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『君はまだ、無名だった。』は、陽光きらめく真夏の湘南を舞台に、夢を叶えるために奮闘する若者の姿をみずみずしく描いた青春音楽映画である。
主人公の青年は、都会でひとり暮らす新進作曲家。作曲家として忙殺される日々の中、高校時代の恩師の死の知らせをきっかけに、青春時代に思いを馳せる。ただ純粋に音楽を愛していたあのころ…。気の置けない仲間との会話、ピアノのレッスンに励んだ日々、そしてずっと封印していたあの事件、最愛の女性との別れ。楽しい記憶だけでなく、悲しい過去とも勇気を持って向き合うことで、やがて彼は未来への新しい一歩を踏み出すこととなる。
主人公・和実を演じるのは椿隆之。「仮面ライダー剣（ブレイド）」に主演して一躍注目を浴びた彼が、自らの人生と葛藤する青年を繊細に演じている。和実に恋心を抱く同級生・由基子には“第８回全日本国民的美少女コンテスト”でグランプリ受賞した「美少女クラブ31」の正統派美少女・阪田瑞穂。そのほか、和実の才能を引き出す美しい年上の女性・乃里子に『櫻の園』の宮澤美保、和実の人生に大きな影響を与える橘先生に名優・萩原流行、その妻・節子にベテラン・原日出子、和実の母に鶴田さやか、そして和実の同級生でバンド仲間に関川太郎と佐藤タケシと、ベテランと新鋭の俳優陣が若いふたりを支える。
原案＆監督は若手俊英・葉山陽一郎。故郷である湘南を舞台に、現実と格闘する主人公に真摯にカメラを向けた。また、お洒落なイメージが先行する湘南ではなく、地元民ならではのロケ場所を選び撮影を敢行。おみやげもの屋さんが並ぶ商店街や地元の若者が集う藤沢名店ビルなど、これまでの湘南映画とは一線を画した庶民的で温かな湘南の風景が堪能できるのも本作の大きな魅力だ。
過去への旅を経験し、自らの“内なる情熱”を再確認する主人公・和実。彼のそんな姿はきっと苦難を乗り越えようとする多くの人々への応援歌になるだろう。
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新進作曲家として活躍する深瀬和実（椿隆之）のマンションで鳴り響く電話の音。クライアントからの無理難題や急ぎの発注が深夜の留守電に残されるのはいつものことだったが、その日の電話は和実にとって忘れることのできない恩師・橘章吾先生（萩原流行）の死を伝えるものだった。橘の葬儀に参列するため生まれ育った湘南を目指して電車に乗る和実。やがて和実の記憶は海の見える高校で過ごした青春時代へと遡っていく…。
１９９４年・夏。七里ヶ浜学園高校３年生だった和実は音大を目指していた。スナックを経営する母（鶴田さやか）の女手ひとつで育てられた和実の家庭にはピアノを買う余裕はなかった。そんな和実に音楽担当の教員・橘は夏休みの間、自宅でレッスンを受けないかと声をかける。夏休みの毎日、橘家で熱心にレッスンを続ける和実は、橘の妻・節子（原日出子）や同級生・由基子（阪田瑞穂）たちの応援のもと、着実に腕前を上げていった。
そんなある日、由基子たちと組んでいるバンドで路上ライブを決行することになった和実は、メンバーの馬渕（関川太郎）、北川（佐藤タケシ）、由基子と渋谷を目指して車で出発するが、慣れない運転のため人身事故を起こしそうになる。危うく事故は免れたものの、学校に呼び出された４人は学校に無断で校外活動をおこなおうとしたことを厳しく追及され、思わず和実は「無断じゃない、橘先生の許可をもらっています！」と叫ぶのだった。その言葉が原因となって、やがて橘は教壇を去ることになる…。
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