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有森也実さん「みなさんの言葉が映画に向き合う原動力に」 『いぬむこいり』初日舞台あいさつ

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左より、武藤昭平さん(勝手にしやがれ)、笠井薫明(かさい・しげあき)さん、片嶋一貴監督、有森也実さん、尚玄さん、山根和馬さん、PANTAさん。山根さんは劇中で山根さん自身が着用した“犬男”のマスクを、PANTAさんはあるシーンで登場するダミーヘッドを持ってポーズ。笠井さんと尚玄さんはフォトセッションのみの参加
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 伝承民話をモチーフに現代社会をシニカルな視点で描く『いぬむこいり』が5月13日に新宿K's cinemaで初日を迎え、主演の有森也実さんと共演の武藤昭平さん、山根和馬さん、PANTAさん、片嶋一貴監督が舞台あいさつをおこないました。

 『いぬむこいり』は、有森也実さんが演じる小学校教師・梓が主人公。東京での生活がうまく行かずお告げの声に導かれて“イモレ島”を目指す梓の数奇な運命がエロティックな表現も交えて描かれていきます。

 四章構成で上映時間4時間以上の長大な作品とあって、上映後に登壇した片嶋一貴監督は「おそらく4時間ご覧になって、お腹いっぱいで消化不良を起こしているような状態だと思います(笑)。だんだん消化されてくると思いますので、そのときにどんなふうな感じを持っていただけるかがひじょうに楽しみにであります」と満席の客席にあいさつ。
 有森也実さんも監督のあいさつを受けて「いま監督も消化不良を起こしてしまっているのではないかとおっしゃいましたけど、私は初号(試写)を観て、ほぼ1年(作品を)受け入れることができませんでした。それでも、この映画のよいところをみなさまからいろいろな角度でいろいろな感想をいただいて、その言葉が私が『いぬむこいり』にだんだんと向き合う原動力になりました。そんなふうに“これ、ちょっと無理だったかな”と思っても、1日、1週間、1ヶ月、1年後には“ああ、なかなかいい映画だったな”と思ってくださるような力のある映画だと思っております」と、自らの経験をもとに映画の受け止め方を提示しました。

 ジャズ・パンクバンド“勝手にしやがれ”のメンバーで、初の本格的な演技でペテン師のアキラを演じた武藤昭平さんは、観客のみなさんと一緒に映画を鑑賞したそうで「観返すと、私がやっていたアキラという男、特に前半のアキラってほんとに嫌な奴だなと(笑)。嫌な奴だけど憎めない感が出ればなと思って一生懸命やっていましたけれども、初号で観たよりも客観視して、いろいろな角度で、みなさんの芝居から、照明さんからカメラチーム、みなさんの愛がすごい細かいところにこもっているんだなと改めて感じて、最後まですごい楽しい4時間だなと思って観られました」と感想を述べるとともに「今日からやっと一般の方に届けられるスタートが切れたのを心から感謝申し上げております。それとともに、どんどん口コミで広げていただけたらなと思っております」と作品への応援を呼びかけました。

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企画プロデュースと脚本(共作)もつとめた片嶋一貴監督

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主人公の小学校教師・二宮梓を演じた有森也実さん

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梓と出会うペテン師・須藤アキラ役の武藤昭平さん

 片嶋監督作品常連で、今回は犬男になる青年・翔太を演じた山根和馬さんは「いつも監督に求められるものは強い役が多いんですけど、翔太という役をやるにあたって弱い部分を出すというのをぼくは挑戦した部分があって」と話し、犬男になると性格が豹変するという二面性のある役柄について「(犬男のマスクを)被るとけっこう入るもんなんですね、スイッチが。ぼくは身体を動かすダンスという仕事をしているので、自然にあまり考えずに、翔太は翔太、犬は犬というふうなかたちでけっこう切り替えてやっていたので、あんまり大変だったという感じじゃなかったんですよね」とコメント。

 長いキャリアを持つロックミュージシャンで、翔太の父であるナマ族の王・ナマゴンを演じたPANTAさんは「ほんとに、どっから切り込んでいいのかわからないようなすさまじい映画で、いいとか悪いとか、感動したとか感動しないとか、よくないとか嫌いだとか、そういうことじゃなくて、すごい映画だなという感想でした」と映画の感想を述べ、演技について質問されると「ほんとに、監督が自分の別の面というか“こんな面を引き出してくれたんだな”って。こういうふうにお互いを讃えあうとつまんねえ舞台あいさつなんですけど(笑)」と口にしつつ、武藤昭平さん演じるアキラと対峙するシーンについて「やっぱり相手方がうまいと自分が引き立つというかな」と振り返りました。

 また、武藤さんは出演に加えて映画のラストを飾る主題歌「カオス」を勝手にしやがれとして手がけており、有森さんは主題歌について「『カオス』がかかっている間にこの映画の回想をできて、自分の中に(映画が)落ちていく感じというのがすごくしたんですね。そういうお客様とのつながりを『カオス』が強く引きつけてくれたという感じがした」と印象を。
 武藤さんは、自身の撮影が終わったあとに監督から主題歌を依頼されたと経緯を明かし「(映像を)なんにも観ていない状態だったんですけども、撮影現場は知っているし、台本は読んでるし、ストーリーもわかるし」と曲作りに取りかかり、映画のラストを思い浮かべ「どんな曲が来たら感動的かなと思って、そしたらあのイントロが降りてきた感じですね。でも、この映画を歌詞でどう説明したらいいんだろう、流れたとき“そうだよね”っていう気分になる歌詞が最初は全然ひらめかなくて、映画の印象的なところを箇条書きで書いたりして、この映画はどう考えてもカオスだなと。それで『カオス』というタイトルが付いて、箇条書きになったものを言葉の中に散りばめて、ああいうかたちでやっと完成したっていう感じですね」と曲ができあがるまでを語りました。

 さらに武藤さんは「ぼくと片嶋監督、ときどき顔が似てるって言われるんですね(笑)。今日観てても、映画のシーンで一瞬自分の顔が片嶋監督に見えるところが(笑)」と話し、その言葉に片嶋監督も「実はアキラの性格がお前(=監督自身)だろって言われたり(笑)」と客席の笑いを誘いました。

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無人島で暮らす犬男の翔太役・山根和馬さん

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ナマ族の王・ナマゴンを演じたPANTAさん

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劇場ロビーには犬男のマスクなどが展示

 有森さんは「私が伝えたいのは、映画はひとりで楽しむものじゃないというようなことです。お隣同士の方、知らない人かもしれませんが、この映画を観て、なにか面白いなと思ったりしましたら、帰りの道で仲良く“こんなとことが面白かったね“とか“あんなところがちょっと”とか、そんなことをお話ししながら帰り道で映画をまた楽しんでいただければと思います。私はこの映画が終わったあと、みなさんからいろいろなご意見、コメントをいただいて、映画って素晴らしいなというのを実感したところだったので、これをみなさんにお伝えしてごあいさつとさせていただきます」と、舞台あいさつを締めくくりました。

 舞台あいさつ登壇者のほか、ベンガルさん、緑魔子さん、石橋蓮司さん、柄本明さんのベテラン俳優陣や、個性派の江口のりこさん、片嶋監督作『アジアの純真』で主演をつとめた韓英恵さんら幅広いキャストが出演する『いぬむこいり』は、5月13日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開。
 新宿K's cinemaでは、5月21日(日)に武藤昭平さんとPANTAさんがミニライブをおこなうなど、公開期間中は連日スタッフ・キャストや関係者を招いてのトークイベントが開催されます。

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