舞台あいさつをおこなった美保純さん、高川裕也さん、鳴神綾香さん、遠山景織子さん、石橋宇輪(いしばし・うわ)さん、佐藤乃莉(さとう・のり)さん、小澤雅人監督(左より)
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大きな社会問題でありながらタブー視される傾向のある「性暴力被害」を題材とした劇映画『月光』が6月11日に新宿K's cinemaで初日を迎え、主演の佐藤乃莉さんと石橋宇輪さん、小澤雅人監督らが舞台あいさつをおこないました。
『月光』は、小澤雅人監督が児童虐待を扱った前作『風切羽~かざきりば~』に続いて社会問題をとりあげた長編。自宅でピアノ教室を営み、教え子の父親に性的暴行を受けた女性・カオリと、カオリの教え子で父親による性的虐待に遭っている少女・ユウというふたりを主人公に、重いテーマに真摯に取り組んだ作品となっています。
小澤監督は「こういう問題ってメディアもマスコミもなかなかとりあげず、タブーで喋っちゃいけないという空気が世の中にあるんですよね。だから、この映画をきっかけに“私はこう思った”とか、ちょっとずつ発していくことで社会の閉塞感を少しずつでも変えていけるかなと思うので、みなさんも映画を観たからにはなにかを発信していただきたいと思います」とあいさつ。
カオリを演じた佐藤乃莉さんは「完成した映画を観たとき、身近な人がもしかしたらそういうことになっているかもしれない、そういうことが自分にふりかかるかもしれない、そういうリアルなんだと、ひとりのオーディエンスとしてもすごく感じるものがあった映画でした。私は英語を話すので、そのときは“言葉が大事”と思っていたんですけど、今回この役をやらせていただいて、言葉ではなくて叫び声ひとつでも伝わる感情があるんだなと、それをすごく心に感じました」と作品について語り、現在14歳でこれが本格的な映画デビューとなるユウ役の石橋宇輪さんは「すごくすごくがんばった作品です。まだ表現に表せないんですけど、私の魂がこもった映画になっていますので、みなさまに届けばいいなと思っています」と心境を述べました。
ユウの母親・シノブを演じた遠山景織子さんは「撮影中は台本を開くたびに苦しくて、読んでいるだけでもつらい気持ちになったんですけど、こういう経験をしている子たちがいるということを伝えたいなという想いで参加させていただきました」と出演を決めた動機を明かし、カオリの母親・ミナヨを演じた美保純さんは「『月光』というタイトルがすごくいいなと思いました。この映画をみんなに観てもらって“あの子は『月光』な目に遭っているんじゃないか”とか言えるようになるかもしれない」と、作品を通して性暴力被害への理解が進むことへの期待を語りました。
舞台あいさつでは、佐藤さんが「立っている気力がなくなってしまって(笑)」待ち時間は座り込むほど役に集中していたというエピソードも紹介され、小澤監督は「かなり精神的に追い詰めてしまった撮影なので、みなさんに申し訳ない感じなんですけど」とキャストに労いを見せるとともに「ほんとに簡単には演じられないシーンをみなさんに演じていただいて、そのためにリハーサルもたくさんして、たくさん話しあって、キャラクターを作り上げてから撮影に臨むことができました。ほんとにみなさんのご理解があってこそできた映画です。たくさんの人の想いを乗せた映画ですので、たしかに題材は扱いづらいかもしれませんけど、ちょっとずつ切り拓いていくのが映画とか芸術の役目だと思うので、少しでも多くの方に観ていただけるよう協力していただけると嬉しいです」と呼びかけて舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、上野優華さん、川瀬陽太さん、黒沢あすかさんらが共演し、登場人物の感情をときに繊細に、ときに大胆に描いていく『月光』は、6月11日(土)より新宿K's cinemaにて公開中。公開期間中トークショーの開催も予定されています。