世界のどこにでもある、場所
監督:大森一樹
出演:熊倉功 丸山優子 佐原健二 水野久美 ほか
2011年2月26日(土)よりシネマート新宿 ヒューマントラストシネマ渋谷 シネマスコーレ シネマまえばし ほか全国順次ロードショー
2011年/カラー/HDCAM/16:9/ステレオ/97分

山の中にある動物園と遊園地へと迷い込んだ青年が出会ったのは、調子外れのマーチングバンドや、迷彩服の兵士、動物と会話する男たち……。いったいここは?
1977年のデビュー以来、日本映画の第一線で幅広い作品を送り出し続ける大森一樹監督が、現代に生きる人々の「心の病」という題材に挑んだのが『世界のどこにでもある、場所』だ。「山の中の遊園地と動物園で精神科クリニックの患者たちがデイケアをおこなう」という設定のもと、1966年のフランス映画『まぼろしの市街戦』をモチーフにオリジナル脚本を執筆。限定された空間で23人もの登場人物が繰り広げる群集劇を作り上げた。
キャストには、劇団スーパー・エキセントリック・シアターの劇団員を起用。物語の中心となる青年・田口役の熊倉功、由布子役の丸山優子をはじめ、個性豊かな劇団員たちがそれぞれの背景を持った登場人物たちを演じる。さらに、往年の東宝映画で多くの映画ファンの記憶に残るベテランの佐原健二と水野久美も出演している。
音楽は、大森監督とは『恋する女たち』などでもコンビを組んでいるかしぶち徹郎が担当。さらに、日本の唱歌・童謡を多彩なアーティストが歌い継ぐ「にほんのうた」プロジェクトとのコラボレーションにより、小川美潮が歌うエンディングテーマ「花のまち」など、アルバム「にほんのうた」収録の楽曲が劇中で使われている。
サスペンス、アクション、ラブストーリーといった要素がふんだんに盛り込まれた娯楽作品でありつつ、現代の社会の抱える問題を鋭く描き出す『世界のどこにでもある、場所』。それは「映画らしい映画」を作るという大森監督の試みである。

投資会社を経営していた田口(熊倉功)は、未公開株をめぐる詐欺容疑で指名手配されてしまった。警察だけでなく、会社に関係していたヤバイ人たちにも追われることになり、飛び乗ったタクシーで行き着いた先は山の奥。車では入れない場所を当てもなく歩いていると、迷彩服姿の人影が! その人影に殴られて、田口は気を失ってしまう。
やがて田口が目覚めたのは動物園のベンチの上。周りには、戦闘服の一団やマーチングバンド。そしてひとりの女性が象に「話しかけようとして」檻の中に入り込み大騒ぎ。いったいここは?
由布子(丸山優子)という女性に話しかけられ、田口はようやく事情が飲み込めてきた。地域の精神科クリニックが共同で山の中にある遊園地と動物園を1日貸し切ってのデイケアをおこなっており、クリニックの患者たちが集まってきているのだ。
患者たちはみなそれぞれ異なった人生を歩み、クリニックにやってきている。テロリスト対策に執着する元・自衛官の神谷(高橋修)、生徒指導に自信を失った高校教師・阪口(大関真)、記事がきっかけで脅迫された新聞記者・河崎(大竹浩一)、動物と話ができるという奥川(西海健二郎)や、資産を失った銀座のママ・八巻(水野久美)など……。
さらに、記憶喪失の資産家・金子(佐原健二)の娘・真志奈(柳田衣里佳)や、金子の家族に依頼を受けた弁護士の笹谷(石倉良信)、インドネシア人の看護師・ローナ(古藤ロレナ)を取材しようとするテレビ局クルーや、銃を持った不審者の姿を見かけたという通報を受けた刑事・源田(野添義弘)までもが山奥のこの場所を訪れる。
患者や医師たち、その周囲の人々の抱えるさまざまな事情が交錯する中、事件が起こる……。