舞台あいさつをおこなった和田光沙(わだ・みさ)さん(左)と片山慎三監督は観客動員2万人突破を祝して指で「2」のポーズ
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3月の公開以来、上映館を増やしロングラン上映を続けている『岬の兄妹』がこのほど観客動員数2万人を突破し、5月11日に池袋シネマ・ロサで主演の和田光沙さんと片山慎三監督がヒット御礼舞台あいさつをおこないました。
『岬の兄妹』は、障碍を持つ兄妹が貧困の中で犯罪に手を染める姿を通して、地方都市の陰の部分や家族の本質を描いていく作品。3月1日に公開されて以来、多くのメディアで取り上げられるなど大きな反響を呼び、2ヶ月を越えロングラン上映が続くヒットとなっています。
舞台あいさつの冒頭で片山慎三監督より観客動員数2万人突破の報告があり、片山監督は「作ったときはそんなに観てもらえると思っていなかったので、嬉しい反面ちょっと恥ずかしいですね」と作品がヒットしての心境を語り、兄妹の妹・真理子を演じた和田光沙さんは「片山さんもおっしゃいましたけど、作っているときは完成するのかどうかもわからないくらいの感じだったんですけれども、これはほんとに観てくださったみなさんが広めてくださった結果なので、ほんとに感謝しています。ありがとうございます」と感謝の言葉を述べました。
また、作品がヒットして変化したことがあったかと質問されると、片山監督は「くまもと復興映画祭」のディレクターをつとめている行定勲監督に会った際に「うちのくまもと映画祭でもぜひ片山さんの映画を上映したいんですよ」と言われたというエピソードを紹介。片山監督はまだ見習いのころに行定監督のテレビ作品「朗読紀行」(2003年・NHK)に見習い助監督で付き「メチャクチャ怒られていたんですよ」とのことで、その行定監督に敬語で話しかけられたのが「一番驚いた」と話しました。
同じ質問に和田さんは、バイト先で『岬の兄妹』の話題を出されたり、普段は映画を観ないようなバイト関係の方が『岬の兄妹』を観てくれていると話し、劇場数や上映回数が多いため「観てくださる方が増えて嬉しいです」とコメントしました。
今回の舞台あいさつがおこなわれた池袋シネマ・ロサは、2018年の映画界に旋風を巻き起こした『カメラを止めるな!』の最初の上映館のひとつであり、同作を258日間上映したことでも知られる映画館。ワークショップから生まれた『カメラを止めるな!』、片山監督の自主制作による『岬の兄妹』と、インディーズ系の作品に注目が集まっている日本映画界の現状をどう思うかと質問されると、片山監督は「低予算映画もお金かけて作る映画も、技術的なことで言うとそこまでクオリティの差がなく観られたりして、あと、いろいろ規制が多くてもちろん映画もその規制の中で作られているので、一般の映画が作れないような際どい内容のものを自主映画が挑戦しているというか、ちょっとわかりづらかったりとか難解なものでも作って、映画通の人たちに受け入れられるというか、そういう時代なんですかね」と回答。
和田さんはその質問に「どんな作品でもやる心持ちとしては変わらない」と話した上で「今回みたいにみんなで作り上げていくというのは、ものづくりとしてほんとに幸せな時間だったなと改めて思いますね。すごく時間のない中でやってバッとやってそのときのよさというのもあるんですけど、こうして時間をかけて(※『岬の兄妹』は1年間にわたって撮影)、じっくり納得いくまでやれるというのは幸せだなと思います。そういう作品が増えればいいなと思います」と答えました。
このほか、上映後の舞台あいさつということもあり、ラストシーンにまつわる「いまだから話せる」撮影の裏側のエピソードも公開されました。
さらに映画を鑑賞したばかりの観客の方々からの質問時間も設けられ、和田光沙さんが「美術協力」でもクレジットされていることについて、兄妹が住む家に生活感を出すため「片山さんが私の実家に来て、いろいろものを物色して持っていったっていうことなんですよね(笑)」(和田さん談)ことが明かされ、片山監督曰く和田さんの実家は「すごいいいものがあって宝の山でしたね」。和田さんは「ふたり(兄妹)が生活している空間を実際ちょっと自分で作ってみたいなあ」という想いから飾り付けも手伝ったと振り返りました。
舞台あいさつの最後に和田さんは「この作品は片山さんが自分でやりたいことを始めようと言って集まった仲間たちと作った作品で、作っているときもそうなんですけど、公開に至るまでもすごくたくさんの方に協力していただいて、そして公開が始まってからもこうしてロングラン上映していただけるのは、ほんとに観てくださっているみなさんや支えてくださる方々のおかげだと思って、ほんとに感謝しています。ほんとに、ひとつひとつの出会いをこれからも大切に映画に関わっていきたいと思います。今日はほんとにありがとうございました」とあいさつ。
そして片山監督は「ほんとに今日はありがとうございました」と感謝を述べつつ「2万人突破したということですごく喜ばしいことなんですけど、映画界的に言うとですね、2万人入ったとして、興行収入が3千万いかないくらいなんですね、普通に公表されているので言いますけど。なんですけど、まあ作り手にどれぐらい還元されるかというのは、けっこういま誰も問題視はしていないんですけど、やっぱり映画を作っている身としてはですね、自分も撮ってみて初めて、こういうふうに興行されて、いかに厳しいものかというのを思い知らされたんですよ。これからもすごい厳しいなっていうふうに思っているんですけど」と「大ヒットと言っても、やっと作ったお金が戻ってくるくらい」であるという状況に対する問題も提起。「今日、初めてご覧になられた方は、2回目3回目観ていただいたりですね、ご友人とかご家族に宣伝いただいて、みなさんの力で盛り上げていっていただけたらなと思いますので、みなさんよろしくお願いします」と呼びかけて舞台あいさつを締めくくりました。
この日は来場者プレゼントとして劇中に登場する「KYタクシーのポケットティッシュ」が和田光沙さんと片山慎三監督から手渡されました
もうひとりの主人公である兄妹の兄・良夫役に松浦祐也さん、そのほからが出演する『岬の兄妹』は、5月6日までで累計観客動員数21781人、累計興行収入2847万3300円、公開館数63館(セカンド上映、上映終了劇場も含む)を記録し、さらに公開劇場の拡大が予定されています。