
民宿を切り盛りする母親と、まだ母親に甘えたい幼い娘。入院したシングルマザーと、母に貰った不思議なポストに想いを託す小学生の息子。女優の夢を諦め実家に戻った娘と、反発する娘を優しく受け止める母親――。『ゆらり』は、現在、未来、過去、それぞれの時代の3組の親子を軸にした物語を三部構成で描く、心あたたまるファンタジーだ。
原作は、放送作家としても知られる西条みつとしが主宰する演劇チーム・TAIYO MAGIC FILMの同名舞台。ドラマやミュージックビデオなどの演出を手がけてきた横尾初喜(よこお・はつき)が同舞台を観劇して映画化を熱望し、舞台で作・演出をつとめた西条の脚本、これが劇場用長編初監督となる横尾のメガホンで映画化が実現した。
映画化にあたって、ふたりの女優が豪華なダブル主演を果たす。現在が舞台の第一部と過去が舞台の第三部で主人公・凜香(りんか)を演じるのは『下衆の愛』での演技も話題となった岡野真也。ひとりの女性の違った年代を見事に演じ、第一部では自身初となる母親役にも挑んだ。そして未来が舞台となる第二部の主人公・ゆかり役には、数多くの映画・ドラマに出演する内山理名。そのキャリアで培ってきたたしかな演技で、シングルマザーの葛藤を巧みに表現してみせた。
また、戸次重幸、萩原みのり、山中崇、遠藤久美子、平山浩行、渡辺いっけい、鶴田真由ら、実力派俳優陣が共演するのに加え、舞台版に出演していたお笑い芸人のアキラ100%こと大橋彰もあるシーンに登場し、映画初出演を果たしている。
異なる時代の3つの物語は、やがて親子の絆という名の糸でひとつに結ばれていく。ひとつに紡がれた『ゆらり』を目にするとき、きっとあなたの心は、ゆらりと揺れるような感動に包まれるはずだ。

現代。泉凜香(岡野真也)は、民宿「赤木箱」を笑顔で切り盛りする若き女主人。凜香の娘でまだ幼いゆかり(筧礼)は、このところ凜香が自分を以前のようにかまってくれないことを気にしている。ゆかりは、自分が誘拐されたら凜香が心配するかたしかめようと思いつき、その思いつきを聞かされた凜香の夫・孝介(山中崇)も娘を安心させるため“誘拐ごっこ”を手伝うことになる。一方、宿泊客の高山(戸次重幸)と、その連れの保科(遠藤久美子)は、赤木箱でアルバイトをする大学生・瞳(萩原みのり)の姿を見ると、奇妙な行動に出る……。
少し未来。働きながら一人息子を育てているシングルマザーの木下ゆかり(内山理名)は、息子の青空(そら/高橋幸聖)に、神様からの手紙が届くという古いポストをプレゼントする。青空がそのポストに手紙を入れると神様からの返事が届き、青空は大喜びで日々いろいろなことを手紙に書くようになる。ある日、ゆかりは入院することになり、ゆかりの入院中は別れた夫の正樹(平山浩行)が青空の面倒を見ることになった。青空は、父との生活の最中にも母と暮らす家へと立ち寄りポストに神様への手紙を入れるが、何日待っても返事は届かず……。
8年前の過去。東京で女優をしていた凜香は、志半ばで仕事を辞めて実家の民宿「赤木箱」へと帰ってきた。父親の幸雄(渡辺いっけい)とはそれなりに仲良くやっているのだが、母親の美和(鶴田真由)にはなにかと反発してしまい、美和の優しい言葉にもきつい言葉を返してしまう。そんな中、凜香の友達が東京からやってきて、幸雄は趣味の手品を披露しようと大張り切り。その様子を見ていた凜香の身に、不思議な出来事が起こる……。