投資会社を経営していた田口(熊倉功)は、未公開株をめぐる詐欺容疑で指名手配されてしまった。警察だけでなく、会社に関係していたヤバイ人たちにも追われることになり、飛び乗ったタクシーで行き着いた先は山の奥。車では入れない場所を当てもなく歩いていると、迷彩服姿の人影が! その人影に殴られて、田口は気を失ってしまう。
やがて田口が目覚めたのは動物園のベンチの上。周りには、戦闘服の一団やマーチングバンド。そしてひとりの女性が象に「話しかけようとして」檻の中に入り込み大騒ぎ。いったいここは?
由布子(丸山優子)という女性に話しかけられ、田口はようやく事情が飲み込めてきた。地域の精神科クリニックが共同で山の中にある遊園地と動物園を1日貸し切ってのデイケアをおこなっており、クリニックの患者たちが集まってきているのだ。
患者たちはみなそれぞれ異なった人生を歩み、クリニックにやってきている。テロリスト対策に執着する元・自衛官の神谷(高橋修)、生徒指導に自信を失った高校教師・阪口(大関真)、記事がきっかけで脅迫された新聞記者・河崎(大竹浩一)、動物と話ができるという奥川(西海健二郎)や、資産を失った銀座のママ・八巻(水野久美)など……。
さらに、記憶喪失の資産家・金子(佐原健二)の娘・真志奈(柳田衣里佳)や、金子の家族に依頼を受けた弁護士の笹谷(石倉良信)、インドネシア人の看護師・ローナ(古藤ロレナ)を取材しようとするテレビ局クルーや、銃を持った不審者の姿を見かけたという通報を受けた刑事・源田(野添義弘)までもが山奥のこの場所を訪れる。
患者や医師たち、その周囲の人々の抱えるさまざまな事情が交錯する中、事件が起こる……。
世界のどこにでもある、場所
監督:大森一樹
出演:熊倉功 丸山優子 佐原健二 水野久美 ほか
2011年2月26日(土)よりシネマート新宿 ヒューマントラストシネマ渋谷 シネマスコーレ シネマまえばし ほか全国順次ロードショー
2011年/カラー/HDCAM/16:9/ステレオ/97分
山の中にある動物園と遊園地へと迷い込んだ青年が出会ったのは、調子外れのマーチングバンドや、迷彩服の兵士、動物と会話する男たち……。いったいここは?
1977年のデビュー以来、日本映画の第一線で幅広い作品を送り出し続ける大森一樹監督が、現代に生きる人々の「心の病」という題材に挑んだのが『世界のどこにでもある、場所』だ。「山の中の遊園地と動物園で精神科クリニックの患者たちがデイケアをおこなう」という設定のもと、1966年のフランス映画『まぼろしの市街戦』をモチーフにオリジナル脚本を執筆。限定された空間で23人もの登場人物が繰り広げる群集劇を作り上げた。
キャストには、劇団スーパー・エキセントリック・シアターの劇団員を起用。物語の中心となる青年・田口役の熊倉功、由布子役の丸山優子をはじめ、個性豊かな劇団員たちがそれぞれの背景を持った登場人物たちを演じる。さらに、往年の東宝映画で多くの映画ファンの記憶に残るベテランの佐原健二と水野久美も出演している。
音楽は、大森監督とは『恋する女たち』などでもコンビを組んでいるかしぶち徹郎が担当。さらに、日本の唱歌・童謡を多彩なアーティストが歌い継ぐ「にほんのうた」プロジェクトとのコラボレーションにより、小川美潮が歌うエンディングテーマ「花のまち」など、アルバム「にほんのうた」収録の楽曲が劇中で使われている。
サスペンス、アクション、ラブストーリーといった要素がふんだんに盛り込まれた娯楽作品でありつつ、現代の社会の抱える問題を鋭く描き出す『世界のどこにでもある、場所』。それは「映画らしい映画」を作るという大森監督の試みである。
- 田口卓也:熊倉功
- 美作由布子:丸山優子
- 高森潤:坂田鉄平
- 上村乃里子:松村真知子
- 阪口静夫:大関真
- 河崎修三:大竹浩一
- 村木敬三:白倉裕二
- 神谷源一:高橋修
- 東千枝子:三谷悦代
- 奥川深:西海健二郎
- 高畑五郎:田上ひろし
- 松居久志:出口哲也
- 笹谷良:石倉良信
- 磯田眞:山崎大輔
- ローナ:古藤ロレナ
- シンシア:山口麻衣加
- ルディ:嶋田真
- ダニエル:アベディン
- 河野真志奈:柳田衣里佳
- 光原正也:仲井真徹
- 源田:野添義弘
- 金子正夫:佐原健二
- 八巻モネ:水野久美
- 脚本・監督:大森一樹
- 統括プロデューサー:佐藤啓
- プロデューサー:浅沼孝/森坂真志人
- 企画協力:金巻康朗
- 撮影監督:深江岳彦
- 録音:甲斐田哲也
- 衣裳:牧野純子
- ヘアメイク:小谷野有美
- スクリプター:江口由紀子
- 編集:本田吉孝
- 助監督:水落拓平
- 制作担当:川嶋大輔
- 音楽:かしぶち哲郎
- 演奏:ムーンライダーズ/国立オペラ・カンパニー 青いサカナ団/モルダウ・ミュージック
- 使用楽曲:畠山美由紀 with ASA-CHANG & ブルーハーツ「浜辺の歌」/遠藤賢司「黄金虫」/「しゃぼん玉」
- エンディングテーマ:小川美潮「花のまち」
- 制作協力:劇団スーパー・エキセントリック・シアター
- 制作プロダクション:ADKアーツ
- 配給・宣伝:グアパ・グアポ