舞台あいさつをおこなった納本歩(おくもと・あゆむ)さん、越智貴広さん、工藤トシキさん、望月智弥さん、美里朝希(みさと・あさき)さん、藤井秀剛監督(左より)
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現実にあった「劇場占拠事件」を映画化した青春クライム・サスペンス『半狂乱』が11月12日にヒューマントラストシネマ渋谷で初日を迎え、主演の越智貴広さんと工藤トシキさん、藤井秀剛監督らが舞台あいさつをおこないました。
これまで『狂覗(きょうし)』『超擬態人間』などの衝撃作で熱狂的な支持を集めてきた藤井秀剛監督の新作となる『半狂乱』は、夢を追いながらもチャンスを掴めない29歳の劇団員たちの群像劇。演劇公演中に発生した事故をきっかけに起こる劇場占拠事件と若者たちが企む強盗計画が、過去と現在が交差するインターカット劇の手法で描かれていきます。
舞台あいさつは初回の上映後におこなわれ、小山田将を演じた越智貴広さんは客席に「楽しんでいただけましたでしょうか?」と問いかけ、映画を鑑賞したばかりの観客のみなさんからは大きな拍手が送られました。
劇団員を演じたキャストと監督が登壇したこの日の舞台あいさつは「この話は最初で最後 ここでしか言わないマル秘話」と題して、登壇者ひとりひとりが事前に書いた「ぶっちゃけ話」をもとにトークが繰り広げられました。
越智貴広さんのぶっちゃけ話は「ぶっちゃけ、撮影中に気絶していた」。越智さんはストーリーの進行上、撮影中にほかのキャストと離れた部屋で待機する時間があり、越智さんは「座って待機しているとさっきまで(撮影で)上がっていた興奮とかアドレナリンが落ち着いちゃうなと思って」テンションを保とうと部屋の壁に自ら頭をぶつけていたところ、強くぶつけすぎて30分ほど気絶してしまっていたと、撮影中の熱の入れ込み具合を紹介しました。
浜口浩一を演じた望月智弥さんは「自分向けじゃないカットバックで手を抜くやつにムカついた」と、会話シーンでふたりの登場人物を交互に撮っていく際に、杉山樹志役の工藤トシキさんが自分にカメラが向いていないときは本気でセリフを言っていなかったと暴露。ユーモアを交えつつの望月さんの話に客席が笑いに包まれる中、工藤さんも「(言い訳は)ないです。やってました。スイマセンでした」。
永田典子役の美里朝希さんは劇中で演劇上演中の舞台で服を脱がされ暴行されるという激しい場面を演じており「カットがかかった瞬間にスタッフさんとか待機していたキャストさんがベンチコートをサッと掛けてくれたりお水を持ってきてくれたりして、チヤホヤされてるのかなとちょっと喜んでしまいました」と、暴露ではなくいい話を紹介。
藤井監督は、普通なら躊躇するような役に体当たりで挑んだ美里さんを「監督としては涙が出るくらいの思いっ切りのよさで演じてくれたんで、このチーム内で“俳優魂”に賞をあげるとしたら、ぼくは朝希ちゃんなんですよ」と絶賛しましたが、その撮影のあとテンションの上がった美里さんが「狂ったのか」と思うような様子でおにぎりを食べていたというエピソードも付け加え、客席の笑いを誘いました。
杉山樹志役の工藤トシキさんは「気持ちが入りすぎてしまってガチでアクションをした」と、乱闘シーンなどを「ほぼほぼ本気で」でやったため、越智さんの骨にヒビが入るなど共演者に被害者続出となったことを告白。藤井監督は「他人を傷つけたり痛がらせるなんてプロとして」と苦言を呈しましたが、実は監督自身がリハーサルで工藤さんが身体を痛めるほど強烈なタックルをしたことを自白し、申し訳なさそうな笑いを見せました。
工藤さん曰く「ぼくの株が落ちる話が」続いたトークでしたが、工藤さん演じる樹志が坂道を走るシーンで、工藤さんが急な坂を10回往復し体力的に限界になりつつも、役になりきってOKテイクを出したというもエピソードも藤井監督によって紹介されました。
そして最後の藤井監督の「ぶっちゃけ話」は、司会の納本歩さんが「ここでご紹介するのは気が引けるエピソードなんですけど」と読み上げるのをためらい「純粋にぶっちゃけ話をしただけなんですよ!」(藤井監督)「人前で話せる話とそうじゃない話があるじゃないですか。そこは大人なんだからわかるじゃないですか!」(納本さん)というやり取りの末、壇上では紹介されず、観客のおひとりにプレゼントされるという結末になりました。
トーク中の納本歩さん、越智貴広さん、工藤トシキさん、望月智弥さん、美里朝希さん、藤井秀剛監督(左より)
緊張感あふれる映画本編とは打って変わってたびたび笑いも起こる内容となったトークは、藤井監督の「この映画は29歳というのをテーマにして、29歳の彼らが、いまの等身大の熱意とか怒りとかすべてをぶつけて演じてくれて、それがエネルギーとなった作品だと思います。だから、そんな彼らの姿を存分に楽しんでいただけたら嬉しいかなと思います」というメッセージで締めくくられました。
初日舞台あいさつ登壇者のほか、山上綾加さん、山下礼さん、田中大貴さん、種村江津子さん、宮下純さんらが出演し、200人の観客が人質となる劇場占拠事件をスリリングな展開で描いていく『半狂乱』は、11月12日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷で上映ほか全国順次公開されます。