会見は梶間俊一監督の司会進行によっておこなわれました。まず、出席した監督を代表してあいさつしたのは現・協会理事長である崔洋一監督。そして今回の記念事業実行委員長であり、記念映画のプロデューサーもつとめた高橋伴明監督、脚本を書きメガホンをとった伊藤俊也監督が、それぞれ『映画監督って何だ!』製作の経緯を説明しました。
3人に続いては、山本晋也監督、小栗康平監督はじめ、俳優として映画に参加した監督陣がひとりずつあいさつ。梶間監督曰く「この映画で最もセリフが多く、演技をみんなが絶賛している」という小水一男監督は映画の役そのままの口調であいさつし、会場を沸かせました。
元内務省警保局・小林尋次役:山本晋也監督
今(3人の監督が)言ったようにですね、これは映画監督の誇り、プライドの問題だと思うんですね。私は初めて知ったんですが、戦前、内務省の警保局というところに小林尋次さんという方がいてですね、帝国議会で昭和6年ごろに著作権について、映画監督が著作権を持つのだということを明解に語られているんです。ただ、質問を受けなかったので答弁しなかったということで議事録に残らなかったというのが、ことの始まりなんです。戦前にそういうグローバルな感覚で著作権があるんだってことをおっしゃっていた方がいらしたということです。その役をたまたま私がやることになりました。冥界から戻ってきて小泉今日子さんと話をするという、大変巧みなドラマ作りを伊藤俊也監督に作っていただきました。こういう江戸弁調で喋っている人間が難しい著作権のことを言うわけですけど、作品をご覧になればもう明解にわかります。それが著作権法に反映されていれば私たちのプライドはこの上なく誇らしいものであったんですけど、残念ながら新著作権法ではそれが反映されなかったという、その推移が出てくるわけです。
いずれにしても、戦前に帝国議会で小林尋次さんが一言、質問に答えていてくれればという、その方の役を演じさせてもらって私は大変光栄に思っているわけでございます。普段の山本らしからぬ形で必死に演じましたので、講評は存分にしていただきたいなと。一見の価値のある作品に仕上がっていますので、監督協会のプライドをちょっと感じながらご覧いただければと思います。
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浪人・管徳右衛門役:小栗康平監督
時代劇のパートで、まあパロディですから、冗談まがいに顔を出せばいいのかなという風に、半分照れを隠しながらヘラヘラしていたわけですが、だんだんと事の成り行きが見えてまいりまして、えらいことになったなあと。こうまで真面目に取り組んでいたのかというような、改めてちょっと身の置き所がないというのが実感でございます。恥をかきました(笑)。
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参議院文教委員長・楠正俊役:恩地日出夫監督
たいした役じゃなくてちょこっと出ただけです。著作権委員長というのをこの10年やらせてもらっていまして、この映画ができたことで、ちょっと停滞気味の監督協会の著作権奪還運動が新しい展開を見せてくれることを祈っています。
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民社党衆議院議員・麻生良方役:神山征二郎監督
伊藤監督が正義の月光仮面みたいな役を配ってくれましたので一生懸命、長回しでしたのでNGを12回ほど出しましたけども(笑)。
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民社党参議院議員・松下正寿役:後藤幸一監督
憲法第29条によりますと、財産権はこれを侵してはならないと。偶然同じ著作権法29条は、この本来の権利を奪うことになりはしないだろうか、という、我々協会側の視点に立ったセリフだったので、下手なことは差し置いて、とりあえず元気良くできました。ぜひご覧になってください。
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文化庁次官・安達健二役:小水一男監督
(映画のセリフの口調で)ええ、私といたしましては、たくさんの映画監督の前で弁明をする気はさらさらございませんが、30数年前の強固たる五社協定の中で、落としどころとしては間違っていないと、未だに草葉の陰で考えているわけでございます。よろしくお願いします。
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衆議院文教委員長・大坪康雄役:千野皓司監督
私は50年ぶりに俳優になったんです。実は50年前に文学座の研究生で俳優を目指していたんですが、セリフが下手で俳優をあきらめて、それで映画界に移ったんです。セリフがある役をやられたら困るなあと思っていたんですが、セリフがなくてほっとしました。とにかく重しのように座っているだけで、パントマイムのようなことをやったというわけです。私にとっては50年ぶりの出演というか俳優に戻って、観るのがドキドキしているところです。
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共産党参議院議員・須藤五郎役:青野暉監督
青野でございます。今、小水さんの言葉をみなさんお聴きになったようにですね、私はこの芝居を聴いておりますと大変うまくて憎らしくて憎らしくて腹が立って、それでまあ、須藤さんのセリフ、非常に言いやすく言わせていただきました。どうもありがとうございました。
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