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『映画監督って何だ!』作品情報
『映画監督って何だ!』完成披露記者会見&パーティーの模様
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『映画監督って何だ!』完成披露記者会見レポート・1
 日本映画監督協会設立の日からちょうど70年の2月26日に完成披露記者会見と試写会がおこなわれた『映画監督って何だ!』。60人の映画監督がスタッフとして、90人の映画監督が俳優として参加したこの作品は、時代劇パートで小栗康平監督が浪人を、阪本順治監督が花魁を演じているなど、思わず笑いのこぼれる場面もあります。
 しかし、この作品は決して楽しいだけの記念映画ではありません。再現ドラマ、時代劇、インタビュー、劇中劇などなど、様々な手法を用いながら「映画監督の著作権」の問題について真正面から問いかけているのです。
 果たして『映画監督って何だ!』って何なんだ? それを理解するためには、当日の会見で監督たちが話した内容を知っていただくのが何よりでしょう。ということで、会見に出席した全監督のコメントをここに紹介させていただきます!


 会見は梶間俊一監督の司会進行によっておこなわれました。まず、出席した監督を代表してあいさつしたのは現・協会理事長である崔洋一監督。そして今回の記念事業実行委員長であり、記念映画のプロデューサーもつとめた高橋伴明監督、脚本を書きメガホンをとった伊藤俊也監督が、それぞれ『映画監督って何だ!』製作の経緯を説明しました。

日本映画監督協会理事長:崔洋一監督
本日はようこそお越しくださいましてありがとうございます。70周年を迎えまして、記念事業として監督自身が監督自身の企画により、監督自身の手によって映画を作ったということで、ほんとに私たちにとって快挙であります。その製作のご披露の記者会見を催させていただきました。
 さらりと申し上げれば、70年というのは大変な時間だったと思います。70年前、昭和11年の2月26日の未明に東西から代表的な監督5人が集まりまして、(協会の)設立、創立となりました。そして70年という年月が過ぎたわけであります。その中で、監督というのは、今日は機嫌がいいですけど、常にニコニコして機嫌がいいばかりではありません。時として困難なこと、辛いことを自ら踏み越えて、自らが映画作りの軸になる、つまり著作者、著作権者であろうとする、映画作りの中心にいる存在であります。そういう困難なことにに立ち向かう強面の部分と、こうしてみなさんにお会いできる喜びを表現できる、柔軟で楽天的な集団でございます。よく、監督協会というのは非常に閉鎖的で秘密集団じゃないかと言われることがございますけど、580人もいてなんらかの秘密というものはございません(笑)。580余名の主体性、自分が中心になって映画を作るんだ、映像作品を世の中に出していくんだ、そういう者たちの組合でございます。その辺のところを深くご理解していただければ大変ありがたいと思います。
70周年記念事業実行委員長・『映画監督って何だ!』プロデューサー:高橋伴明監督
監督協会の周年事業は50周年から始まりました。私は50周年のときも60周年のときも協会員でありながら一切そうした記念事業に汗を流すこともなく傍観していたわけですけど、今回、そういう怠け者を働かせろということになりまして、崔理事長の陰謀等ありまして実行委員長にさせられました。実行委員長を受けるなら、50周年、60周年と重ねてきた70周年であるならば、なんか協会らしいことをしたいなあと思っていたんですけれども、準備委員会の中で伊藤(俊也)監督から「協会で著作権に関する映画を作るべきなんじゃないか。作れないような協会はダメだよ」という意見が出されました。私はそうした映画が協会で作れるのであれば絶対に参加したいし、必ず実現したいと思いまして、委員長のみならず、映画に直接関われるプロデューサーにも手を挙げさせていただきました。
 日本はもとより、世界を見ても、監督が企画し、脚本を書き、出演もし、スタッフにもなるというのはまずありえない。いわば難事業であるということは当然予想しましたので、ひょっとしたらこの映画は完成しないかもしれないと。そのために、完成しなかったら「なぜ完成しなかったのか」ということを記録したらそれはそれでひとつの作品になるんじゃないかと思いまして、メイキング班もキチッと立てました。ほんとに協会員の熱い想いがひとつになりまして、総勢150人以上の監督がスタッフ、キャストとしてこの映画に参加してくれました。
 ひょっとしたら、監督に著作権がなかったということをご存じなかった方がいらっしゃるかもしれないと思うんですね。ぜひこの映画を通して、監督に著作権がないということをどう思われるのかと、逆に私たちは知りたいです。時間が許される方はぜひこの映画も観ていただきまして、映画の著作権問題について考えていただければ幸いに存じます。
『映画監督って何だ!』脚本・監督:伊藤俊也監督
今回の映画は『映画監督って何だ!』と、意味深なタイトルでみなさんの気を引いていると思いますけど、もうすでに明らかなように、著作権奪還のためのプロパガンダ映画であります。ですから、これをみなさんがどのように受け止め、伝えていただくかということに今後の我々の運動もかかっておりますので、こちらが一段高いところに立っておりますが、むしろ逆にみなさんをこちらに上げて、我々が質問したいという心境でございます。ぜひご支援のほどをよろしくお願いしたいと思います。
 もともと著作権法というのは、著作者を保護する法律なんですね。これは当然のことでして、すべての著作者が著作権者であって、それは保護されていると。それが著作権法であると言い切りたいところなんですけど、ただひとつ例外がある。これが映画です。映画に限ってだけは、著作者という規定とは別に、その著作者たちが製作に参加する約束をすると、その段階で映画の著作権は製作者に帰属するということになっています。これは法律の一貫性からしても大変な矛盾です。だから常に所轄官庁である文化庁や著作権課はノドに小骨といいますか、もっとガッチリした鯛の骨でもかかっているような気持ちでいるはずなんですね。だからしきりに我々監督協会と製作者を個別に会わせて、なんとかこの行方を穏便に解決しようとしている。しかし、これはもういつまで話し合ったとしても平行線です。だから、これまでは我々の主張を狭い範囲に限ってしてまいりましたけれども、もはやその段階ではないと。広く世間に問おうということになりまして、今回の映画ができたわけでございます。
 この映画によって、監督に著作権がないということに驚かれる方も多いと思いますし、我々としてはそういう声を我々の支援者の声として大事にしながら、今後も運動を進めていきたいと思っているわけです。これは日本の文化水準の問題でもあると思います。日本が世界に向けた文化として、いまや欠くべからずものになった映画、その映画の著作権を著作者に戻すというところから日本の水準は引き上げられると思いますし、また、日本が貴重なものとしてきた「恥を知る文化」というのをですね、恥をひとつ解決することによって取り戻せるのではないかと思っております。
 私としては映画は観ていただいてからの話。監督としてはそれしかありませんので、3人目としてですね、映画監督協会の一員として常日頃考えていることを述べさせていただきました。

 3人に続いては、山本晋也監督、小栗康平監督はじめ、俳優として映画に参加した監督陣がひとりずつあいさつ。梶間監督曰く「この映画で最もセリフが多く、演技をみんなが絶賛している」という小水一男監督は映画の役そのままの口調であいさつし、会場を沸かせました。

元内務省警保局・小林尋次役:山本晋也監督
今(3人の監督が)言ったようにですね、これは映画監督の誇り、プライドの問題だと思うんですね。私は初めて知ったんですが、戦前、内務省の警保局というところに小林尋次さんという方がいてですね、帝国議会で昭和6年ごろに著作権について、映画監督が著作権を持つのだということを明解に語られているんです。ただ、質問を受けなかったので答弁しなかったということで議事録に残らなかったというのが、ことの始まりなんです。戦前にそういうグローバルな感覚で著作権があるんだってことをおっしゃっていた方がいらしたということです。その役をたまたま私がやることになりました。冥界から戻ってきて小泉今日子さんと話をするという、大変巧みなドラマ作りを伊藤俊也監督に作っていただきました。こういう江戸弁調で喋っている人間が難しい著作権のことを言うわけですけど、作品をご覧になればもう明解にわかります。それが著作権法に反映されていれば私たちのプライドはこの上なく誇らしいものであったんですけど、残念ながら新著作権法ではそれが反映されなかったという、その推移が出てくるわけです。
 いずれにしても、戦前に帝国議会で小林尋次さんが一言、質問に答えていてくれればという、その方の役を演じさせてもらって私は大変光栄に思っているわけでございます。普段の山本らしからぬ形で必死に演じましたので、講評は存分にしていただきたいなと。一見の価値のある作品に仕上がっていますので、監督協会のプライドをちょっと感じながらご覧いただければと思います。
浪人・管徳右衛門役:小栗康平監督
時代劇のパートで、まあパロディですから、冗談まがいに顔を出せばいいのかなという風に、半分照れを隠しながらヘラヘラしていたわけですが、だんだんと事の成り行きが見えてまいりまして、えらいことになったなあと。こうまで真面目に取り組んでいたのかというような、改めてちょっと身の置き所がないというのが実感でございます。恥をかきました(笑)。
参議院文教委員長・楠正俊役:恩地日出夫監督
たいした役じゃなくてちょこっと出ただけです。著作権委員長というのをこの10年やらせてもらっていまして、この映画ができたことで、ちょっと停滞気味の監督協会の著作権奪還運動が新しい展開を見せてくれることを祈っています。
民社党衆議院議員・麻生良方役:神山征二郎監督
伊藤監督が正義の月光仮面みたいな役を配ってくれましたので一生懸命、長回しでしたのでNGを12回ほど出しましたけども(笑)。
民社党参議院議員・松下正寿役:後藤幸一監督
憲法第29条によりますと、財産権はこれを侵してはならないと。偶然同じ著作権法29条は、この本来の権利を奪うことになりはしないだろうか、という、我々協会側の視点に立ったセリフだったので、下手なことは差し置いて、とりあえず元気良くできました。ぜひご覧になってください。
文化庁次官・安達健二役:小水一男監督
(映画のセリフの口調で)ええ、私といたしましては、たくさんの映画監督の前で弁明をする気はさらさらございませんが、30数年前の強固たる五社協定の中で、落としどころとしては間違っていないと、未だに草葉の陰で考えているわけでございます。よろしくお願いします。
衆議院文教委員長・大坪康雄役:千野皓司監督
私は50年ぶりに俳優になったんです。実は50年前に文学座の研究生で俳優を目指していたんですが、セリフが下手で俳優をあきらめて、それで映画界に移ったんです。セリフがある役をやられたら困るなあと思っていたんですが、セリフがなくてほっとしました。とにかく重しのように座っているだけで、パントマイムのようなことをやったというわけです。私にとっては50年ぶりの出演というか俳優に戻って、観るのがドキドキしているところです。
共産党参議院議員・須藤五郎役:青野暉監督
青野でございます。今、小水さんの言葉をみなさんお聴きになったようにですね、私はこの芝居を聴いておりますと大変うまくて憎らしくて憎らしくて腹が立って、それでまあ、須藤さんのセリフ、非常に言いやすく言わせていただきました。どうもありがとうございました。

 このあとも会見はさらに続きました。会見レポート・2をご覧ください!


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