舞台あいさつをおこなった松木大輔さん、星野恵亮さん、及川莉乃さん、水野小論(みずの・こりん)さん、遠藤隆太さん、坂下雄一郎監督、中西美帆さん、川瀬絵梨さん、松本行央さん、嘉瀬興一郎さん、青柳信孝さん、武田祐一さん(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します
新鋭・坂下雄一郎監督がメガホンをとり、注目の女優・中西美帆さんが主演をつとめた『東京ウィンドオーケストラ』(1月21日東京公開)の完成披露試写会が1月12日にスペース汐留FSで開催され、中西さんはじめ11人の出演者と坂下監督が舞台あいさつをおこないました。
『東京ウィンドオーケストラ』は、世界遺産の島・屋久島を舞台にしたハートウォーミングコメディ。よく似た名前の有名オーケストラと間違えられて島に招かれてしまったアマチュア楽団と、勘違いに気づきつつなんとかごまかそうとする町役場職員が巻き起こす騒動がコミカルに描かれていきます。
東京藝術大学大学院の修了作品として監督した『神奈川芸術大学映像学科研究室』が好評を得て一般公開され、満を持して商業長編デビューを果たした坂下雄一郎監督は「一昨年の夏くらいに撮影してようやくできて、こういうふうに上映することができて本当に嬉しいです」とあいさつ。
主人公の町役場職員・樋口詩織を演じた中西美帆さんは今回が映画初主演。中西さん自身が「淡々とした毎日の中で苛立ちとかもどかしさを抱えながら抜け出せない日々を過ごしている、私と同世代の女性の役でした。とはいえ、上司と不倫をしている面なんかもあって、そういう意味でリアリティを感じさせる役だったかなと思います」と語る樋口は、監督の意向で「笑わないヒロイン」となっており、中西さんは「私は普段とても笑い上戸でして、映画の中では一切笑わないのは“笑えないストレス”みたいなものもありましたし、セリフも“あまり感情を入れないで棒読みで”と監督に言われていたので、感情を入れずにセリフを言うのは大変だなと感じました。でも、普段の自分とはある意味かけ離れたキャラクターを演じることができて、役者として演じる楽しみというか面白さを実感した現場でした」と振り返りました。
『東京ウィンドオーケストラ』は、楽団員役などで撮影前のワークショップを経たオーディションで選ばれた俳優陣が出演しており、樋口の不倫相手でもある上司・田辺昌平を演じた松木大輔さんによると「みんながワークショップで即興でやったのを監督がちょっと台本に反映してくれているんですよ。みんながワークショップで作り上げていったものが(完成した映画に)反映されているので」ということで、ワークショップは『東京ウィンドオーケストラ』の内容にも影響を与えていた様子。
また、坂下監督は「企画を作っているときに、なるべく自分とか出てもらう人に重なる境遇の話がいいと思って、まだプロになりきっているわけでもないお話がいいなと。そんな(映画出演経験の少ない)人たちが映画に出るということで、劇中の登場人物も“経験の浅い人たちが表舞台に出てしまう”という話ができればいいなと」と、ワークショップが映画のストーリーの着想のひとつにもなっていることを明かしました。
撮影はほぼ全編が映画の舞台である屋久島でのロケでおこなわれており、楽団の指揮者・杉崎耕史を演じた星野恵亮さんは「楽しかったです。屋久島は1ヶ月のうち35日が雨と言われているだけあって、2週間の撮影のうち前半は雨だらけだったんですけど、逆に最後に晴ればっかりのときは照りがすごくて、監督が(日焼けで)真っ赤になっていたのをすごく覚えています(笑)」と、撮影中の様子を紹介。
そして中田健吾役の遠藤隆太さんは「監督は屋久島にいるときもふた言目には“早く家に帰りたい”って(笑)」、黒井明役の青柳信孝さんは「監督はほんとに笑顔なかったですね。出会ってからオーディションの期間も撮影に入ってからも、一度だけしか笑顔を見たことない(笑)」と、楽団員役のキャストからは監督の独特のキャラクターに関する証言が次々と。坂下監督は笑顔の件については「監督があんまり笑っているとはしゃいでるみたいで印象悪いかなと思って(笑)。みなさん演技中だから見えなかっただけで、けっこう普通に笑ってますよ」と弁解しましたが、中西さんが「現場で(監督と)コミュニケーションしたくても一言くらいしか返ってこない感じで、打ち上げのときに思い切って“監督、私のこと嫌いですか?”って訊いたんですね。そしたら返ってきた言葉が“ぼくは人間が嫌いなので”」というエピソードを披露すると客席も壇上も大笑い。中西さんは「でも、できあがった作品を観たときに、これは人間嫌いな人が撮った作品ではないなと思って安心しました」とフォローも忘れませんでした。
映画初主演を経て今後のさらなる活躍が期待される中西さんは「私は増村保造監督と若尾文子さんの作品がとても好きなので、若尾文子さんみたいな女優さんになりたいなとずっと思っているんですけど、役者にとって役というのは与えられるもので、日々の姿勢というか生き方、考え方を第三者の方に見ていただいてキャスティングされるものだと思うので、これからも日々粛々と俳優としての道を精進していきたいなと思っております」と俳優としての抱負を語るとともに「(映画公開まで)長いようであっという間の短い時間だったんですけど、私たちキャストはほんとにこの作品を愛しておりまして、知り合いのお店にポスターを貼らせていただいたり、みんなが協力して宣伝活動をしてまいりまして、協力していただいた方には感謝しかありません。今日映画をご覧いただいた方は、ぜひご家族やご友人にもお勧めしていただけたら幸せです」と応援を呼びかけて舞台あいさつを締めくくりました。
これまで『滝を見にいく』『恋人たち』と話題となった日本映画を送り出してきた松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画施策プロジェクトの第3弾となる『東京ウィンドオーケストラ』は、この日の舞台あいさつ登壇者のほか、小市慢太郎さんらが出演。鹿児島ガーデンシネマズで1月14日(土)より先行公開、1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開されます(配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ)。