辻野正樹監督の新作でタリン・ブラックナイト映画祭で最優秀作品賞を受賞している『北浦兄弟』が4月12日に公開されるのを前に、予告編が解禁されました。
『北浦兄弟』は、同居の父親を殺してしまった引きこもり中年の兄・ソウタと、順調な人生のはずが仕事も家庭も失った弟・アキラが、父親の遺体を遺棄するために反発しつつ珍道中を繰り広げる〈ダーク〉エンターテイメント。
ミュージシャンや舞台の作・演出、脚本家などを経て、50歳を過ぎて『河童の女』(2020年)で長編監督デビューするという異色の経歴を持つ辻野正樹監督が、80代の親が50代の子どもを養うという社会問題「8050問題」をヒントに、人間の哀しみをブラックかつユーモアも込めて描くロードムービーを完成させました。
『北浦兄弟』場面写真。中野マサアキさん演じる北浦ソウタ(左)と、大塚ヒロタさん演じる北浦アキラ
実家で父親の世話になりつつ自堕落な生活を送る兄・ソウタを演じるのは、映画『雨ニモマケズ』(2025年/飯塚冬酒監督)『びっぱらん!!』(2024年/崔哲浩監督)や連続テレビ小説「虎に翼」(2024年)などに出演する俳優で、本作ではプロデューサーもつとめた中野マサアキさん。
理想的な人生を送っているはずが、セクハラ告発により仕事も家庭も失う弟・アキラ役には、イタリアで演劇を学びイタリア古典仮面喜劇と現代演劇を融合させた「テアトロ コメディア・デラルテ」を主宰するほか映画『おーい!どんちゃん』(2022年/沖田修一監督)『茜色に焼かれる』(2021年/石井裕也監督)など映像作品でも活躍する大塚ヒロタさん。
ふたりの実力派俳優がダブル主演をつとめるほか、兄弟の父役にたかお鷹さん、父の恋人役に山下容莉枝さん、兄弟の叔父役に加藤満さんら、ベテラン勢が共演しています。
このほど解禁された予告編は、実家暮らしなのにデリヘルを呼んだりする兄・ソウタ、妻から離婚を切り出された弟・アキラの、それぞれの現状を示すようなカットに続き、ソウタとアキラが父の死体をなんとかするため悪戦苦闘する姿が。どこかのどかでユーモラスな音楽や、彼らの姿に重なる「莫迦莫迦しい」「愛おしい」というフレーズも印象的です。
社会からはみ出してしまった兄弟を描き、2024年にエストニアで開催された第28回タリン・ブラックナイト映画祭(28th Tallinn Black Nights Film Festival)に出品されクリティック・ピックス・コンペ部門で最優秀作品賞を受賞とすでに国際的な評価を得ている『北浦兄弟』は、4月12日土曜日より、東京・渋谷のユーロスペースほか、全国順次ロードショーされます。
※記事初出時、公開日を誤って記載した箇所がありました。お詫びして訂正足します。(2月27日修正)
『北浦兄弟』ストーリー
美術教師だった父親(たかお鷹)の世話になりながら引きこもり気味の怠惰な生活を送っているソウタ(中野マサアキ)。ふとしたきっかけで父親を殺害してしまう。疎遠だった弟アキラ(大塚ヒロタ)とともに反発をしあいながらも父親の死を隠そうと事態を収拾すべく奮闘する。叔父(加藤満)や父親の恋人(山下容莉枝)を巻き込みながら、事態はどんどんと悪い方へと進んでいくのだが...。