短い夏が訪れた北海道・函館。古い西洋風の建物「翡翠館」に、桧山英二(黄川田将也)という青年が木製の丸椅子を携えてやって来た。
荻原時子(夏樹陽子)がオーナーの翡翠館は、目標に向かって励む「原石」のような若者たちが集う場所。桧山は、翡翠館の蔵で工房を開くはずだった家具職人・薮下の後輩で、桧山が持ってきた丸椅子も薮下が作ったものだった。翡翠館に来ることができなくなった薮下に代わってやって来た桧山は、蔵で古本屋を開きながら1ヶ月翡翠館に滞在し、翡翠館に住むのにふさわしい人物かどうか時子の判断を待つことになる。
桧山はコーヒーを淹れるのがうまく、そのコーヒーの味と香りは、翡翠館の住人であるガラス工芸品職人の堀池一子(片岡礼子)やテディベア作家の相澤幸太郎(中島トニー)を魅了する。一子や相澤と打ち解けていく桧山だが、桧山には一子や相澤に明かしていないことがあった。それは、桧山がデビュー作以来、作品を書けずにいる小説家であるということ……。
翡翠館での和やかな日々を過ごす桧山だが、古本の転売で金を稼いでいるだけの自分は明確な目標を持っている翡翠館の人々とは違うという想いが次第に桧山の中に湧き上がっていく。苦悩する桧山は、やはり翡翠館の住人であるピンホールカメラ専門の写真家・藤村佐和(Azumi)の写真撮影を見ながら、写真に残る“時間”に想いを馳せる。
そんな中、時子は身の回りのものの整理を始め、桧山が借りている蔵にある古いオートバイも処分すると言い出す。それを知った桧山は、ひとりでオートバイの修理を始める……。
函館珈琲
監督:西尾孔志
出演:黄川田将也 片岡礼子 Azumi 中島トニー あがた森魚 夏樹陽子 ほか
2016年9月24日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
2016年/カラー/DCP/90分
夏の函館。ガラス細工職人やテディベア作家、写真家など若きアーティストが集まるアパートメント・翡翠館に、ひとりの青年がやって来た。翡翠館の蔵で古本屋を開くことになった彼は、新作が書けなくなった小説家……。
映画に愛された街・函館で毎年開催されている函館港イルミナシオン映画祭は、20周年を迎えた2015年、函館を舞台にしたオリジナルシナリオから映画を創る「シナリオ大賞映画化プロジェクト」をスタートさせた。その第1弾となるのが、若者の苦悩と葛藤を柔らかなタッチで描いたオール函館ロケ作品『函館珈琲』だ。
2013年度同映画祭シナリオ大賞函館市長賞受賞作であるいとう菜のはの脚本を、『ソウルフラワートレイン』の西尾孔志のメガホンで映画化。撮影の上野彰吾、美術の小澤秀高、照明の赤津淳一ら、これまでも函館を舞台にした作品に参加してきた精鋭スタッフが集結している。
映画やドラマ、舞台で活躍する黄川田将也が主人公・桧山英二役で主演をつとめ、ガラス細工職人の一子役に片岡礼子、テディベア作家の幸太郎役にドイツ育ちのマルチリンガル・中島トニー、写真家の佐和役に音楽グループ・Wyolicaの元ボーカルで主題歌も担当するAzumiと、個性豊かな若手俳優陣が共演。さらに、翡翠館のオーナー・時子をベテランの夏樹陽子が演じ、函館港イルミナシオン映画祭ディレクターでもあるミュージシャンのあがた森魚もカフェのマスター役で出演する。
主人公・桧山の煎れるコーヒーの香りが結んでいく、翡翠館の人々それぞれの心。桧山たちが函館で出会ったやさしい時間を、あなたもスクリーンを通してきっと出会えるはずだ。
- 桧山英二:黄川田将也
- 堀池一子:片岡礼子
- 藤村佐和:Azumi
- 相澤幸太郎:中島トニー
- マスター:あがた森魚
- 荻原時子:夏樹陽子
- 監督・編集:西尾孔志
- 企画:函館港イルミナシオン映画祭実行委員会
- 脚本:いとう菜のは
- プロデューサー:小林三四郎/大日方教史
- アソシエイトプロデューサー:前田紘孝/竹森昌弘
- 撮影:上野彰吾
- 照明:赤津淳一
- 美術:小澤秀高/長寿恵
- 録音・整音:松野泉
- 衣装:宮本まさ江
- ヘアメイク:河野幸希
- スチール:渡邉俊夫
- 助監督:高橋明大
- 制作:後藤聡
- 音楽:クスミヒデオ
- 主題歌:Azumi「Carnival」(WARNER MUSIC JAPAN)
- 製作:太秦/ソウルエイジ
- 配給:太秦