舞台あいさつをおこなった柴口勲監督、正司怜美さん、平島咲良さん、吉田玲さん、福田麗さん、江藤心愛(えとう・ここあ)さん、岡本ゆうかさん、辻佑佳子さん(左より)
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山口県の40名の中高生が作り上げたミュージカル映画『隣人のゆくえ―あの夏の歌声―』が8月12日に新宿K's cinemaで東京公開初日を迎え、キャスト・スタッフをつとめた高校生たちと柴口勲監督が舞台あいさつをおこないました。
『隣人のゆくえ―あの夏の歌声―』は、山口県下関市の歴史ある学校・梅光学院中学校・高等学校の生徒40名が主体となり、同市在住の柴口勲監督のもとで作り上げた作品。主人公の高校1年生・野村カンナが、夏休みに歌劇部(ミュージカル部)の練習を見学する中で、かつて学校と街を見舞った悲劇の記憶に触れていく物語が、歌とダンスによって綴られていきます。
柴口監督と7人の中高生(※撮影時。現在は高校生・大学生)は早朝3時に集合し、朝早くの飛行機で山口県より上京して舞台あいさつに登壇。
映画は撮影や録音など現場スタッフはもちろん、劇中音楽の制作や振り付けまですべて中高生たちがつとめており、柴口監督は「ぼく自身が熱心な映画ファンなので、どこかにこのような稚拙な映画をお見せしていいのかなという迷いや悩みというか、ずっとついて回っています。でも、そういう稚拙な映画だから伝わる何かがあるんじゃないかと信じてここまで来ました」と東京での公開を迎えた心境を語りました。
撮影がおこなわれたのは2年前で、主人公のカンナを演じた正司怜美さんが「撮影が夏休みの終わりから始まったんですけど、中庭のシーンを9月の終わりに撮影して、長時間、中庭で風が冷たくて、この夏服で撮影だったのですごく寒かったのを覚えています」と撮影を振り返ると、柴口監督は「9月に撮ったんだけど、ぼくが納得しなくて撮り直したの。11月だったと思います」と、正司さんの記憶違いで実際はもっと寒い時期だったと付け加えてコメント。
カンナを練習見学に誘う歌劇部部長の田中絹代を演じた福田麗さんは「個人的なことなんですけど、撮影をしていた時期が高2で、人生最大の反抗期に入っちゃっていて、闘うのが大変でした(笑)」と、撮影時の思い出を語りました。
『隣人のゆくえ―あの夏の歌声―』は撮影に先立ち希望者が参加する1ヶ月間のワークショップをおこない、柴口監督が参加者の希望や適性に応じてスタッフの役割や配役を決めており、歌劇部副部長・木暮実千代役の平島咲良さんは、ワークショップで「監督に“こういうテーマで寸劇みたいなのをして”って言われて」即興の演技をしたのが「印象に残っていて、大変でした」と感想を。
林芙美子役でダンスシーンを演じた江藤心愛さんは「あの(撮影の)時期は暑かったんですよ。暑かったのに、あの振りを10回くらいやって、もう死ぬかと思いました(笑)」、金子みすゞを演じた吉田玲さんは歌唱シーンの撮影で「けっこう外が暗くて照明も暗かったから、スタッフの人たちみんな携帯を持っている人は懐中電灯を付けて10人くらいが当てて」(監督によると結局は別の日に撮り直したとのこと)、丸山小梅役の岡本ゆうかさんは「小梅の歌のときの撮影もすごく暑くて、クーラーもなにも効いていないステンドグラスの前で何回も、それが暑くて大変でした」と、歌劇部部員役のキャストは夏の暑さや授業の合間を縫っての撮影に苦労もあった様子。
撮影時は録音をつとめ、公開にあたっては広報担当もつとめている辻佑佳子さんも「カンナが部室に行くシーンでトンネルの中を通るとき蝶々が出てくるんですけど、あれを捕まえたのが全部私なんです。前日くらいに監督から“色とりどりの蝶々が飛んで不思議な空間に誘い込まれる”みたいなイメージを語られて、蝶々を探すぞと思って外に出たら、もう蝶々の時期じゃないんですよ(笑)。友達とふたりですごく困りました」と、やはり撮影時期ゆえのエピソードを明かしました。
舞台あいさつでは観客からの質問タイムも設けられ「この映画に携わったことがこれからの人生にどういう影響があるか」という質問に、吉田さんは「小さいころからミュージカルをずっと習っていて、ミュージカルの舞台にいつか立ちたいなと思っているのでそれに役立てられたらなと思っています」と抱負を語り、福田さんは「(撮影のときに)進路を決めていなくて、映画を撮ったことで音大に進学したんですけど、そのきっかけになったかなと思っています」と、実際に映画の経験が進路に影響を与えたことを回答。
また「東京でこれから行きたいところは?」という質問がされると、正司さんは「このメンバーだったらどこでも楽しいので」、岡本さんは「人が多いのが苦手で酔っちゃうんですけど、竹下通りに」と、高校生らしさを見せていました。
そして、あいさつが終わると、辻さんの「みなさん、彼女たちの声は聴こえましたか? それでは最後にもう一度、彼女たちの声を聴いてください。よーいスタート!」の合図とともに、出演者6人が映画劇中を再現するような歌とダンスのメドレーがスタートしました。
「はじまりのふたこと」「70才になったら」「傘」など劇中歌を振り付きのメドレーで披露したキャストの6人
キャスト6人は舞台だけでなく客席も使うステージングを見せました
劇中曲の作曲・演奏もおこなっている正司さんのバイオリン演奏や、江藤さんのソロでのダンスも披露されました
ファンタジーやホラーの要素も盛り込まれ、エンターテイメントの中に平和への願いが込められている『隣人のゆくえ―あの夏の歌声―』は、各地の映画祭で好評を得ており、大林宣彦監督も「奇蹟のような映画」と絶賛。8月12日(土)より新宿K's cinemaにて、8月19日(土)より横浜シネマジャック&ベティにて公開されます。