注文の多い料理店
会社専務の左右吉(宮迫博之)と、受付嬢の藤子(石原さとみ)は不倫の関係にある。休日、山に猟にやってきたふたりは、相手を探るような言葉を交わしていく。左右吉も藤子も、自分に有利なかたちで関係を終わらせることを望んでいるのだ……。日も落ちはじめ、帰ろうとするふたりだが、猟犬がどこかに行ったまま戻ってこない。そしてふたりも道に迷ってしまう。途方に暮れるふたりは、山の中に立つ看板を見つけた。そこには「どなたもどうかお越しください。決して遠慮はありません」と書いてあった。ふたりは看板に誘われるまま、山の中の料理店へと入っていく……。
乳房
ラジオが硫黄島のニュースを伝える戦時中の出来事。かな江(水崎綾女)は、夫が招集されて以来、ひとりで理髪店を切り盛りしていた。かな江の店の近くに住む中学生の寛次(影山樹生弥)は、自分の胸が女性のように膨らんでいく悪夢にたびたびうなされていた。夢だけではなく、寛次の胸は実際に膨らみを帯びてきており、寛次は不安に駆られる……。
ある日、父親に言いつけられ夜間巡視に出た寛次は、かな江が店の中で胸元をあらわにして髪を洗っているところを目撃してしまう。幼いころから寛次を知るかな江は、子供に接するような態度で寛次を迎えるが……。
人妻
昭和22年。独り身の桑田(大西信満)は、ある夫婦の家に間借りをすることになった。入居の当日、家主の妻・年子(谷村美月)が荷物の片付けを手伝うのだが、年子の奔放で無防備な振る舞いは桑田の心をひそかにざわつかせる。結婚して3年というまだ若い年子。桑田は年子と夫の夫婦生活を日々妄想するようになってしまう。年子はもしや桑田が迫るのを待っているのではないか? そんな内なる声が桑田を悩ませる。そんなある日、家主が急な用事で数日間留守にすることになった。その間この家にいるのは、年子と桑田ふたりだけである……。