ある中学校で、ひとりの男性教師が激しい暴行を受けた状態で発見された。同時に、その教師が女子生徒のわいせつな盗撮画像をネットで公開していたことも発覚、学校の判断で事件は公にせず処理されることになった。
事件の後始末をすることになった生活主任の理科教師・森(田中大貴)は、暴行を受けた教師の後任として、かつての教え子である青年・谷野(杉山樹志)に声をかける。一度は教職に就きながら若くして退職した過去を持つ谷野は、自分に教師がつとまるのかという不安を感じながらも、森の誘いに教職復帰を決意する。
新たな勤務先となる中学校に赴いた谷野は、さっそく森から教師たちがおこなう作業を手伝うように指示される。それは、体育の授業の間に、誰もいなくなった教室で生徒に秘密でおこなわれる荷物検査だった。
荷物検査をおこなうのは、森と、このクラスの担任である英語教師の片山(坂井貴子)、数学教師の管(桂弘)に谷野を加えた4人。さらに、別の用事で教室に来た美術教師の橋本(宮下純)も加わる。
先輩教師たちを手伝う谷野は、このクラスに「万田」という女子生徒がいることを知る。全科目成績トップの優等生で、芸能界にスカウトされるほどの容姿だという万田は、一方で「言葉で人を狂わせた」という噂のある生徒でもあった。
やがて荷物検査が進む中で、小さな違和感が少しずつ積み重なっていく。担任の片山は「このクラスにイジメはありません」と断言するが、重なる違和感の断片は確実にある方向を示していた。そしてこのクラスを支配する「怪物」の存在は、教師たちの隠された事実を露わにし、谷野が抱える暗い記憶を呼び覚ましていく……。
狂覗(きょうし)
監督:藤井秀剛
出演:杉山樹志 田中大貴 宮下純 坂井貴子 桂弘 ほか
2017年7月22日(土)より アップリンク渋谷にて 8月19日(土)より別府ブルーバードにて ロードショー
カラー/デジタル/シネスコ/ステレオ/81分
イジメ、教師によるわいせつ事件、SNSでのトラブル……。中学生が関係するさまざまな事件が絶えない歪な現代。そんな時代へ向けたメッセージを、ホラー・サスペンスの手法を駆使して描く衝撃作、それが『狂覗(きょうし)』だ!
ある中学校で体育の授業中におこなわれる秘密裏の荷物検査。生徒不在の教室で荷物を調べる5人の教師は、やがて中学生の、そして教師たち自身の闇に触れることになる……。
この衝撃先を生み出したのは藤井秀剛。アメリカで映画を学び、帰国後に『生地獄』でデビューして以降、一貫してホラー・サスペンスのジャンルで活躍してきた監督だ。劇作家・宮沢章夫の戯曲「14歳の国」を原案とした本作『狂覗(きょうし)』では、卓越した演出技術により、14歳を取り巻く歪みを浮き上がらせてみせる。
そして、主人公の若き教師・谷野を演じる杉山樹志はじめ、メインキャストをつとめるのは藤井率いる制作チーム“CFA”の俳優たち。CFAは、俳優がスタッフワークもこなすチームであり、本作でも、教師・橋本役の宮下純がミヤ・サヴィーニ名義で特殊メイクと美術を、教師・片山役の坂井貴子がプロデューサーをつとめるなど、キャストがスタッフを兼任。俳優たちは自らの手で演じるための環境を作り上げた上で、個性的なキャラクターを演じきっている。
『狂覗(きょうし)』は、現代社会への真摯な問い掛けと高いエンターテイメント性を両立させた稀有な作品である。秘密裏の荷物検査を通して14歳の“病み”を覗く教師。その教師の“病み”を、観客はスクリーン越しに「覗いていく」ことになる。その視線の果てに観客はなにを見るのか?
- 谷野十:杉山樹志
- 森由紀夫:田中大貴
- 橋本瑞穂:宮下純
- 片山さつ実:坂井貴子
- 管直樹:桂弘
- 野々村龍二:望月智弥
- 稲田友美校長:種村江津子
- 小沢二郎教頭:納本歩
- 辻本きよ実:河野仁美
- 上西譲:宇羅げん
- 丸山真由美:小野原舞子
- 監督・脚本・撮影・編集・製作:藤井秀剛
- 原案:宮沢章夫「14歳の国」(白水社刊)
- 製作総指揮:山口剛
- プロデューサー:藤井秀剛/梅澤由香里
- アソシエイトプロデューサー:坂井貴子
- 特殊メイク・美術:ミヤ・サヴィーニ
- 音楽監督:スヴィアトスラヴ・ペトロフ
- 製作:POP企画
- 共同製作:S-Kill
- 制作プロダクション:CFA