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映画作りを描いた小中和哉監督「作り手の気分を味わって」とメッセージ 『Single8』完成披露上映会

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舞台あいさつをおこなった有森也実さん、髙石あかりさん、上村侑さん、福澤希空(ふくざわ・のあ)さん(WATWING)、桑山隆太さん(WATWING)、小中和哉監督(左より)。上村さんの手には劇中で使われた8ミリカメラが。
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 8ミリ映画作りに奮闘する1978年の高校生たちの青春グラフィティ『Single8』(3月18日公開)の完成披露上映会が2月27日に東京・渋谷のユーロライブで開催され、主演の上村侑さん、ヒロイン役の髙石あかりさんら出演者と小中和哉監督が舞台あいさつをおこないました。

 『Single8』は、SF・ファンタジー映画の名手で「平成ウルトラマンシリーズ」を支えた監督として知られる小中和哉監督が、自らの高校時代をもとに脚本も手がけた自伝的映画。1978年の夏を舞台に、当時日本で公開された『スター・ウォーズ』に影響を受けた映画好きの高校生・広志が、文化祭での上映を目指して友人たちとともに8ミリカメラで特撮映画を作るストーリーで、当時8ミリ特撮に使われたフィルムの規格「シングル8」がタイトルの由来になっています。

 高校時代の小中監督の分身といえる主人公・広志を演じた上村侑さんは「小中監督の自伝的なお話ということもあったので、監督が当時撮っていた8ミリの映像だったり作品を見せてもらう機会もあって、そういうのはすごく役作りのヒントになったり、もっと言えば現場での監督の映画を作っている姿というのが一番近くで見られたので、そういうのはすごい(演じる上での)ピースになったかなと思います」と役作りについて話し「当時の映像を見ると、いまの中高生とあまり変わらないノリみたいなものがあったりとか、そういう意味ではあまり年代を気にすることもなくできたかなと思います」と、1970年代の高校生を演じての感想を述べました。

 広志がひそかに想いを寄せる同級生で広志たちが作る映画のヒロインをつとめる夏美を演じた髙石あかりさんは「撮影が一昨年の11月で、ほんとに寒かったんですよ。衣裳も半袖だったりとかが多かったので、けっこう寒いながらにひたすらがんばっていたという思い出だったんですけど」と、劇中の設定とは違う季節の撮影に苦労もあったことを明かしました。

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映画作りに没頭する高校3年生の主人公・栗田広志を演じた上村侑さんは、満員となった客席に「舞台あいさつをすることができて嬉しく思います」と感謝

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「小中監督の大事な記憶、物語をこうしてみなさまに届けられることが本当に嬉しく思っています」と、広志が想いを寄せる同級生・山下夏美役の髙石あかりさん

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広志の親友・小沢喜男を演じた福澤希空さんは「みなさま誠にありがとうございます。今日は思う存分、楽しい映像を観ていただけたらなと思います」とあいさつ

 広志の親友で一緒に映画作りを始める喜男を演じた福澤希空さんと、映画作りに参加する映画マニアの同級生・佐々木を演じた桑山隆太さんは、ダンス&ボーカルグループ・WATWING(ワトウィン)のメンバーでふたりとも映画初出演。
 福澤さんは「喜男さんは、いい意味ですごくアホらしく、バカらしく、好奇心旺盛で、すごくぼくと似ている部分があって、自然と演じられましたね。楽しかったです」と初の映画出演についてコメント。
 桑山さんは、佐々木が映画の知識が豊富な役でセリフに映画用語が多いため「ちゃんと意味を理解した上で言葉にしないと説得力がないというか、だからそこがすごく難しかったです」と、用語の意味を監督やスタッフに聞いたり調べたりして学びながらの撮影だったと話しました。
 また桑山さんは、普段何気なく使っている「マジで?」「それな」などの言葉は「昔には存在しない言葉だったりするので、そういうところはすごく気をつけていました」と、台本に書かれていない自然な会話を活かした部分もあるこの作品ならではのポイントを挙げ、福澤さんはその話にあえて「マジっすか?」とリアクションして笑いを誘いつつ「全員、(言葉に)気をつけていましたね、一丸となって」と振り返りました。

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「この『Single8』を通して、8ミリ映画の楽しさだったり懐かしさを感じていただけたらなと思います」と、広志の同級生・佐々木剛役の桑山隆太さん

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広志の母親を演じた有森也実さんは「映画が生まれるドキドキ感、ワクワク感が詰まった素晴らしい映画ですので、楽しんでいってください」とあいさつ

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メインキャストが揃っての舞台あいさつに「出演者がまた一同に介してお見せできるときを迎えられまして、嬉しく思っております」と小中和哉監督

 広志の母親を演じた有森也実さんは、小中監督の商業デビュー作『星空のむこうの国』(1986年)でヒロインを演じて以来、小中監督の作品には何度も出演しており「監督は絵コンテをちゃんと描いて、その画角通りの要求をするんですけど、今回に関してはみんながナチュラルに映画作りを楽しんでいる風景を、監督が『Single8』(の頃の)の自分に戻って撮影しているような現場でした」と、小中監督をよく知る視点での今回の作品の特徴を紹介。
 有森さんのその言葉に小中監督は、普段は絵コンテ通りに撮る「絵コンテ主義」なところを、今回は劇中映画のシーン以外は「カット割を決めずにワンシーン止めずにアタマから最後まで複数カメラでいろいろなアングルで撮ったのを編集でチョイスしていくという、だからあまり細かいことを言わずに自由に」キャストに演じてもらったと説明し、有森さんは「だから、きっと(キャストの)みなさんの個性がいきいきと出ている作品なんじゃないかなと、観てくださったファンのみなさまも楽しめるんじゃないかなというふうに感じました」と感想を。
 また、有森さんが出演する広志の家のシーンは小中監督の実家で撮影されており、監督の実家は『星空のむこうの国』でも主人公の家として使われていたため、有森さんは30数年を経て同じ家を訪れたという、小中監督が「一周回った感じがあったかな」と表現する裏話も明かされました。

 「映画作りを8ミリで覚えて、その楽しさをやり続けたくてプロになったので」その時代を映画で描きたいと思っていたという小中監督は「それはこの時代のノスタルジィという意味だけではなくて、いまはiPhoneで撮れる時代になりましたけど、映画作りの楽しさって変わらないと思うので、この映画で一番伝えたいのは、ものづくりを夢中になってやるとひとつ世界が広がるというか“ごっこ”からだんだん“自分の表現”に変わっていく、そういう目覚めを描きたかったんです」と作品作りの動機を語り「そういう意味で、若手の俳優陣たちと、また改めてこういう(自主映画に近い)規模で映画を作って、ひとつの表現をまたやることができて嬉しいなと思っております」と、作品作りを経ての想いを述べました。

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トーク中の有森也実さん、髙石あかりさん、上村侑さん、福澤希空さん、桑山隆太さん、小中和哉監督(左より)

 そして、この作品の題材である8ミリフィルムがどんなものかを若い観客の方にも知ってもらおうということで、ステージに8ミリ映写機を持ち込んで小中監督持参の8ミリフィルムを上映する、ミニ上映会がおこなわれました。
 上映されたのは小中監督の商業デビュー作『星空のむこうの国』の8ミリ予告編。同作は劇場映画やテレビドラマの撮影にも使われる16ミリフィルムで撮影されており、劇場上映用の予告編も制作されていますが、今回上映されたのは、小中監督が当時開催された8ミリ上映会のために8ミリフィルムで制作した、ヒロインの有森さんも「これを観たのは私は初めてですね」というレアなもの。
 小中監督は約3分間の上映の間も生で解説を入れ、上映終了後にも当時の状況などを詳しく説明。上村さんは「映画のことになるとスイッチが入っちゃうみたいな感じが監督にはあるので」と監督の映画愛を語り「作り手側を演じることってなかなかないので、そういった意味では貴重な経験でした」と、作品を通じて得たものを語りました。

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小中和哉監督が自ら8ミリ映写機をステージにセッティング

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スクリーンに映し出される8ミリフィルムの映像を観る上村侑さん

 舞台あいさつは登壇者ひとりひとりのコメントで締めくくられました。

「8ミリって、当時8ミリを撮っていた年代の方からすると懐かしいなという思い出がフラッシュバックするような内容だと思いますし、逆にぼくら世代が見ると、8ミリって、絶対にこの映画には出てこない単語なんですけど(笑)、“エモい”みたいな部分があって、そういうところの映画作りの楽しさみたいなものが画面に映っていると思うので、劇中に映っている8ミリフィルムなんかもそうですけど、小中監督とかスタッフの方々の熱で映されているんじゃないかってくらい、映写機くらいの熱はあるので、8ミリフィルムに映っている監督が映したかったものみたいなものも、一緒に楽しんでもらえればいいのかなって。ほんとに楽しんで、どんどん拡散してもらえればなと思います」(上村侑さん)

「クランクアップの最終日の日にみんなで集合写真を撮ったんですよ。そのときに私は“あ、今日撮影が終了して監督の物語がこれからみなさんに届くんだな”というのにすごく不思議なフワフワした感じになって、監督にその想いを伝えて、まだ初日ではないんですけど、とうとうこの日が来たかと、こうしてみなさんが目の前にいてこれから観てくださるという状況が本当に嬉しくて、ワクワクしておりましたので、ぜひ映画を楽しんでいただけたらと思います」(髙石あかりさん)

「いまからみなさん観ていらっしゃるということで、とても緊張しているんですけk度、(撮影がおこなわれた)1年前の自分をみなさんと一緒に観ていただきたいなと思っております。楽しみに待っていてください」(WATWING・福澤希空さん)

「『Sigle8』は、映画作りというものに没頭する物語ではあるんですけど、たぶんそれぞれひとりひとりが昔に没頭していたものとかがあると思っていて、その青春みたいなものを、この映画ではすごく感じられて、そういう部分はすごく共感できると思うので、そういうところをぜひ楽しみにしていてください」(WATWING・桑山隆太さん)

「今日はすごくお若い方がたくさんいて、青春ど真ん中な方が多いなと、こちらから見えるんですけど……“ど真ん中”ってちょっと古いね(笑)。私はこの映画でお仕事をさせていただいて、年を取ってから感じる青春って、ど真ん中だったときよりも、もっと素敵な景色が見えるということを知っていただきたいなって、みなさんの中の青春がこの映画と一緒にあってほしいなって感じました。どうぞ永く愛する映画の1本にしていただけたらと思います」(有森也実さん)

「みなさんはいつもできあがった映画をご覧になっていると思うんですけど、初めて作り手の気分で観られる映画を作りたかったんですよね。その気分をぜひ味わっていただければと思います」(小中和哉監督)

 舞台あいさつ登壇者のほか、川久保拓司さんやダンス&ボーカルグループ・lolの佐藤友祐さん、北岡龍貴さんら小中監督ゆかりのキャストが出演、シネ・カリグラフや逆回転撮影など8ミリでのアナログな特撮技術も満載な『Single8』は3月18日土曜日より東京・渋谷のユーロスペースほか全国順次公開。

 また、公開に先駆けて3月2日木曜日から4日土曜日まで、公開を記念して1980年前後に制作された8ミリ映画の傑作群を上映する「8mmm映画復活祭」が開催され、小中監督の高校・大学時代の作品や、河崎実監督、今関あきよし監督、手塚眞監督ら同時代に自主映画シーンで活躍した監督たちの作品が上映されます。(※「8mm映画復活祭」の情報はこちら

ポスター

Single8

  • 上村侑 髙石あかり 福澤希空(WATWING) 桑山隆太(WATWING)
    川久保拓司 北岡龍貴 佐藤友祐(lol) 有森也実

  • 監督・脚本:小中和哉
  • 音楽:宮﨑道
  • 製作:小中明子(Bear Brothers)/山口幸彦(キングレコード)/関顕嗣(ふればり)
  • 撮影監督:藍河兼一
  • Bカメ・8ミリ協力:今関あきよし
  • 録音:臼井勝
  • 助監督:小原直樹
  • 編集:松木朗
  • 美術:小中和哉
  • 衣装:天野多恵
  • ヘアメイク:岩橋奈都子
  • 特殊視覚効果:泉谷修
  • 製作:「Single8」製作委員会
  • 配給・宣伝:マジックアワー

  • 2022年/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/113分

2023年3月18日(土) ユーロスペース ほか全国順次公開

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