現役高校生の監督をはじめ21名の中高生スタッフが作りあげた北海道発のファンタジー映画『茜色クラリネット』の東京上映が11月1日よりユーロスペースにて始まり、11月2日に坂本優乃監督と主演の佐藤楓子さんとスタッフ代表者が北海道より来京し、舞台あいさつをおこないました。
『茜色クラリネット』は、札幌でおこなわれている中学生を対象にした映画制作ワークショップの集大成として、ワークショップOB・OGが札幌市琴似(ことに)地区の方々とプロのスタッフのバックアップのもとで制作した作品。コトニ中学校3年生の少女・茜を主人公に、子どもが夢を失ってしまう“大人病”の謎に立ち向かう茜たちの奮闘が描かれていきます。
舞台あいさつは上映終了後におこなわれ、坂本監督は「エンディングのあとの拍手の音を聞いてとても嬉しかったです。東京公開がついに始まったんだというのが夢みたいだったんですけど、こうやってこんなにたくさんの人に観てもらえて嬉しいです」と、茜を演じた佐藤さんは「撮影当初からの夢であった東京公開がこうやって実現できて、ほんとに嬉しく思っています。私たちの青春の想いをみなさんにもちょっとでも感じていただけたら嬉しいです」と、それぞれあいさつ。
スタッフ代表者は「今回の映画は21人の当時中高生のメンバーが撮ったんですけど、いろいろな大人の方に支えていただいてできた作品です。私たちの夢がこの映画の映像となって現れているかなと思っています」(演出チーム・福田さとみさん)、「東京に着いて“映画を楽しんでもらえるかな?”といろいろ考えていたんですけど、みなさんニコニコされていたので、楽しんでもらえたんだなと思ってすごく嬉しいです」(同・白田明花さん)、「舞台となった琴似という街は昔の建物があったりいまの建物があったり、いまと昔が入り乱れているとても面白い街です。その街のみなさんにも伝わっていてくれたら嬉しいです」(同・中島魁莉さん)、「琴似は私の出身地でございます。その出身地での撮影と聞いて胸が踊る気持ちでした。北海道では函館や夕張などで上映もして、ついには韓国での上映もあり、そして夢の東京での上映と、私たちの夢が羽ばたいた瞬間だな、私達の夢は始まったばかりなんだと思います」(録音チーム・鈴木智美さん)と、東京公開を迎えての心境を語りました。
中高生が作りあげた映画念願の東京公開に監督「夢みたい」 『茜色クラリネット』舞台あいさつ
後列左より、プロデューサーの麻生榮一さん、斎藤歩さん、プロデューサーの中島洋さん。前列左より、鈴木智美さん、佐藤楓子さん、坂本優乃監督、中島魁莉さん、白田明花さん、福田さとみさん
坂本優乃監督、演出チームの中島魁莉さん、白田明花さん、福田さとみさん、プロデューサーの中島洋さん
プロデューサーの麻生榮一さん、二ノ宮淳役の斎藤歩さん、録音チームの鈴木智美さん、主人公・伊藤茜役の佐藤楓子さん
舞台あいさつには、司会をつとめたプロデューサーの中島洋さん、同じくプロデューサーの麻生榮一さん、出演者の斎藤歩さんと、中高生スタッフを支えた方々も参加。茜たちの同級生の父・二ノ宮淳を演じた斎藤さんは「“夢が羽ばたいた”と彼らは言っているんですが、これからおかしな方向に飛んでいかないように(笑)、北海道の映画をしっかり作り続けていってほしいなと思っていますので、あたたかく見守ってやってください」と冗談を交えながら応援のメッセージを送り、麻生プロデューサーは「正直言って、大人たちは助手として働きました。決定権は彼ら(中高生スタッフ)が持ちまして、足りないところは若干アドバイスしましたけど、これからの日本の映画界、北海道の映画界を作っていくスタッフになっていくだろうと、誤らない方向に私も手伝っていきたいと思います」と斎藤さんの発言を受けたコメントをしました。
撮影では苦労もありつつも「撮っている間は毎日が新鮮で、疲れたという気持ちよりも“明日はまた撮れるんだ!”という楽しみのほうが大きかったなと、いま思います。あっというまの2週間だったと思います」という坂本優乃監督
オーディションでは主人公・茜の友人・夏輝役を希望していたという茜役の佐藤楓子さん。「最終的に茜になって“なんで私が主演なんだろう?”って最初はすごく思っていたんですけど、いまとなってはほんとに監督に感謝しかないです」
「北海道の映画人の先輩である麻生さんと中島洋さん、(指導監督の)早川(渉)くんという監督、北海道の映画人が本気で子どもたちを育てようとしている姿に胸を打たれて、参加させていただきました」と、北海道出身の斎藤歩さん
『茜色クラリネット』は、不思議な出来事を通じて主人公の茜が「自分のやりたいこと」を改めて見つめなおすストーリーとなっており、演出チームの中島さんは「実は将来は映画監督になりたいと思っています。撮っているときは“映画監督になろうかな、どうしようかな”と思っていて、茜がやりたいことを決めるシーンを観て“映画監督を本気で目指してみようかな”って決断がついて、ぼく自身がこの作品を通して夢に一歩ずつ着実に近づいているっていうことがはっきりわかって、スタッフのみなさんや大人のみなさんにいろいろ与えてもらってぼくはとってもいま幸せです」と、映画に携わることで得るものがあったと話し、録音チームの鈴木さんも「私の夢は映画プロデューサーでございます。私はいま大学1年ですけど、中学2年生のときに初めてワークショップに出演者として参加させていただいて、そして今回は技術側である録音スタッフをやらせていただきました。私は2回とも企画に参加した側なんですけど、今度は企画したいんです。“北海道でこういう映画を撮りたい”というのがあったらスタッフを集めて、撮って、北海道で上映して東京で上映して、できることなら監督と一緒に世界に映画を持って行って国際交流をしてみたいと思っています」と、大きな目標を披露。
ふたりの大きな夢を聞いて斎藤さんは「洋さんとか麻生さんがやっていたころに比べると、ぼくたちがある程度道筋を作ってきていますけど、でも(映画界を目指す大変さは)同じだと思いますので、やりたいならやってみれば?(笑) おかしな道に羽ばたかないようにがんばってください」と、厳しくもあたたかな言葉で激励しました。
エンターテイメントとしての上質さと中高生スタッフならではの瑞々しさをあわせ持ち、北海道での上映や海外の映画祭でも好評を博している『茜色クラリネット』は、11月1日(土)より14日(金)までユーロスペースにて2週間限定モーニングショーされています。