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『リリカルスクールの未知との遭遇』デモ田中監督インタビュー

インタビュー写真 ヒップホップアイドルユニット・リリカルスクールの6人は、故郷に帰れなくなってしまった宇宙人のバムさんことスペース・バムバータと出会う。バムさんが宇宙に帰るエネルギーを生み出すためにリリカルスクールは大規模なヒップホップパーティーの開催を決意するのだが、怪しい影の妨害が! 果たしてパーティーは開催されるのか!?
 俳優として活躍し、映画ファンに強い印象を残してきたデモ田中監督。その初長編監督作となるのが、メジャーデビューを果たし注目を集める6人組・リリカルスクールが初の映画主演をつとめる『リリカルスクールの未知との遭遇』です。
 リリカルスクールのメンバーが「本人たち」を演じる『リリカルスクールの未知との遭遇』は、アイドルやヒップホップをはじめとしたさまざまなカルチャーが融合し、さらに1980年代娯楽映画のテイストも盛り込まれた、とびきりハッピーなエンターテイメントムービーとなっています。
 初メガホンのデモ田中監督が、この映画の「ハッピーさ」を生み出した秘密とは?

(写真:映画に登場する宇宙人・バムさんを抱いたデモ田中監督)

デモ田中(でも・たなか)監督プロフィール

1971年生まれ、福岡県出身。俳優として井口昇監督や西村喜廣監督をはじめ個性派監督の作品に数多く出演。また、俳優としての活動と並行して映像作家としても活躍し、短編映画やメイキング、特典映像などを手掛ける。『リリカルスクールの未知との遭遇』で商業映画初監督。
俳優としての出演作に『帰ってきた刑事まつり/アトピー刑事』(主演・2003年/井口昇監督)、『スピーカーマン THE BOO』(主演・2003年/西村喜廣監督)、『電人ザボーガー』(2011年/井口昇監督)、『進撃の巨人』(2015年/樋口真嗣監督)など多数。
監督作に『情け無用の刑事まつり/顔刑事』(2005年)、福岡県観光推進キャンペーンネット配信ムービー「近代化特急、福岡県。BLACK EXPRESS」(2015年)など。

「都会の女の子たちの日常みたいなものが描けたらいいのかなと思ったんです」

―― 最初に『リリカルスクールの未知との遭遇』を監督されることになった経緯からうかがわせてください。

田中:実は、リリカルスクールの運営にぼくの昔の仲間がいて、彼に「メンバーで映画をやりたい子がいるから」と頼まれて、ぼくのできる範囲で映画関係の人に彼を紹介していたんです。そんな中で、去年(2015年)のゆうばり国際ファンタスティック映画祭のときに彼がゆうばりまで来て、今回のプロデューサーのキングレコードの山口(幸彦)さんをぼくが紹介したところから始まっているんです。そのあと、山口さんがリリカルスクールについて調べたら「この子たちすごいね! 人気もあるんだね!」みたいなことで、ワンマンのライブを観にいったりして「映画をやろうよ。田中監督でやろう!」という話になったんです。それで、実際にやれるかどうかわからないまま、いろんなアイディアのプロットを書いたり、3ヶ月くらい企画を進めていて、最終的に去年の9月か10月くらいにリリカルスクールのプロデューサーのキムヤスヒロさんに「こういう企画が上がっています」と話をしたら、企画を気に入っていただけたんです。ぼくはそれまでキムさんにお会いしたことはなかったし、監督の実績もないんですけど、内容を見て「これだったらやりたい」と言っていただいたので、すごくテンションが上がりました。そこから実際に動き出したんですけど、すでに10月くらいで、年内に撮り終えて今年2月のゆうばりファンタに出したいとかもあって、タイトなスケジュールになるなとは思ったんですけど、それをやりきろうというところで始まりました。

―― 今回は初監督ということで、監督に決まったときの気合いといいますか、意気込みみたいなものも大きかったのでしょうか?

田中:もちろんですね。昔から機会があれば監督として勝負したいなといつも思っていたので、やっぱり自分の「こういうのが撮りたい」というアイディアはつねに温めていたんです。ただ、今回はアイドルの映画をやるというところからスタートしているので、そういう引き出しは全部開けませんでした。その上で、じゃあリリカルスクールの子たちありきでどうするかということを考えました。

―― 具体的な映画の内容は、どのように詰めていかれたのでしょう?

『リリカルスクールの未知との遭遇』スチール

『リリカルスクールの未知との遭遇』より。レコード店で働くリリカルスクールの6人の前には……

田中:最初にプロデューサーの山口さんとの間では「音楽業界もの」みたいなことをやりたいなという話が出ていたんです。『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年・米/ブライアン・デ・パルマ監督)ですとか『ブルース・ブラザーズ』(1980年・米/ジョン・ランディス監督)ですとか、ミュージシャンがたくさん出てくるような映画を作りたいというのが共通してありました。それでアイドルの映画でということで、たとえばドラマの「あまちゃん」(2013年)もそうですし、アイドル物語みたいなものはたくさんあるので、その中でどう差を付けていこうかと考えたんです。そうすると、いままでのアイドル物語では「田舎から見た都会」みたいな構図があるんですよね。でも、リリカルスクールって東京のシティ派というか「lyrical school TOKYO」みたいなキャッチでやっているので、都会の女の子たちの日常みたいなものが描けたらいいのかなと思ったんです。こういった規模でやる作品の場合はよく地方で合宿してロケしたりするんですけど、あえてそういうこともせず東京で撮ろうみたいな、そういうところは挑戦してみたところです。

―― 今回はタイトルも『リリカルスクールの未知との遭遇』ですし、宇宙人も出てくるSFタッチとなっていますね。SFのテイストはどのような発想で加わっていったのですか?

田中:個人的にSFが好きだということもありましたけど、撮影したのが去年なんで、新作の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年・米/J.J.エイブラハム監督)公開で盛り上がっていましたし、あとは2015年は『バック・トゥー・ザ・フューチャー PART2』(1989年・米/ロバート・ゼメキス監督)で未来に行った年だというのもありましたし、なんかタイムリーなんじゃないかというのがまずありました。それから、女の子たちが自分たちでなにかを成し遂げていく青春ストーリーにしたいとは思っていたので、彼女たちを導くような偉い人が出てくるときに、それが誰だったら面白いかなと考えたんです。そうすると、普通の人間じゃなくて宇宙人が出てきて、宇宙人との交流も面白いみたいなことになる話がいいのかなと思いまして、アフリカ・バムバータ(※ヒップホップの開祖的存在のアメリカのミュージシャン)をモチーフにした宇宙人が登場するという設定を作って、その設定ができてからはいろいろ見えてきてワーっと進んだ感じがしましたね。

―― 作品全体に1980年代の映画のテイストというのを感じたのですが、それは意識されていたのでしょうか?

田中:そうですね、自分にとってのアイドル映画というのを考えたときに、やっぱり角川映画の薬師丸ひろ子さん主演のものだったり、原田知世さん主演のものだったり、どうしても1980年代の映画が自分の中で骨肉化しているんですね。撮影当初は80年代っぽくしようとかさほど意識してなくて、もっと現代っぽいテイストでやれないか探ったりしたんですけど、仕上げ作業の色調整をすると80年代感とか昭和の感じがすごいしっくりきたんです。やっぱりにじみ出てくるというか、なっちゃったみたいな感じですね(笑)。

―― アナログレコードのお店がひとつの舞台となっているので、アナログレコードの時代感と1980年代の雰囲気がマッチしている印象もありました。

田中:そうですね、一番最初にロケ地を決めたのがあのレコード屋さんで、お店の雰囲気を見て「ここで撮りたい」って思ったので、じゃあどういうテイストで行けばいいのかとなったときに自然とああなっていったという感じですね。当時のラジカセとかも出てくるんですけど、ぼくもラジカセとかへの思い入れは強いんで、たまたま知り合いにラジカセコレクターみたいな人がいましたので、カッコいいラジカセをたくさんお借りして撮影しました。やっぱり相性がいいんですよね、アナログレコードとかカセットテープとか。でも、リリカルスクールの子たちはまったく世代ではないから、7インチのレコードをかけるときにプレイヤーに大きな穴用のアダプターをパコってはめるのも逆に新鮮だったみたいですね(笑)。やっぱり、ラジカセみたいなオールドスクールのヒップホップみたいなアイテムは自分として絶対に外せないアイテムだと思っていたんです。

「虚実が入り交じるのが気持ちいい作品になればいいのかなというのは思っていたんです」

―― 監督は、リリカルスクールさんが活躍されている現在のアイドルシーンにはどの程度触れていらっしゃったのでしょう?

田中:そんなに詳しくはなかったですね。ただ、リリカルスクールさんだけはちょっとご縁がありまして、結成当初からライブの撮影を手伝ったりとか、知り合いがライブのディレクターをやっていたりとかで、話はたくさん聞いていたんです。これはぼくの勝手な主観なんですけど、ちょっと前までのアイドルって「オジサンたちが金儲けのために女の子にやらせてます」みたいな、いかにもリサーチしてやってますみたいな作られた感じがあったと思うんです。でも、リリカルスクールさんも含めて最近のアイドルは若い人たちがもっとピュアに作っている感じがしたんですよね。音楽的にもすごく工夫があるし、ちょっと遊び心もあるし、単純に商売だけじゃなくて、ちょっと前のバンドブームじゃないですけど、すごいエネルギーがそこにある感じがしたんです。そういうところがいいなあと思いました。ライブも音楽好きの人に訴えるような感じになっていますしね。

―― この作品ではリリカルスクールのみなさんを魅力的に見せることが重要だったと思うのですが、彼女たちを魅力的に見せるために特に意識された点というのはどういう部分でしょうか?

『リリカルスクールの未知との遭遇』スチール

『リリカルスクールの未知との遭遇』劇中にはリリカルスクールのライブシーンも盛り込まれている

田中:それで言うとですね、ぼくの中ではあの子たちの人格の情報が全然なかったんです(笑)。スケジュールの関係で脚本を書いているときに直接お会いすることもできなかったですし、映像を見ても普段の感じってそんなにわからないんですよね。でもライブとかには何度か行って、その合間合間ですごく感じたのは、いい意味で普通の子たちだなという感じだったんです。B-GIRLでもないですし、ブリブリのアイドルっぽくもないですし、いい意味でフラットで、すれてない自然体な感じがしたので、そういう感じが出るように演出していけばいいのかなと思いました。あんまり「あれやってくれ、これやってくれ」というよりは、ほんとにそのままで、多くを料理するのではなく「刺し身でどうぞ!」みたいな感じでやったほうが、絶対により魅力的になるだろうなと思いました。

―― 映画の中でのメンバーおひとりおひとりの役割というのはどのように決めていかれたのですか?

田中:やっぱり、6人いると、たとえば3人が主役で3人が脇役になるとか、いろいろパターンがあると思うんですよね。今回もいろいろ考えたんですけど、あるとき「6人がバランスよく出るという作りを目指すべきなんじゃないか」と思ったんです。それで、それぞれのキャラクターが浮き彫りになるようなシーンをいくつか用意して「この子はこういう子なんだ、こっちの子はこういう子なんだ」という説明もセットしなければと思ったので、それがどこまで実現できているかわからないですけど、ぼくの中ではけっこう細かくやったつもりではいるんです。
 一番参考にしたのはスマップさんです。あのバランスですね。要するに、ストーリーテラーであるayakaさんはいわゆるキムタクさんです。直感的で動物的みたいなイメージのキャラクターかなと。それで、自分の趣味でもあるんですけど、ちょっとドジっ子で天然でみたいなキャラクターにもしようと思いました。
 そして、ツッコミ役ではないですけれど、meiさんは中居くんですね。仕切り屋で、リーダーシップもあって、正義感も強くて、いろいろなことを訂正して、勝ち気でみたいな、そういうキャラクターにしようかなと思っていました。
 amiさんは草なぎくんで、フワッとそこにいられて、みんなの調和を取る人みたいな感じにしました。
 minanさんが稲垣吾郎さんで、ちょっとミステリアスで、ちょっとクールで高貴なキャラクターですね。
 himeさんはみんなにイジられる末っ子キャラな香取慎吾くん。そこにちょっと小悪魔的でイタズラっ子みたいな雰囲気も出したかったです。
 それで最後、yumiさんは森くんです。オートレーサーの。マニアックでオタクの感じが出ればいいのかなと思って、ああいうキャラクターにしているんです。

―― お話をうかがうとすごく「なるほど」という感じがします(笑)。

田中:そんな感じします?(笑) 腑に落ちていただければよかったです(笑)。

―― それから、この映画の中で重要なポイントとなっているのがリリカルスクールさんのライブシーンだと思うのですが、映画の盛り上がる部分にライブシーンを持ってくるというのはどうやって決まっていったのでしょう?

田中:やっぱり最初からわかっていたことなんですけど、彼女たちは歌ったり踊ったりしているときが一番輝く瞬間で、彼女たちの武器だと思っていたので、とにかくそこに照準を合わせて作ろうと。ぼくが作った設定で「虚(きょ)」を演じていただきましたけど、ライブシーンが一番「実(じつ)」になってないといけないところかなと思っていましたし、そこで虚実が入り交じるのが気持ちいい作品になればいいのかなというのは最初から思っていたんです。だから、心配は全然していなかったですね。お客さんもいつもリリカルスクールさんのライブに来てくれる本当のお客さんに集まっていただきましたし、テクニカルな部分でいろいろ演出はしていますけど、もう「あとはやるだけですね」と安心していました。それで、ライブでやった曲の中でフリーラップが入るところがあるんですけど、そこは映画用の歌詞にしてもらったんです。ぼくが「こういうワードで」という部品だけを渡してお願いして、リリカルスクールさんのほうで作っていただいて、そのシーンの気持ちにあったラップにしていただいているんです。

―― ライブシーンで歌う曲に関して、監督からアイディアは出されたのですか?

田中:曲は選ばせていただきました。ぼくが「この曲がいいんじゃないか」という曲を直感的に選ばせていただいて、曲の流れも「こうだろうな」と、あまり迷わなかったですね。ファンの方からどういう意見があるかはちょっとわからないんですけど、個人的な趣味も入っていますね。

―― そのライブシーンに限らず映画全体のテンポがすごくいいなと感じまして、もう冒頭で製作各社のロゴが出るところからすごくテンポがある映画だなと思いました。

田中:ありがとうございます。やっぱり一番最初にリリカルスクールのみなさんとお会いして、想いを伝えて、台本を広げながら軽くセリフ合わせみたいなのをやらせてもらったときに、みんなが集合してワーってなるシーンをやったら、芝居がどうこうというよりもリズムが気持ちよかったんですよね。やっぱりラッパーの人たちなんだなと思ったので、こういうリズムを売りにした作りにすればいいんだとピンと来ちゃって、だから編集のときにリズムは意識はしていました。

「みんな表情がすごくよくて、いい顔がたくさん撮れているんじゃないかと思います」

―― 最初にこの作品がお披露目となったのは今年2月のゆうばり国際ファンタスティック映画祭ですね。上映されたときのお気持ちはいかがでしたか?

田中:上映が『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年・米/アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督)の裏だったんですよ(笑)。それで閉会式もやっていたので、「お客さん来なかったらどうしよう」とかいろいろ考えてすごく胃が痛かったんですけど、ほんとに満員で、東京からファンの人たちも来てくれていたみたいで花束もいただいたりしてですね、お客さんがすごくあたたかくて、エンドロールが終わったときに拍手が鳴り止まなくて、メンバーを見たら泣いていましたし、ほんとに嬉しかったですね。時間がなかったですし、どんな反応になるのか予想がつかなかったのですごく精神的にキツかったんですけど(笑)、あの瞬間は報われました。

―― やはり、ゆうばりファンタでの上映というのは特別の想いはありましたか?

田中:そうですね、ゆうばりファンタは自分の大好きな映画祭ですし、監督としてではなく井口組の一員の俳優としておじゃまさせていただくことも多くてですね、ものすごくアットホームな映画祭で「いつか自分もここで監督として自分の作品を流したい」とずっと思っていたので、それが今回このタイミングでこういう内容でできて、やっぱりファンタスティックな映画を作りたかったですし、今回はその内容にうまくみなさん乗っていただけましたし、そういうところで、もう感無量でした。

―― いまも少しお話にありましたが、これまで井口昇監督の作品をはじめいろいろな監督の作品に俳優として出演されてきて、監督として影響を受けた部分というのはありますか?

田中:もちろんです。たくさんありまして、やっぱりぼくが参加していた映画はいわゆる正統派ではない異端な作品が多くて、なんか、現場全体の雰囲気が討ち入りみたいな感じなんですよ(笑)。そういうお祭りのようなエネルギーみたいなものがちゃんと作品に内封されていくんだなということを毎回ぼくは体感していたんです。空気の作り方が独特な監督さんが多くて、みなさん「この映画で世の中をひっくり返してやるんだ」くらいの気持ちでやられていて、そういう強い意志みたいなものが絶対にお客さんを惹きつけると思っていましたので、自分でもなるべくテンションを保つように、熱くやったつもりなんです。

―― こうして長編作品を1本作られた上で、今後こんな作品を作ってみたいというアイディアがありましたら聞かせてください。

デモ田中監督写真

田中:やっぱり、自分が観たい映画というのは大体が「この監督なに考えているんだろう?」みたいな種類の映画で、「この発想なかったわ!」みたいなぶっ飛んだアイディアの映画とか、どこか正統派じゃない映画にものすごく惹かれるところがあるんです。いまの日本映画って絶対にイケメンとか美女が出てくるじゃないですか。逆に「全部老人!」みたいな、老人ホームと介護士のバトルとか、暴動映画とか、そういうのを作りたいなと思いますね。やっぱり、自分も含めて老いてきていますので、おじいちゃんおばあちゃんがキラキラしているような映画を作ってみたいと思います。

―― では、最後のまとめとしておうかがいしたのですが、

田中:あ、もうまとめちゃいます?(笑) 共演者についてもちょっと触れていいですか?

―― あ、すみません、ぜひお願いします。

田中:今回、共演でスチャダラパーのANIさん、TOKYO No.1 SOUL SETのBIKKEさん、ZEN-LA-ROCKさんたちに出ていただいています。ヒップホップもののフレーバーを上っ面だけじゃなくてきちんとやりたいというのがありまして、ほんとにヒップホップが好きな人たちが観たときに「ケッ」と言われるような映画にはしたくなかったんですね。かつ、アイドル映画としても成立させるという欲張った作りにしたくて、スーパーバイザーとしてM.C.BOOさんに参加してもらって、彼の同志に声をかけてもらったんです。それから芸人さんもひとり、バッファロー吾郎Aさんに出ていただいて、ほんとにいわゆる俳優さんがほぼ出てこない映画になってしまったんですけど、芝居がうまいとか下手とかではなくて、みなさんが出ているということがグルーヴになるんじゃないかなと思って協力していただいたという感じですね。ANIさんも映画には出演したことなくてこれがデビュー作ということだったので、ほんとに光栄でした。昔からスチャダラパーもTOKYO No.1 SOUL SETも大好きなので。ANIさん、渋かったですよね。ああいう味をちゃんと内封させたいなと思っていました。あとは、絶対にほかの映画に出てこなそうな現場でやっているHIPHOP最PSY高CORE会議のFDFANTA汁CHILLSTASKIさんとかですね、知る人ぞ知るカルトな人たちもたくさん出演していまして、東京のそういうシーンが好きな人が「オッ」と思うようなシーンはできるだけ入れたつもりなんです。

―― そういう部分もこの映画のひとつの見どころですね。

田中:それもそうですし、やっぱり「一番の見どころは?」と聞かれたら「リリカルスクールさんの表情」と答えようと思っているんです。彼女たちのメジャーデビュー直前だったころの瑞々しさがちゃんと内封された感じになっていると思うんですよね。映画の撮影の最中に彼女たちのメジャーデビューが決まったということがあって、物語もショービジネスの葛藤が出てきますし、その辺をシンクロさせたいなって思っていました。もちろんメジャーデビューに向けて準備はしていたでしょうけど、撮影が始まったときはまだメジャーでやることは決まっていなくて、映画の設定として「今後どうなっていくのかステップがまだわからない女の子たち」をリアルにメジャーを目指すメンバーが演じるわけで、メンバーたちがそのときなにを感じ、なにを思っていたのか、期待とか不安とか表情に滲み出ているんじゃないかなって。やっぱり、芝居がどうこうというよりも、みんな表情がすごくよくて、いい顔がたくさん撮れているんじゃないかと思います。

―― では、改めて最後に、監督から映画をご覧になる方に伝えたいことをお願いします。

田中:もう大体伝えましたね(笑)。やっぱり、この映画の意義を言うと、まず、ずっとリリカルスクールさんを応援してくれてきたファンの人たちに喜んでもらえる作品にしなければいけない。そして、彼女たちの存在をお子さんからおばあちゃんまであらゆる層に知らしめるものにしなくてはならない。彼女たちのいま持っている空気感というか、そういったものをうまく切り取らなくてはならないということを重視して作ったんです。なおかつ、みんなが「ワー!」ってなって、幸せでドーパミンが出まくってニコニコしちゃうみたいなものにしたかったんです。そうなったら誰も傷つかないですよね。この映画は大爆破シーンがあるわけじゃないし、カーチェイスもないし、どうやったら「ワー!」ってなれるかと考えたときに、映画を作る過程も含めて、撮影も物語もハッピーなパーティーみたいになって、そこが全部リンクしていって、しかも彼女たちがこの映画を経験することが刺激となって成長していくみたいな、そういう映画になっていけばいいなというのはみんな言っていました。なので、そういう感じが観てくださる方に伝わればいいなと思います。

(2016年5月26日/馬車馬企画にて収録)

作品スチール

リリカルスクールの未知との遭遇

  • 監督・共同脚本・編集:デモ田中
  • 出演:リリカルスクール(ayaka、mei、yumi、ami、minan、hime)ほか

2016年5月28日(土)よりシネマート新宿、6月18日(土)よりシネマート心斎橋、6月25日(土)より名古屋シネマスコーレ ほか全国順次公開

『リリカルスクールの未知との遭遇』の詳しい作品情報はこちら!

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