太田真博監督の初劇場公開長編作となる『エス』が1月19日より東京のアップリンク吉祥寺にて公開されるのを前に、予告編が解禁。またスピンオフ短編の上映が決定し、さらに矢柴俊博さん、廣末哲万さんら著名人が応援コメントを寄せています。
各地の映画祭での受賞経験を持つ太田真博監督の劇場公開長編デビュー作となる『エス』は、若手映画監督“エス”こと染田真一の逮捕をきっかけに、かつての染田の演劇仲間たちが再会し織りなしていく、再会と断絶のストーリー。
2011年に不正アクセス禁止法違反などの容疑で逮捕された経験を持つ太田監督がその実体験に着想を得た作品で、太田監督とともに演劇映画ユニット「松田真子」を主宰する松下倖子(まつした・さちこ)さんや『河童の女』(2020年/辻野正樹監督)主演の青野竜平さんらが出演しています。
解禁された予告編は、松下倖子さん演じる千穂や青野竜平さん演じる高野たち、染田を知る仲間がそれぞれに染田について語る姿や、そのやりとりが巻き起こすものが、軽快な音楽に乗って映し出されていきます。
そして、公開決定時に映画監督や脚本家、プロデューサーなどから寄せられた応援コメントに続き、俳優の矢柴俊博さんや、映像ユニット「群青いろ」の廣末哲万(ひろすえ・ひろまさ)さん、俳優・映画監督の村田唯さんらの応援コメントが公開されました。
矢柴さんは「キャスト全員に、その太田式口語体とも言うべきメソッドが共有されている。」と、太田監督独自の会話劇を評し、村田さんは「「エス」と、“エス”を巡り生きる俳優の皆さんにぎゅうっと背中を押していただきました。」と映画の印象を述べています。
俳優:矢柴俊博さんコメント
『太田式口語体演技』に魅せられた。
類型的な演技を拒否し、
かと言ってボソボソ声のナチュラリズムに陥らず、
心理的な“間”にも安易に寄りかからず、
絶え間ないおしゃべりが続いていく。
“間”の代わりに、
「え?なに?」という最小単位の言葉が速射砲のように多用される。
キャスト全員に、
その太田式口語体とも言うべきメソッドが共有されている。
その徹底ぶりは驚異的だ。
決して強要されたわけじゃないだろう。
だってその証拠に、
俳優たちの顔が皆、
眩しいくらいに生き生きしてるじゃないか!
音楽家:根本卓也さんコメント
太田真博監督《エス》に寄せて
普通の人間が、「異物」となったある男を巡って、ごく当たり前の反応を繰り広げる。
そんな、何のドラマもなさそうな設定なのに、ちっとも淡々としていない。
生々しいというのとも違う。でも、すごく「リアル」だ。
平々凡々とした日常を、予期せぬ出来事で崩された人々が、
それを取り戻そうとするために、どれだけ残酷になるか。
「トモダチ」ですら、彼(エス)を案じているかのように語りながら、自分のことばかり考えている。
監督は、それを責めない。
赦すでも、冷笑するでもなく、「そのようなものとして(as it is)」描きだす。
映画を観る、あなたの写し鏡として。
演者:廣末哲万さんコメント
今後の私の人生で、忘れる自信がないシーンがありました。
心熱く涙目になりながら、止められない吹き出し笑いはちょっと経験がありません。
ちょっと、ございません。
映像作家/身体表現/アーティスト:万城目純さんコメント
日常が演劇なのか?演劇で日常が構成されているのか?
深刻な現実は繰り返す人との関わり合いによって喜劇にも昇華される。
この奇跡的な無駄話の連続はやがて、これが優れた映画であるという確信を見る人に与える事になる。Sを信じるか?それは映画を信じる事と同義である!
俳優・監督:村田唯さんコメント
ほんの一秒一コマの人間の表情、感情、言葉が目まぐるしく突き刺さる。
追いつけない...みんななに考えてるの?怖い...
それは現代社会を生きる私の心のスピードだと気づかされる。
絆、疑い、勘違い、可笑しさ、面倒くささ、愛...人間関係の多様な面を見つめ見つめ人間の力を信じ続けてる人じゃないと撮れない映画だと思います。
「エス」と、“エス”を巡り生きる俳優の皆さんにぎゅうっと背中を押していただきました。太田監督、今度どんな演出されているのか教えてください。ラストシーンのあそこたまらなく好きです!
『エス』場年写真。逮捕された映画監督“エス”こと染田の演劇仲間たちが集まる……
また、1月19日からの劇場上映では、一部の回でスピンオフ短編が同時上映されることも決定しています。
『人間として正しいかどうかで判断する』というタイトルのこの短編は、2023年12月に『エス』公開を記念して開講された太田監督による俳優のためのワークショップ受講者14名と『エス』出演者が共演し、学生劇団の公演2日目を描く15分の作品となっています。
『人間として正しいかどうかで判断する』あらすじ
学生劇団の特別公演「人間として正しいかどうかで判断する」本番2日目の劇場。
仰々しいタイトルのくせにそもそも人間があまり登場しないホンに、いまさらウダウダ言い出す客演俳優。青いモロモロの重圧と静かに格闘する演出家。彼女たちの近くで揺れる劇団員、撮影業者、観客ら。
「逮捕」というひとつの出来事によって変わる、将来や人間関係。逮捕されたら“人生おしまい”なのかを、独特のタッチで描いていく映画『エス』は、1月19日金曜日より、東京のアップリンク吉祥寺で公開されます。