ユク(松岡龍平)が働く運送会社は、農作物を荒らす獣を撃つ害獣駆除を副業としておこなっている。害獣駆除で優秀な成績を挙げているユクに、社長が秘密厳守の仕事を持ちかける。母親が重い病気で高額な治療費を必要としているユクは、詳しい仕事内容はわからないまま、多額の報酬が得られるというその仕事を受けることにする。
ユクがやって来たのは、かつて鉱山で栄えた町。ユクは役場へと案内され依頼の内容を聞かされる。役場は鉱山のあった依木山(よりぎやま)に鉱毒の影響が残っているという噂が広まることを恐れており、その噂のもとになりかねない獣を駆除してほしいというのが役場の依頼であった。
翌日、山に入ったユクは、山小屋に住む初老の罠猟師・火浦(長谷川初範)に会い、役場が駆除を望んでいるのが山奥の村・依木村の人々が「白鹿様」と呼び山の神として崇めている白い鹿であることを知らされる。火浦も役場の依頼を受けているのだが、火浦の罠では白鹿を捕らえることはできなかったのだ。
火浦から白鹿を撃つための猟銃を託されて山の奥へと向かうユクは、火浦の仕掛けた罠でケガをした女性・ナギ(東佳奈子)を助け、ナギを探しに来た青年・羊市(福地祐介)の招きで依木村を訪れる。
村にはナギと羊市のほかには若者はおらず、辺鄙な場所のため生活も不便だ。だが羊市はあえてその生活を選び村の伝統を守って日々の生活を営んでいる。一方でユクは、ナギの村への複雑な想いにも気づいていく。
村に泊まることになったユクは、夜中にこっそりと起きだすと、猟銃を手に取った……。
アルビノの木
監督:金子雅和
出演:松岡龍平 東加奈子 福地祐介 山田キヌヲ 長谷川初範 ほか
2016年7月16日(土)よりテアトル新宿にて2週間限定レイトショー
2016年/カラー/16:9/HD/5.1ch & 2.0ch/86分
害獣駆除の仕事に携わる青年・ユク。彼が役場から依頼された秘密厳守の仕事は、山奥の村の住人たちから「山の神」と崇められている白鹿を撃つことだった。山に入ったユクは、村に住む若者・ナギや羊市と出会う……。
映画美学校修了制作作品『すみれ人形』が劇場公開され注目を集め、その後も精力的に短編作品を送り出してきた映画監督・金子雅和の、待望の長編第2作が公開される。新作『アルビノの木』は、1頭の白い鹿と、その鹿を狩ろうとする者、護ろうとする者の姿を通して、自然と人間や文化の継承というテーマを描いた、現代の民話的な作品となっている。
主人公の青年・ユクを演じるのは『すみれ人形』をはじめ金子監督作品に数多く出演する松岡龍平。村に住む女性・ナギ役にはモデルから女優へと活躍の場を広げる東加奈子。村の青年・羊市には広くアジアで活躍し『スイートハート・チョコレート』準主演をつとめた福地裕介。そのほか、『すみれ人形』でヒロインを演じ『SHARING』など話題作への出演が続く山田キヌヲや、現代美術家で金子監督作品の短編『復元師』で主演をつとめる松蔭浩之ら、金子作品に縁のある俳優陣に加え、ベテランの長谷川初範がベテラン猟師・火浦役で出演している。
撮影は長野県須坂市を中心に山形県、群馬県などでオールロケを敢行。樹々や雨、霧などの自然が美しい映像でとらえられ、その映像美はこの作品の大きな魅力となっている。特に映画の後半で登場する「赤い川」は、観客に鮮烈な印象を残すだろう。
現代を舞台に社会的なモチーフを盛り込んだ『アルビノの木』は、同時に日本古来の説話や伝承譚を思わせる作品ともなっている。現実と幻想の狭間から真摯にテーマを問いかける作品だ。
- ユク:松岡龍平
- ナギ:東加奈子
- 羊市:福地祐介
- ユクの先輩・今守:増田修一朗
- 役場の女・アヤ:尾崎愛
- 役場の課長・群田:細井学
- 社長・根元:松蔭浩之
- ユクの母・侑子:松永麻里
- アヤの祖母・チトセ:山口智恵
- ユクの姉・イズミ:山田キヌヲ
- 火浦:長谷川初範
- 監督・編集・撮影:金子雅和
- プロデューサー:金子雅和/金子美由紀
- 脚本:金子雅和/金子美由紀
- 撮影助手:東哲哉
- 照明:白石宏明
- 録音:間野翼
- 美術・衣装:金子美由紀
- メイク:知野香那子
- 鈴木啓士朗
- 助監督:滝野弘仁/登り山智志
- 監督助手:福田佑一郎
- 制作:名倉愛/堀内蔵人
- 整音:黄永昌
- 特殊効果:高橋昂也/高橋絢
- 音楽:石橋英子
- ロケーションコーディネイト:坂詰史博
- 協力:長野県須坂市
- 制作プロダクション・製作:kinone
- 配給:マコトヤ