
中学3年生の茜が夢の世界で聴いた友人の声。そして茜が住む街で流行する夢や希望を持たなくなってしまう「大人病」。20数年前の未完の8ミリ映画に隠された、街のマスコットキャラクター・トニ子の秘密とは!?
高校1年生(撮影時)の監督をはじめ、21名の中高生スタッフが作りあげた映画が札幌市琴似(ことに)地区から全国へと届けられる。子どもの夢を奪う謎の存在から街を守る中学生たちの活躍を描いたファンタジー『茜色クラリネット』だ。
この映画は、札幌で2005年より続く中学1・2年生を対象にした「子ども映画制作ワークショップ」から生まれた。同ワークショップではスタッフも出演者も中学生がつとめる短編を6回にわたり製作、国内外の映画祭などで高い評価を受けてきた。その集大成となるべく製作された長編が『茜色クラリネット』だ。中1、中2とワークショップに参加し、中3のときには公募によってワークショップ作品の脚本を手がけた1997年生まれの坂本優乃(さかもと・ゆうの)が監督をつとめた。
札幌在住で『7/25』『壁男』などの作品を北海道から発信してきた映画監督・早川渉が指導監督として参加しているのをはじめ、プロのスタッフと琴似地区の人々が21人の中高生をしっかりとバックアップ。キャストにも、数々の映画に出演する斎藤歩や札幌を拠点とする劇団yhsの南参(なんざん)や小林エレキが参加し、現役中高生キャストを支えている。
「大人病」の謎を追う中で、不安や悩みにも出会いながら「自分のやりたいこと」を見つけていく主人公・茜やその友人たち。その姿は、映画を作りあげた中高生スタッフの心をそのままに映し出しているかのようでもある。高い完成度とエンターテイメント性、そして中高生スタッフならではの瑞々しさが『茜色クラリネット』を輝かせる。

コトニ中学校3年生の茜(佐藤楓子)は、親に内緒で買ったクラリネットの練習をするため親友の夏輝(佐藤莉奈)の家を訪れた。夏輝の家は古本屋さん。夢の中に入る方法が書かれた古い本を読んでいた夏輝と茜は、いつの間にか夢の世界へと入ってしまった! 夢の中のコトニの街で茜と夏輝は「助けて!」という声を聴く。それはふたりの同級生・藍(森田有紀)の声。藍は小学生だった3年前に事故に遭ってから、ずっと病院のベッドで眠ったまま目を覚まさない……。
そして茜と夏輝は夢の世界で奇妙な光景を見る。警官や、タクシーの運転手や、お店の人や、大人の格好をした子どもがあちこちにいるのだ! ふたりと同じように夢の世界にやって来ていた同じ中学の新聞部の男子・大西(永井洸伎)によると、その子どもたちは「大人病」にかかった人だという。「大人病」は現実のコトニの街でも流行しており「大人病」にかかると夢も希望も持てない大人になってしまうのだ。
大西の調査によると「大人病」の流行には藍の入院している病院が関係しているらしい。藍の病室を訪れた茜たちは、そこでコトニ町のマスコットキャラクター・トニ子の姿を見る……。
茜と夏輝、大西は、現実の世界に戻ってきてからも「大人病」について調べていく。昔、映画部が使っていた部室で3人が見つけたのは古い絵コンテ。その絵コンテには、茜たちが夢の世界で見たのとそっくりな光景が描かれていた!
やがて茜たちは、20数年前に映画部が撮ろうとしていた8ミリ映画の存在を知る。その映画と「大人病」との関係は? トニ子は何者? そして、眠り続ける藍は……。