
立花亭ピカッチは前座の落語家。愛しい彼女にも会わない固い決意で名人・圓志に入門したが、普通なら4年程度の前座修行は気がつけば9年5ヶ月に。それでも日々、立前座として寄席の楽屋を取り仕切るピカッチだったが、ある日楽屋で次々とトラブルが持ち上がる。このままでは高座に穴があく! さて、どうするピカッチ!?
“寄席の楽屋”という限定された空間で、個性豊かすぎる登場人物が次々に登場して繰り広げる、一幕もののドタバタコメディ、それが『TOKYOてやんでぃ 〜The Story Teller's Apprentice〜』だ。劇団“うわの空・藤志郎一座”の代表作「悲しみにてやんでい」を原案に、これまで『ピストルオペラ』『下妻物語』『姑獲鳥の夏』『蟲師』など数多くの話題作・ヒット作の企画・プロデュースを手がけてきた~田裕司が、脚本と自身初となる監督をつとめて映画化した。
主人公の立花亭ピカッチを演じるのは劇団“はえぎわ”主宰で、第56回岸田國士戯曲賞を受賞し注目を集める劇作家・俳優のノゾエ征爾。独特の味わいで万年前座の哀愁を感じさせる。そして、取材で楽屋にやって来た雑誌記者・大田ユリには『赤い糸』などの南沢奈央。コスプレマニアの席亭には長いキャリアを持つ安達祐実。さらにピカッチの師匠・立花亭圓志には日本を代表する喜劇人の小松政夫が扮して貫禄たっぷりの演技を見せる。そのほか、有坂来瞳、黒田福美、伊藤克信、池田鉄洋、ラサール石井、でんでん、石井正則ら多彩なフィールドからキャストが揃い、舞台版の生みの親・村木藤志郎も出演している。
春風亭昇太の創作落語を原案に生まれた舞台版「悲しみにてやんでい」が『TOKYOてやんでぃ 〜The Stoy Teller's Apprentice〜』へ。落語、舞台劇、映画とジャンルを越えて、クスリと笑えてホロリと泣ける現代の人情喜劇がスクリーンに登場する。

その夜、青年は愛しい彼女に決意を伝えた。青年が目指すのは一人前の落語家。そのためには修行を積まなくてはならない。前座修行を終えるまでは通常4年程度。それまでは彼女と会わないと。そして彼女もその決意を受け止めた――。
それから時は過ぎ。あの青年はいまは落語家・立花亭ピカッチ(ノゾエ征爾)。とはいえ、当代を代表する名人と誰もが認める師匠の立花亭圓志(小松政夫)は厳しく、なかなかピカッチを二つ目に昇進させようとはしない。4年程度で終えるはずの前座修行はいつの間にやら9年5ヶ月に。ピカッチ、いまやすっかり前座のベテランである。
前座の大事な仕事は寄席の楽屋の取り仕切り。今日もピカッチ、立前座として楽屋を取り仕切るのだが、今日の楽屋はちょいとばかしいつもと違う。女性誌の取材とやらで、若くて美人の編集者・大田ユリ(南沢奈央)が楽屋に来ているのだ。そのユリ、ピカッチの“彼女との約束”を知って興味津々の様子。
そしていつもと違うのはそれだけではなかった。どういうわけだか小さな行き違いやら失敗やらが重なって、楽屋はてんやわんやの大騒ぎ。このままでは高座に穴があいてしまう! おまけになぜか寄席の席亭(安達祐実)はコスプレ衣裳に身を包んで高座に上がりたがる。なんとか席亭を引き止めて、トリを務める師匠・圓志がやってくるまで高座を持たせようと奮闘するピカッチ。そんな中、さらに思いもよらない事態が! あの約束の夜から9年5ヶ月会うことのなかった彼女(有坂来瞳)が楽屋にやって来た――。
いったい今日の寄席はどうなる? お客さんの知ることのない、楽屋で起きた舞台裏のドラマの行く先は?