北海道・札幌の中学生向け映画制作ワークショップから生まれ現役高校生がメガホンをとった長編映画『茜色クラリネット』(11月1日公開)のマスコミ向け試写会が9月19日に都内で開催され、現在高校2年生の坂本優乃監督がティーチインをおこないました。
『茜色クラリネット』は、札幌のミニシアター・シアターキノ代表の中島洋さんが中心となりおこなわれている中学1・2年生を対象とした「子ども映画制作ワークショップ」の集大成として、30人の成人スタッフと映画の舞台となった琴似(ことに)地区の方々のバックアップのもと21名の中高生スタッフが映画を制作する「コトニ夢映画制作プロジェクト」で制作された長編映画。中学3年生の少女・茜を主人公に、子どもが夢も希望も持たない大人になってしまう「大人病」をめぐって夢の世界と現実、さらに20数年前の未完の8ミリ映画や琴似のマスコットキャラクター・トニ子までが関係するファンタジックなストーリーが展開されていきます。
中学1年生のときに役者、2年生で演出コースでワークショップに参加、3年生のときは脚本の公募に応募というかたちでワークショップ作品に参加した坂本監督は、その実績から抜擢され高校1年生の夏に『茜色クラリネット』を監督。「監督をやってみないか」という話を受けたときの気持ちを「ビックリしたんですけど、不安とかより“絶対にやりたい”という気持ちのほうが大きくて、(親と相談しなくては決められないけど)私はその場で“やりたいです!”と言いたかったくらいです」と語り、現実と夢や過去と現在が複雑に交錯するストーリーについて「ファンタジー色が強くて、私はすごくファンタジーが好きなのと、ストーリーが斬新で面白かったというのがあったので、ちょっと難しいかもしれないけど作ってみたい」と思ったとコメント。監督をつとめての苦労を尋ねられると「優柔不断な性格なので、監督は決めるのがお仕事というか、なにに関しても決断をくだしていかないといけないので、現場でもリハーサルでも“ほんとにこれでいいのか?”って悩んで大変で、つらかったけど乗り越えてよかったかなと思っています」と振り返りました。
ティーチインの進行役をつとめた映画評論家の森直人さんは「拝見していろいろと驚いて、いわゆる自主映画と違う感触だったということなんですよね。監督の自我から作るというよりは、ちゃんと映画を作ろうという意志が1本にわたって貫きとおされている」と評し「自分はなにがやりたいのか、それができるのか」という問いかけがなされるストーリーに触れ「物語と映画製作のテーマがピッタリ一致しているのが面白いなと思ったんです」と指摘しました。
現役高校生監督“夢への第一歩”を語る 『茜色クラリネット』ティーチイン
左より、シアターキノ代表でプロデューサーをつとめた中島洋さん、坂本優乃(さかもと・ゆうの)監督、ティーチインの進行を担当した映画評論家の森直人さん
ティーチインをおこなう中島洋さん、坂本優乃監督、森直人さん(左より)
ティーチインではQ&Aも設けられ、来場者からは活発に質問や意見が寄せられ、坂本監督はひとつひとつに丁寧に回答しました。
坂本監督は「書くことがすごく好きなので、もし監督さんになれるなら脚本の書ける監督さんになりたいなと思っていて、もし本格的に(映画に)携われなかったとしてもどこかで携われたらいいなと思っています」「ファンタジーもすごく好きなんですけど、三谷幸喜監督も大好きなので、コメディみたいな脚本も書けて撮れるようになったらいいなと思っていて、お客さんに笑ってもらいたいという気持ちがすごくあるので、コメディを撮ってみたいなっていうのはあります」と将来の希望を語り「ファンタジー色の強い青春映画ということで、親子連れの方にも観ていただきたいなと思っていて、たぶん家族内でもいろいろな意見の差が生まれて話しあってもらえたらと思いますし、(主人公の茜の)お父さんの部屋とかは、映画ファンの方にはもしかしたらキュンと来るようなグッズがあるかもしれないので(笑)、映画ファンの方にも観てもらいたいなというのがあります。それから、主役の茜ちゃんたちの心情の変化、私は彼女の表情がすごく好きなので、彼女の笑顔の清々しさの変化、最初と最後の笑顔の違いとかを観ていただけたら嬉しいなと思います」と、東京公開を前に作品をPRしました。
『茜色クラリネット』は、11月1日(土)より14日(金)まで渋谷ユーロスペースで東京公開。上映期間中には監督、出演者らの代表7名が来場しての舞台あいさつが予定されています。
また『茜色クラリネット』は海外の映画祭への出品も予定されており、上映経費や中高生スタッフが映画祭に参加するための費用を支援するためのクラウドファンディングが10月23日まで実施中。クラウドファンディングは1000円より申し込むことができ、支援金額に応じてさまざまな特典も用意されています。
→クラウドファンディングサイトMakuake内『茜色クラリネット』支援ページヘ