第56回岸田國士戯曲賞を受賞し演劇界で注目を集める劇作家・俳優のノゾエ征爾さんが主演をつとめる『TOKYOてやんでぃ 〜The Story Teller's Apprentice〜』が２月23日に新宿K's cinemaで初日を迎え、ノゾエさんと共演の安達祐実さんら出演者と�~田裕司監督が舞台あいさつをおこないました。
　『TOKYOてやんでぃ 〜The Story Teller's Apprentice〜』は、劇団“うわの空・藤志郎一座”の舞台劇「悲しみにてやんでい」を原案にした、落語界を題材とした一幕ものの人情コメディ。なかなか出世できない前座の落語家・立花亭ピカッチを主人公に、寄席の楽屋でさまざまな人物が繰り広げる騒動が描かれていきます。
　ピカッチを演じたノゾエさんは、舞台に登場すると「いま、まったく（来ていると）聞いていなかった親の顔が目に飛び込んできまして、ちょっと動揺しています(笑)」とやや困惑した様子も見せつつ「監督からご指名いただいての主演ということだったので、精一杯やらしていただきました」と初の映画主演をつとめての心境を語り、松尾スズキさんや三谷幸喜さんなど、過去の岸田國士戯曲賞受賞者が映画界で活躍していることについて質問されると「今後（映画界に）殴りこむかということですか？　殴りこむ殴りこまないで言えば……殴りこみましょうか。昔からやりたい気持ちはあるので、いつかはやってみたい気持ちはありますね」と意欲をのぞかせました。
　“コスプレ好きの寄席の席亭”を演じ、劇中でチャイナ服やミニスカサンタ、ナース服のコスプレ姿を披露している安達さんは「年甲斐もなくというところで恥ずかしかった部分もありましたけど、楽しんでやらせていただきました。どれがみなさんのお好みかわかりませんが、見てください(笑)」と、照れ笑いで語りました。

　“予備芸人”の予備家予備八を演じた伊藤克信さんは、デビュー作『の・ようなもの』（１９８１年／森田芳光監督）でも落語界を舞台にした映画に出演しており、久々の落語に関わる役に「30数年間、この作品のためにあたためにあたためて、磨きに磨いた役柄ですかね」と、感情たっぷりに語って客席を沸かせ、劇中では着物に身を包んで落語家・怜音亭万福を演じた中村昌也さんは「１９２センチあるので、着物を用意してもらうときにすごい迷惑かけたなと思いました」と裏話を披露。
　そして、うわの空・藤志郎一座の座長で、映画にも出演している村木藤志郎さんは「（もとの舞台は）小劇団の役者だけでやっているので、こんなキャストの方にやってもらって夢の中にいるみたいです」とコメント。舞台版で村木さんが演じた主人公の師匠・圓志は映画では小松政夫さんが演じており、村木さんは「自分が（舞台版で）アドリブで言ったセリフを小松さんがそのまま言っているのがちょっと信じられないくらいで、鳥肌が立ちました」と原作舞台の作者としての想いを語りました。

　�~田監督はこれまで『下妻物語』『姑獲鳥の夏』など数々の話題作の企画・プロデュースを手がけており、メガホンをとるのは今回が初めて。小春を演じた黒田福美さんは「僭越ですけど素晴らしい監督だなと思いました。ひじょうに和やかな現場を演出していただきまして、組ませていただくと勉強になる監督です。これからもどんどん作品を撮っていただきたい」と初監督の手腕を絶賛。
　�~田監督はメガホンをとった動機について、ある大物監督の名前を出して「業界の重鎮にケンカを売らなくては」とジョークを飛ばしつつ「震災があったりとか映画の作り方が変わってきたりとかで、なにを作ったらいいか、なにを観たらいいかわからなくなってきちゃったんですね。そんときに、ちょっと元気が出るような、いろんな生き方があっていいんだぜって、それをセリフで言わずに“くだらねえな”って笑ってもらって、それでも“なるほどね”って思ってもらえるような“粋な映画”を作れたらいいなというのが出発です」と作品に込めた想いを語りました。

　舞台あいさつ登壇者のほか、南沢奈央さん、有坂来瞳さん、池田鉄洋さん、ラサール石井さん、石井正則さん、真野響子さん、小松政夫さんら、多彩で豪華なキャストが織りなすクスリと笑えてホロリと泣ける人情コメディ『TOKYOてやんでぃ 〜The Story Teller's Apprentice〜』は２月23日(土)より新宿K's cinemaで公開中ほか全国順次ロードショーされます。