舞台あいさつをおこなった中川奈月監督、中村優里さん、福永朱梨(ふくなが・あかり)さん、美知枝(みちえ)さん、山中アラタさん(左より)
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多くの映画監督や俳優、著名人が絶賛のコメントを寄せる『彼女はひとり』が、10月23日に新宿K's cinemaで初日を迎え、主演の福永朱梨さんら出演者と中川奈月監督が舞台あいさつをおこないました。
『彼女はひとり』は、立教大学大学院で映画を学んでいた中川奈月監督が、同大学院の修了制作として作り上げた作品。橋から身を投げながらも生還した高校生・澄子が周囲に“復讐”していく姿が、ホラー的な手法を用いつつ描かれていきます。
映画が完成して以降、各地の映画祭などで上映され好評を博し、黒沢清監督、諏訪敦彦監督、鶴田法男監督、佐伯日菜子さんら多くの映画監督や俳優、著名人の絶賛を浴びつつ撮影から5年を経て劇場公開を迎えました。
初日は満席でのスタートとなり、中川監督は「5年かけてここまでたどり着きまして、初日を満席で迎えることができまして本当に嬉しいです。ありがとうございます」とあいさつ。『彼女はひとり』を作った動機について「感情をぶつけるような暴力的な女の子の話を作りたいとずっと思っていて、それが復讐というかたちで物語の軸になるものをやりたいと思っていたのと同時に、その原動力に幽霊の存在があってほしいという想いから、サスペンスも交えて、いろいろこねくり回してこういう感じになりました」と語りました。
主人公の澄子を演じた福永朱梨さんは、極端な行動も見せる澄子について「外に怒りを発散したり他人にぶつけるということは、そんなに他人事とは思えなくて」と話し「どんな人の中にも怒りとか滞っているものとかが心の中にあって、澄子はそれを外に出していただけだったと思ったので、違う世界の人だなというふうには感じなかったです」と印象を述べました。
中川監督は、オーディションのときの福永さんが「部屋に入ってきたときから禍々しくて(笑)」と、普段の福永さんとはまったく違う印象だったと話し「喋らないときの立ち姿でも彼女に過去が見える状態をそのとき感じたので、主役をお願いしました」と主演に起用した理由を説明。
福永さんは、役作りのために「澄子として日記を書いていて」と、映画では描かれていない澄子の過去までを日記として書いて役に臨んだことを明かしました。
澄子が見る幻影の少女・聡子を演じた中村優里さんは、セリフがまったくない役に「最初はどうしたものかなと悩んだんですけど(笑)」と笑いつつ「何回も何回も台本を読んでいるうちに、見えないものが見えるシーンがあるという、そのシーンだけですごくパワーがあると自分で気づいて、そこからはすごく楽になりました」と、特殊な役を演じての印象を語りました。
教師でありつつ澄子の幼なじみ・秀明と交際する女性教師・波多野を演じた美知枝さんは「教師としての正義感を持っているんですけど、どうしても理性では抑えきれず生徒に恋してしまうという罪悪感との狭間でつねに葛藤しているということを感じたので、そこを表現できるよう、行動でしたりセリフを一個一個自分の中に積み上げて役作りをしていってという感じです」と役作りを語り、映画終盤での波多野の行動について「たぶん、澄子の中にかたちは違うけれど共感するものを」感じたのではと、解釈を述べました。
澄子の父親・隆を演じた山中アラタさんは、脚本を読んだときその内容から中川監督に対して「大丈夫か、この人は」と思った冗談交じりに語り、現場では福永さんが澄子になりきっており「大丈夫か、この子は」と思うほどで会話もほとんどなく「そういう緊張感がいい効果を生んだんじゃないかと思っています」と現場の印象を回想してコメント。
福永さんは、父親役の山中さんがあるワンシーン以外は一度も福永さんと目を合わせないようにしており「そのことが澄子の中で(父親への)怒りを増大させていったので、そう接してくださってほんとにありがたかったです(笑)」と振り返りました。
舞台あいさつは、登壇者それぞれのメッセージで締めくくられました。
「今日はご来場ありがとうございます。5年前の作品で、ぼくたちもちょっと記憶が古い部分もあるんですけど、無事こうやってK's cinemaさんでやっていただけて、ほんとに嬉しいと思っています。(上映期間が)限定された時間ではありますが、ぜひ口コミ、SNSとかで書いていただいて、この作品ひとりでも多く観ていただけるとうに、ぼくもがんばりますので、よろしくお願いいたします」(山中アラタさん)
「本日はほんとにありがとうございました。ぜひ、何度も観ていただけたら嬉しいです」(美知枝さん)
「いまはけっこうお家で簡単に映画も観られる時代になったんですけど、この映画は、いまここの映画館でしか観られない映画になっているので、ぜひ広めていただけたら嬉しいです。本日はありがとうございました」(中村優里さん)
「映画を映画館で観るというのは、ほんとに特別な体験だと思っていて、映画の時間を調べて予約をして、電車の時間を調べて劇場に来て、ほんとに今日この映画のためにお時間を作ってくださってありがとうございます。みなさんの感想などぜひ見たいので「#彼女はひとり」でいろいろ呟いていただけたら嬉しいなと思います。本日はありがとうございました」(福永朱梨さん)
「公開前から試写もやらせていただいて、たくさんの方々から熱いコメントをツイッターでも呟いていただいて、いろいろな方に波及していってくれたのだなと思ったんですけど、初日を迎えるまででもネットでご予約された方もたくさんいらっしゃって、ほんとにほんとに嬉しいです。作品を楽しんでいただけたら嬉しいんですけども、もしほんとに面白かったら、ぜひツイッターで口コミなどしていただけたらなと思います。ほんとに今日はありがとうございました」(中川奈月監督)
舞台あいさつ登壇者のほか、金井浩人さん、三坂知絵子さん、堀春菜さんらが出演、撮影には黒沢清監督作品などにも参加するベテラン・芦澤明子さんが参加している『彼女はひとり』は、10月23日(土)より新宿K's cinemaほか全国公開。公開期間中には、ゲストを招いてのトークイベントも開催されます。