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小中和哉監督『Single8』公開記念「8ミリ映画復活祭」で8ミリ自主映画の傑作と監督たちが大集合!

 高校生の8ミリ映画作りを描いた小中和哉監督の自伝的映画『Single8』が3月18日に公開されるのを記念して「8ミリ映画復活祭」が3月2日から4日まで東京・渋谷のユーロスペースで開催。小中監督の高校時代の作品を含めた8ミリ映画の名作の上映とゲストによるトークがおこなわれ、連日満席の盛況となりました。

 『Single8』は、日本で『スター・ウォーズ』が公開された1978年を舞台に、映画好きの高校生・広志が『スター・ウォーズ』に影響を受けて友人たちとともに8ミリで特撮映画制作に挑む青春グラフィティ。ストーリーはSF・ファンタジー映画の名手として知られる小中和哉監督自身の高校時代の経験が元になっています。

 『Single8』の舞台である1970年代は、8ミリカメラの普及により映画作りに憧れる多くの若い世代が8ミリでの自主映画作りに取り組んだ時代。今回開催された「8ミリ映画復活祭」は、1970年代終盤から80年代はじめの8ミリ自主映画の黄金期といえる時代に、小中監督や同世代の監督たちが作った8ミリ映画の傑作を上映し、当時の8ミリ自主映画シーンの空気に触れてもらおうという趣旨で開催されたもの。
 通常は8ミリフィルムの上映設備がないユーロスペースに8ミリ映写機を持ち込み、1日ごとに異なったテーマで作品の上映とトークがおこなわれました。

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「8ミリ映画復活祭」は、8ミリ映写設備がないユーロスペースの場内に8ミリ映写機を設置して開催。3月2日、3日は今関あきよし監督が、4日は小中和哉監督が自ら映写を担当しました

 3月2日の「特撮&アニメ」は、河崎実監督のSFヒーローアクション『エスパレイザー』、鉄筆で直接フィルムに絵を描くシネ・カリグラフィという技法で作られた進藤丈夫監督の短編アニメーション『MARK』、ぬいぐるみのくまの姿をした宇宙人が活躍する小中和哉監督のSF大活劇『地球に落ちて来たくま』の3本(いずれも1982年作品)が上映されました。
 『エスパレイザー』『地球に落ちて来たくま』は、8ミリでは不可能と思われたような特撮を実現、『MARK』は小さな8ミリフィルムに群衆を描くなど、いずれもエンターテイメント性とともに技術面を追求したといえる作品で、上映後の3監督によるトークでは技術面の試行錯誤に関する話題など、3監督の自主映画時代の思い出が語られました。

 3月3日は「葉っぱ2枚の上映会AGAIN!」と題し、現在は脚本家として活躍する小林弘利さんや今関あきよし監督らがかつて参加していた映画グループ「MOVIE MATE 100%」が開催していた、葉っぱを2枚持って来ると入場できるというユニークな上映会を再現。
 成蹊高校映画研究部で小中監督の一年先輩にあたる手塚眞監督の実験的短編『UNK』、同じく手塚監督の短編学園ホラーで高校時代の小中監督も出演している『HIGH-SCHOOL-TERROR』、今関あきよし監督のその後の少女映画の原点といえる『ORANGING '79』、時間が逆転するというSF作品で『Single8』劇中で主人公たちが作る8ミリ映画の元になっている小中監督の『TURN POINT 10:40』の4本(いずれも1979年作品)が上映され、手塚監督と今関監督のぴあフィルムフェスティバル入選作3本が揃ったラインナップとなりました。

 上映後のトークには、手塚監督、今関監督、小中監督、よく一緒に上映会をやっていたという犬童一心監督に加え、当時の上映会に欠かせないスタッフだった小林弘利さんと湯本裕幸さんも参加。当時、小林さんが「家族連れで観に来られる自主映画の上映会をやりたい」と考えてそこで上映する作品を探しており、情報誌「ぴあ」で手塚監督の監督第1作『FANTASTIC☆PARTY』(1978年)の上映情報を見た小林さんと今関監督、湯本さんが成蹊高校まで「スカウトに」来たことから小林さんたちのグループと手塚監督たち成蹊高校映画研究部とのつながりが生まれ、さらに手塚監督と今関監督が入選した1979年のぴあフィルムフェスティバルで同じ年に入選した同世代の犬童監督との交流が始まったという、4監督の交流のきっかけが説明されました。

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「8ミリ映画復活祭」2日目上映後トーク中の湯本裕幸さん、手塚眞監督、原口智生さん、三留まゆみさん、今関あきよし監督、犬童一心監督、小林弘利さん、小中和哉監督(左より)

 そして、シークレット上映として、1981年にテレビのバラエティ番組「もんもんドラエティ」内で放送された「お茶の子博士のホラーシアター」の作品3本が上映されました。これは、手塚監督たちの作品を観たプロデューサーに抜擢されて手塚監督がゴールデンタイムに放送されるバラエティ番組のワンコーナーを任され、手塚監督をメインにこの日登壇したメンバーの多くが参加した3分の8ミリ短編が毎週放送されたもの。まだほとんどが大学生だったメンバーがテレビ番組を担当するという大胆な企画でした。
 この日は、監督した小林弘利さんが本人曰く「加減ってものを知らなかった」ため視聴者からクレームが寄せられる事態となったという犬童監督主演の殺人鬼もの「続・狂い咲きアンダーロード」、3分の短編のために怪獣の着ぐるみを1体製作した「怪獣の出て来た日」、2期にわたり放送された1期目の最終回にあたる「お茶の子博士の陰謀」の3本が、小中監督のセレクトにより上映。
 シークレット上映のあとにも、日本の特殊造形の第一人者で「怪獣の出て来た日」の怪獣を造形した原口智生さん、今関監督『ORANGING '79』主演であるイラストライターの三留まゆみさんも加わってトークは続き、大学生だった原口さんが同じ大学だった三留さんを通じて手塚監督たちと知り合い、手塚監督や今関監督たちからの特殊造形や特殊メイクの依頼を次々と受けているうちにそれが仕事になっていたという逸話など、当時の自主映画シーンの活気を感じさせるトークが繰り広げられました。

 手塚監督が「学生映画の上映会」と懐かしみ、今関監督が「このメンツが揃うのはほんとに久しぶりですよね」という豪華メンバーが集った数十年ぶりの「葉っぱ2枚の上映会」は、小中監督の「このメンバーが揃って8ミリができたことを感謝します」という言葉で締めくくられました。

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「8ミリ映画復活祭」2日目「葉っぱ2枚の上映会AGAIN!」登壇の原口智生さん、手塚眞監督、三留まゆみさん、今関あきよし監督、小中和哉監督、犬童一心監督、小林弘利さん、湯本裕幸さん(左より)

 3月4日は「成蹊高校で生まれた映画たち」。小中監督が高校時代に在籍した成蹊高校映画研究部には、小中監督や一学年上の手塚眞監督のほかにも多くの才能が集まっていました。3日間にわたる「8ミリ映画復活祭」最終日となるこの日は、寺田裕之監督、高校時代は本名の「笹平剛」として映画を作っていた利重剛監督、そして小中監督と、同期入部の3人が集まりました。

 高校に徴兵制が導入されるという設定の笹平監督(利重監督)『教訓Ⅰ』、ミュージカル映画を撮りたいと考えていた小中監督がそのテストフィルムとして制作した短編『いつでも夢を』、利重監督の主演で空き巣行為を繰り返す高校生たちを描いた寺田監督の『終』(しゅう)の3本(いずれも1980年作品)が上映されました(※『終』はオリジナル版にはなかったカットを復活させたディレクターズカット版をデジタル上映)。

 上映終了後のトークでは、成蹊高校映画研究部同期の3人が揃ったとあって、当時の成蹊高校の雰囲気を感じさせる話題が多く語られました。

 『教訓Ⅰ』と『終』は同じ年の夏に撮影されたため、利重監督は『教訓Ⅰ』を監督しつつ『終』に主演し、寺田監督も『終』を監督しつつ『教訓Ⅰ』も手伝うという状況で、利重監督は『Single8』劇中で主人公たちがひたすら映画作りに時間を使い授業中に寝ている場面を例に挙げて「ああいう状態」だったと回想。ほかにも、勉強より映画作りだった高校時代のさまざまなエピソードが3監督の口から語られ、小中監督は映画作り優先の高校生活が送れたり、先生たちも映画に出演してくれた当時の環境を「不思議な学校だよね」と振り返り、利重監督は「みんなちょっとずつ体温が上がっている感じの季節だったんでしょうね」と、当時の校内の空気を感じさせました。
 また『終』は日本映像フェスティバルの審査員だった大島渚監督に絶賛されており、寺田監督は大島監督が当時テレビで「高校生はイデオロギーがないから新鮮に映画を作れる」という趣旨の発言をしていたと話し、寺田監督自身が当時『終』で触れたモチーフについて知らなかったことも多く「イデオロギーもなにもなくてやっていたからよかったんだなって」と自身で分析。『教訓Ⅰ』が岡本喜八監督に高く評価された利重監督も「ただただ映画を作ろうというので作っていたのがいいんですよね」と話しました。

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「8ミリ映画復活祭」3日目上映後にトークする利重剛監督、小中和哉監督、寺田裕之監督(左より)

 そして話題はまさに3監督が高校生だった時代を描いている『Single8』へと移り、寺田監督は「久しぶりに8ミリとかが出てくると、懐かしいのとを通り越して、忘れていたなにかがね」と、利重監督は「ぼくらがやっていた映画作りのまんまがエピソードとして入っている」と、それぞれ感想を。
 『Single8』で主人公とともに映画を作る同級生「佐々木剛」は笹平剛=利重監督のポジションのキャラクターで、主人公に技術的なアドバイスをするカメラ屋店員「寺尾」はカメラの名手だった寺田監督にほかの先輩を足したキャラクターであることも紹介されました。
 利重監督はさらに「このカットってどうやったらこういうことが撮れるんだろうって毎日毎日考えながら撮っていたじゃない? それがすごく『Single8』には出ていて。この前『Single8』を見せてもらっていたから、余計に今日の8ミリは観ていて面白かったんじゃないかな。ここで“どうしたらいいんだろ?”って悩んでいたなとか、自分はわかるわけじゃない。“これはやるのはほんとに大変なんだよ!”って。そのときも“でもやりたいんだ!”って思いながら、ずうっとずうっと考えて考えて、そのことしか考えられずに生きていたころを思い出しましたね、あの映画でね」と話し「すごい喋りたいんだけど、ネタバレになっちゃうから。すごくワクワクする」と『Single8』の熱を感じさせました。

 最後に利重監督は「久々に8ミリ上映会って、やっぱり気持ちが盛り上がったのでとても楽しかったです。少しでもこれが『Single8』の公開に役立ったらいいなという気持ちです。参加できてよかったです」と、寺田監督は「インディペンデントの名門て言われているユーロスペースで自分の作品が上映されるなんて夢みたいな話で感無量です。作ったときにはそんなことは考えられなかったので、感謝申し上げます」とそれぞれあいさつ。
 この日は自ら映写も担当しトークの進行役もつとめてと大回転だった小中監督は、3日間満席となったことを感謝し「この勢いで『Single8』もよろしくお願いします」と締めくくりました。

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「8ミリ映画復活祭」3日目「成蹊高校で生まれた映画たち」登壇の利重剛監督、小中和哉監督、寺田裕之監督(左より)は『Single8』ポスターとともに記念撮影

 特撮作品の撮影によく使われた8ミリフィルムの規格をタイトルにした『Single8』は、小中監督をはじめ「8ミリ映画復活祭」に集まった監督たちの分身のような登場人物たちが活躍する作品となっています。
 映画作りに没頭する高校生たちを演じるのは、上村侑さん、髙石あかりさん、ダンス&ボーカルユニット・WATWING(ワトウィン)メンバーの福澤希空(ふくざわ・のあ)さん、同じくWATWINGメンバーの桑山隆太さんという注目の若手俳優陣。
 さらに、川久保拓司さん、北岡龍貴さん、ダンス&ボーカルグループ・lolの佐藤友祐さん、有森也実さんら、小中監督作品にゆかりの深いキャストが、主人公たちを取り巻く周囲の人々を演じています。

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『Single8』より。左より、福澤希空さん演じる喜男、上村侑さん演じる主人公・広志、桑山隆太さん演じる佐々木、髙石あかりさん演じる夏美

 1978年夏の映画少年の熱気を感じさせつつ、普遍的な“ものづくり”の楽しさを伝える「映画作り映画」の新たな傑作『Single8』は、3月18日土曜日より、東京・渋谷のユーロスペースほか、全国順次公開されます。

【『Single8』予告編】
ポスター

Single8

  • 上村侑 髙石あかり 福澤希空(WATWING) 桑山隆太(WATWING)
    川久保拓司 北岡龍貴 佐藤友祐(lol) 有森也実

  • 監督・脚本:小中和哉
  • 音楽:宮﨑道
  • 製作:小中明子(Bear Brothers)/山口幸彦(キングレコード)/関顕嗣(ふればり)
  • 撮影監督:藍河兼一
  • Bカメ・8ミリ協力:今関あきよし
  • 録音:臼井勝
  • 助監督:小原直樹
  • 編集:松木朗
  • 美術:小中和哉
  • 衣装:天野多恵
  • ヘアメイク:岩橋奈都子
  • 特殊視覚効果:泉谷修
  • 製作:「Single8」製作委員会
  • 配給・宣伝:マジックアワー

  • 2022年/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/113分

2023年3月18日(土) ユーロスペース ほか全国順次公開

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