人違いがきっかけで起こるおかしな事件を描いた人情喜劇『道しるべ』（６月13日公開）の完成披露試写会が６月４日に渋谷ユーロライブで開催され、金谷ヒデユキさん、浜畑賢吉さん、園まりさんの出演者３人と田中じゅうこう監督が舞台あいさつをおこないました。
　『道しるべ』は、真面目な介護士と詐欺グループの一員という、境遇はまったく違うが名前が同じふたりの男が主人公。名前が同じために入れ違って迎えの車に乗ってしまったふたりが、老カップルを巻き込んで起こす騒動が描かれていきます。
　詐欺の被害にあう老婦人・千代子を演じた園さんは実に42年ぶりの映画出演で「試写会という場に立たせていただくのは今回が初めてです」とあいさつ。「（出演のオファーに）ふたつ返事で出させていただいたんですけど、とても自然体に演じさせていただいて、もちろん先輩の浜畑さんにすごく助けていただいて、とても新鮮な気持ちで、緊張しましたけどとてもありがたかったです」と久々の映画出演を振り返りました。
　千代子の恋の相手・志村を演じた浜畑さんは「ご本人には申しあげておりませんけれども、私が若いときに俳優の修行をしているころに、テレビなんかでまりさんを見て、かわいい人だなあと憧れておりました。早く共演できればと思い、この歳になってようやくできました」と、園さんとの共演を語り、撮影について「終わるのやだなあ、もうちょっとやりたいなあという気持ちを持ちました」とコメント。
　日本エンターテイメント界の礎を築いた劇場・ムーランルージュの軌跡を追ったドキュメンタリー映画『ムーランルージュの青春』（２０１１年）も手がけた（田中重幸名義）田中監督は、小学生のころから園さんのファンだったと明かし「あのころテレビは黄金時代で、それを支えていた作家の人とかバンドの人はムーランから来ていた人が多かったんですよ。日本のポップスが芽生えた時期で、園さんはその歌姫ですから」と、園さんへの憧憬を語りました。

　名優と同じ名前の真面目な介護士・三船敏郎を演じた金谷さんは「監督が“ぼくは金谷くんに映画に出てほしいんだよ”と言ってくださっていたんですけど、ずっと“テレビで見てるときから金谷くんのことが大好きで、特に金谷くんのコントが大好きでね”と言っていて、コントやったことないんですよ俺。もしかしたら人違いでブッキングされたんじゃないかなって(笑)」と気になる告白で客席の笑いを誘い、おなじみの替え歌を生で披露して舞台あいさつを一層盛りあげました。

　園さんは、今後の女優活動について質問されると「ほんとにいろいろなことに挑戦したいと思っていて、いまが一番充実した年代なので、ご縁があれば、歌だけではなく挑戦していきたいと願っております」と前向きな回答を。
　金谷さんは「（浜畑さんと園さんの）おふたりがほんとに魅力的で、こんな私が言うのもなんなんですけど、かわいいんですよね。ほんとね、年齢を重ねていくことが怖くなくなるというか、こんな人になりたいなと思う」とベテランふたりの年齢を重ねたゆえの魅力を讃えました。

　また、田中監督はもうひとりの主人公・三舟トシローを演じた仁科貴さんからの「どうぞみなさん肩の力を抜いて、昔の映画館に戻ったつもりで、みんなで笑って楽しく観てください」というメッセージを代読し、そのメッセージを受け「昔はプログラムピクチャーというのがあって、低予算だけど一生懸命工夫をしていて、一見バカバカしいけど、映画館を出たときにちょっとホロッとしたり、疲れが取れたり、そういう映画がいまは少ないのでね、そういう映画を作ってみたいというのが今回の意図なんです。だから、そういうふうに気楽に楽しんで観ていただきたいと思います」と作品に込めた想いを語りました。

　田中監督が往年のプログラムピクチャーの復権の願いを込めたシリーズ「夕焼け劇場」の第１弾となる『道しるべ』は、６月13日(土)より、角川シネマ新宿、横浜ニューテアトルほか全国順次公開されます。