の長屋で暮らしている。
傘張りの仕事で糊口をしのぎながら仕官の道を探る斑目は、ある日、米沢一家の若頭・三郎太(戸次重幸)よリ暗殺の依頼を受ける。相手は、米沢一家に敵対する相川一家の親分……ではなくて、なんと親分のかわいがっている猫。三郎太の話によると、米沢一家は犬派で相川一家は猫派。両者には長年続く因縁があるのだが、ここへきて相川一家親分の猫と奉行の猫の縁談が進んでいるという。もしそれが実現すれば米沢一家は不利となる。その縁談を潰すため猫を斬れというのである。
報酬に惹かれた斑目は、相川一家の猫屋敷へと忍び込み、大切に飼われている白猫・玉之丞に刃を向ける……。
翌日、玉之丞の姿が見えないことに気づいた相川一家の若頭・山田源七郎(津田寛治)たちは、親分や奉行をごまかすために身代わりの猫を探したりと大騒ぎ。一方、三郎太は斑目が依頼をこなしたことに満足気。
だが、実は斑目は玉之丞を斬っていなかった。つぶらな瞳の玉之丞に刀を振りおろすことができなかった斑目、玉之丞をひそかに自分の家へと連れ帰っていたのだ。猫を飼う気などさらさらない斑目だが玉之丞を放っておくわけにもいかず、散々振り回されながらも一生懸命に世話をしはじめる。気がつけば、斑目の中にいままで感じたことのない感情が芽生えていた……。
やがて、相川一家で猫の用心棒をしていた島崎新右衛門(寺脇康文)、猫の世話をしていた女中のお梅(蓮佛美沙子)や、新たな用心棒として雇われた・前場新助(浅利陽介)たちも巻き込んで、事態は意外な方向に……。