
遥香は平凡な高校生。だが彼女は、初めてのセックスで愛する恋人を殺してしまった……。
初披露となったゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で北海道知事賞を受賞したのをはじめ、各地の映画祭などで上映され好評を得てきた『歯まん』。「肉体の一部が変形し相手の局部を食いちぎってしまう」という衝撃的な設定が話題のダークファンタジーが、初披露より約4年を経てついに一般公開を迎える。
監督はこれが初監督となる岡部哲也。中村義洋、豊島圭介、三池崇史、石井裕也、山下敦弘ら多くの監督の作品で助監督として参加し、2019年公開の篠原哲雄監督作品『君から目が離せない ~Eyes On You~』では助監督と共同脚本をつとめている。『歯まん』では自ら脚本も手がけ、真摯に「生と性と愛」という題材に向き合ってみせた。
そして主演をつとめたのは、現在は前枝野乃加(まえだ・ののか)に改名し舞台を中心に活躍している馬場野々香(ばば・ののか)。映画初主演となる『歯まん』では、愛した人を殺してしまうという主人公・遥香の苦悩を全身で体現。血まみれとなるシーンなどにも果敢に挑み、その熱演で『歯まん』という作品を見事に成立させた。
さらに、映画や舞台など幅広く活躍する小島祐輔、映画監督としての顔も持つ水井真希、数多くの作品に出演する中村無何有(なかむら・むかう)、名バイプレイヤーとしての評価を高める宇野祥平らが共演している。
奇想天外な設定のもとでストーリーが展開する『歯まん』だが、劇中で遥香が抱えるのと同じような苦悩は、現実の中にも存在するのではないだろうか? 我々は、どこまで人を愛せるのか。『歯まん』は、愛することの意味を問う。

高校生の瀬戸口遥香(馬場野々香)は、恋人とふたりでラブホテルの一室にいた。大切な人を相手にした遥香にとっての初体験。幸せなはずのその時間は、行為の最中に恋人が股間から大量の血を吹き出して命を落とすという想像を絶する事態を迎える。遥香の身体の一部に変化が起こり、恋人の局部を「噛みちぎって」しまったのだ……。
血まみれになり呆然とする遥香はその場を逃げ出してしまい、恋人の死は猟奇的な殺人事件として扱われた。ニュースが事件を報じる中、遥香は家族にも友人にもなにも話せず、ひとり秘密を抱える。
初めてのセックスで恋人を殺したという罪の意識や、死んだ恋人の幻影、周囲に広がっていく噂が遥香を苦しめ、遥香は学校に行くのも怖くなってしまう。精神的に不安定となる遥香に優しく声をかけてくれたのは、偶然に出会った裕介(小島祐輔)という男性だった。
やがて遥香は裕介と再会し、遥香と裕介の距離は少しずつ近づいていく。孤独になった遥香にとって、裕介と一緒にいる時間だけが安らげる時間となっていく。一方で遥香は裕介の姉で水商売をしているみどり(水井真希)とも知り合いになり、みどりを通じて裕介たちが背負っているものを知っていく。
いつしか、かけがえのない存在として裕介に惹かれていく遥香。だが、もし自分が裕介と結ばれることになれば裕介は死んでしまう。裕介への想いが遥香自身を苦しめていく……。
遥香は、自らを縛る忌まわしい運命から解き放たれることができるのか?