安藤桃子監督が実妹・安藤サクラさんを主演に迎えて完成させた新作『0.5ミリ』が11月8日に東京公開初日を迎え、有楽町スバル座で桃子監督とサクラさん、共演の津川雅彦さんが舞台あいさつをおこないました。
桃子監督が自作の小説を映画化した『0.5ミリ』は、介護ヘルパーをクビになった主人公・山岸サワが“押しかけヘルパー”として街で出会った老人たちのもとに転がり込み、彼らの人生を覗いていくストーリー。
桃子監督は「姉妹でこの作品を作ったと言っても過言でもないというのが本心で、その始まりを考えたら、サクラが(母親の)お腹にいて生まれたときからふたりの間で培ってきたものが1本の作品に凝縮されたのではないかなと思っております」と初日を迎えた心境を語り、サワを演じたサクラさんは「1年間ずっと今日のことを考えていて、ちょっと緊張の糸がプッツリ」と想いに言葉を詰まらせつつ「この映画には生きる力みたいなのがいっぱい入っていて、みなさんがそれを観たあとのエネルギーというのが、なんか幸せな気持ちになったみたいだと思います」とあいさつしました。
安藤桃子監督、家族での映画への挑戦は「怖かった」 『0.5ミリ』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった安藤桃子監督、安藤サクラさん、津川雅彦さん(左より)
「無事に初日を迎えることができて、この舞台あいさつ中になんかマラソンを42.195キロ走りきったくらい、すごいスッキリとすがすがしい気持ちになっています(笑)」と話した安藤桃子監督
「いつもは添加物いっぱいの味なんですけど、小さいときから私を顕微鏡で見るように観察してきた姉が私を操っているので、無添加の味を出してもらえた感じがする」と山岸サワ役の安藤桃子さん
「ものすごくいい雰囲気が現場にありましたね。ほかのことになにも気を取られず役に入れた経験は初めて。生まれて初めてのところへ(監督に)連れて行かれた」と、真壁義男役の津川雅彦さん
サワに押しかけられる老教師・真壁義男を演じた津川さんは、共演したサクラさんについて「今回、初めて一緒にやってみて、なんてすごい女優だろうとつくづく思いました。なにがすごいかって言うと、なんにもしないんです。ぼくも74歳になって“なんにもしない”ことを目指しているんだけど、20代で“なんにもしない”ことができちゃっている。ぼくと50年も差がある子どもがそこへ行っちゃっているということが驚異でした」と絶賛。
津川さんはじめ、多くのベテラン俳優陣との共演を経験したサクラさんは「もちろん、すごくすごくすごくすごく緊張しました。サワちゃんはおじいちゃま方のところにズカズカ行かなきゃならないと思っていたのですごく怖かったんですけど、現場に行ったらもう(演じる相手は)“じいちゃんだ、ジジイだ”と思ってやったので、生意気な感じになっちゃいますけど、すごく楽しくて心地よくて、女優としても貴重な時間だし、いち生物(せいぶつ)としても贅沢で貴重な時間を過ごしていました」と振り返りました。
舞台あいさつの司会は姉妹の父親・奥田瑛二さん。「私、司会進行初めてでございます。これから職業を変えようかなと。そういう意味では、今日はドキドキワクワク、膝がガクガクでございます」
初日を迎え想いに言葉をつまらせる場面もあった安藤サクラさんは津川雅彦さんに寄り添いながら舞台あいさつ。左より、司会の奥田瑛二さん、安藤桃子監督、安藤サクラさん、津川雅彦さん
『0.5ミリ』は、桃子監督とサクラさんの父親で舞台あいさつの司会もつとめた奥田瑛二さんがエグゼクティブ・プロデューサーをつとめているのに加え、母親の安藤和津さんもフードスタイリストとして参加。1本の映画に家族で取り組んだことについて桃子監督は「気がついたら家族全員が映画人だったり、さらにサクラが結婚した相手(俳優・柄本佑さん)のご家族も映画人だったりして、映画人の家族がどんどん増えていく中で“家族で映画を作る”ということに1度挑戦してみたかったんですね。その挑戦は1回こっきりぐらいじゃないと絶対にできない。この作品のストーリーはは8年間祖母の介護を家族みんなでやったことが原点となって生まれているので、この作品以外では家族で挑戦することはできないと思って、天国か地獄かすごく怖かったんですけど(笑)、挑戦してよかったと思います」と、感想を述べました。
そして、桃子監督は「私は(この作品で)一旦、産みきった感じで、次回作は生まれ変わって撮りたいなというくらい、この映画に全部を出しきりました。この作品にはサクラとか津川さんのキラキラしたものが詰まっていますので、それをぜひ、いろいろな方におすそ分けしていただけたら嬉しいです」と、サクラさんは「ほんとにみなさんがいらしてくださったことが嬉しくて、ありがとうございます。それが言いたかったです。街でチラシを渡した方が来てくださっていたり、こうやっていろいろつながって広まっていくのがこの映画に合っていると思います。嬉しいです。ありがとうございました」と、舞台あいさつを締めくくりました。
織本順吉さん、草笛光子さん、坂田利夫さんや、柄本明さん、角替和枝さん、木内みどりさん、ベンガルさんら、日本エンターテイメント界を代表するベテランや実力派が集結して「生」と「老い」をユーモラスにかつ鋭く描く196分の大作『0.5ミリ』は、11月8日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次ロードショーされます。