
園田宏、28歳。画家を目指していたが、いまは窓拭きのアルバイト。宏はある日、医師から余命わずかと宣告される。死への実感を持てない宏は、偶然知り合った女子高生・真衣や病院で出会う人々と過ごす日々の中で、なにを選ぶのか……。
『トイレのピエタ』は、国内外で高い評価を受けた『ピュ~ぴる』などのドキュメンタリー映画や短編劇映画を手がけてきた監督・松永大司が初めて送り出す長編劇映画だ。原案となったのは、1989年にこの世を去った漫画界の巨星・手塚治虫が死の直前に日記に書き記したアイディア。松永大司はテレビのドキュメンタリー番組で知ったそのアイディアに触発されてオリジナル脚本を執筆し、約10年に及ぶ構想期間を経て映画化を実現させた。
主人公の園田宏役には、絶大な人気を誇るロックバンド・RADWIMPSのボーカル&ギターで全曲の作詞作曲を手がける野田洋次郎が起用された。これまで映画出演経験はない野田だが、監督の期待に応え、自然に映像の中に園田宏として存在してみせた。
そして、ヒロインの女子高生・真衣をドラマやCMで活躍する1997年生まれの新星・杉咲花(すぎさき・はな)が演じ、思春期の少女のやり場のない衝動を表現する。さらに、多彩なフィールドで活動するリリー・フランキー、ファッション誌モデルとして人気の市川紗椰、日本アカデミー賞最優秀女優賞受賞も記憶に新しい宮沢りえ、ベテランの大竹しのぶら、個性と実力を兼ね備えたキャストが集まった。
ピエタとは、命を落としたキリストを抱くマリアを描いた聖母子像のことである。“死”が際立たせる“生”と“愛”。『トイレのピエタ』には、松永大司が、そして野田洋次郎が描く、死と生と愛がある。

大学で美術を学び、画家を目指していた園田宏(野田洋次郎)。大学の同期で恋人でもあったさつき(市川紗椰)は個展を開くまでになったが、宏は画家への道は諦め、28歳となった現在は就職もせずにビルの窓拭きのバイト生活だ。毎日ビルの壁に張り付くようにして窓を拭く自分は「虫みたい」だと、自嘲するかのように仕事仲間に話す宏。
ある日、宏は仕事中に突然倒れてしまう。病院に運ばれ検査を受けた宏は、検査結果を家族と一緒に聞きに来るよう医師に言われるが、ひとり暮らしの宏にすぐ駆けつけられる家族はいない。宏は、病院のロビーに居合わせた制服の少女・真衣(杉咲花)を妹役を頼み、医師との面談に同席させた。
医師が宏に告げたのは、宏の胃に悪性の腫瘍ができており、余命は3ヶ月という事実だった。
突然の宣告に戸惑う宏に真衣は「いまから一緒に死んじゃおうか?」と声をかける。バイクにふたり乗りして走る宏と真衣。だが、自ら死ぬことなどできない。「根性なし」。バイクを降りた真衣は宏に言葉を投げつける。
宏は入院して治療を受けることになった。同室の患者は、食道がんの横田(リリー・フランキー)。まるで入院を楽しんでいるかのような横田の言動に戸惑う宏。
やがて始まる化学療法の苦しみや、小児病棟に入院する患者との出会い。病院での生活は宏に新たな経験をもたらしていく。そして入院生活が続く中、宏はあの日別れたきりだった真衣と再会を果たす。
あまりに短い残された時間。宏は最期の夏をどう生きるのか――。