群馬の山中、若く美しいオーナー・マリコ(関めぐみ)が営む小さなカフェに、週刊誌記者の榎木田(大迫一平)はやってきた。実はこのカフェには訪れてきた客が次々と姿を消すという噂があった。雑誌記事の刺激的なネタを求めている榎木田は、その噂の真相を調べに来たのだった。
客として店に通う榎木田は、マリコや常連客の松浦(角田信朗)とアスカ(市川由衣)、榎木田と同じ日に店を訪れたスグル(藤原薫)と顔なじみになっていき、自分の身分を隠したままカフェの秘密を探ろうとする。
ボディビルに打ち込んでいたが肉体の限界を感じた松浦、大きなコンプレックスを持ち婚約者に逃げられたアスカ、優秀ゆえに孤独で通り魔事件に巻き込まれたスグル、3人はいずれも絶望を経験し死を望んだ自殺志願者だった。そしてネットの噂を頼りに、楽に確実に死ぬ方法を求めてマリコのもとにやってきていたのだ。マリコは彼ら自殺志願者に楽に死ねるカプセルを手渡す代わりに、骨髄移植のドナーへ登録させていた。そして、骨髄移植で誰かの命を救うまでは自殺を思いとどまるよう言い渡し、密かにかくまっていたのだ――。
マリコを中心に家族のような生活を送っている松浦、アスカ、スグルたち。彼らとともに過ごす時間の中で、榎木田はマリコ自身が抱える少女時代の親友・ソラ(荒川ちか)にまつわる哀しい記憶にも触れていく。
やがてカフェに届く報せと、誰もが予想だにしなかった事実。もうこの世にいないはずのソラの姿に悩まされるマリコ。それぞれの人生に迷う人々は、どんな選択をするのか――。
迷宮カフェ
監督:帆根川廣
出演:関めぐみ 市川由衣 藤原薫 角田信朗 ほか
2015年3月7日(土)より 角川シネマ新宿 ほか全国順次公開
2015年/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/112分
訪れた客が次々と姿を消すという噂のある山中の小さなカフェ。美しき女主人が営むその店を訪れた雑誌記者は、女主人と常連客の間にある秘密を知っていく。そして……。誰かの命を救うことのできる「骨髄移植」。『迷宮カフェ』は、この骨髄移植を題材に、高いエンターテイメント性で観客を魅了する異色の作品だ。
この映画を企画したのは、急性骨髄性白血病のために14歳の娘を失った経験を持ち、以来、骨髄バンク普及のためのボランティア活動に尽力してきた黒岩由香。映画を通して命の尊さと生きることの大切さを伝えたいという彼女の想いを、初監督作『EMPTY×BLUE』が高く評価された帆根川廣が脚本・監督をつとめて1本の映画へと結実させた。
そして充実のキャストが、この作品の魅力をさらに深くする。ヒロインのカフェオーナー・マリコを演じるのは『ハチミツとクローバー』などの関めぐみ。カフェの常連客で婚約者に逃げられたアスカには『海を感じる時』で新境地を見せた市川由衣。ある事件に関係する元・ひきこもりのスグルには『告白』の藤原薫。やはりカフェの常連客で元・ボディビルダーの松浦には空手家でありタレントの角田信朗。カフェの謎に迫る雑誌記者には舞台などで活躍する大迫一平。さらに、津川雅彦、螢雪次朗らベテラン陣の存在感や、柴田杏花、荒川ちかのフレッシュな魅力にも注目だ。
劇中には骨髄移植に関する知識も織り込まれ、作品を鑑賞しつつ自然に骨髄移植について学ぶことのできる作品となっている。カフェの噂を巡るサスペンスフルな展開と、ときに笑いを、ときに涙を誘う情感豊かな人間描写。静かな感動と日々を生きていくために大切なものを伝えてくれるヒューマンドラマがここに完成した。
- マリコ:関めぐみ
- アスカ:市川由衣
- スグル:藤原薫
- 松浦:角田信朗
- 榎木田:大迫一平
- ソラ/トワ(二役):荒川ちか
- 学生時代のマリコ:柴田杏花
- 調整医師:吉井怜
- 三平:生島ヒロシ
- 編集長:螢雪次朗
- 移植コーディネイター:津川雅彦
- 監督・脚本・編集:帆根川廣
- プロデューサー:橋口一成
- ラインプロデューサー:鶴賀谷公彦
- 撮影:石井浩一
- 照明:椎原教貴
- 録音:福田伸
- 美術:松本知恵
- 助監督:芹澤康久
- 制作担当:菖蒲正弘
- 監督補:緒方貴臣
- 音楽:松岡政長
- オープニング曲:mama!milk「0」
- 主題歌:androp「March」
- 企画:KOTUZUI EIGA PROJECT/スタジオステバノ
- 製作:ワンワークス
- 配給:KADOKAWA
- 宣伝:太秦