日本と中国の合作によるサイコサスペンス『心魔師』（しんまし／10月27日公開）の完成披露試写会が10月11日に渋谷ユーロライブで開催され、主演の生津徹さんと真崎かれんさん、共演の柳憂怜さん、今野恭成監督らが舞台あいさつをおこないました。

　『心魔師』は、血液凝固を防ぐ薬を用いた猟奇殺人事件が起こった街が舞台。事件を捜査する不眠症の刑事・今村と、精神科の療養所に入院する少女・夕子のふたりを中心に、精神科医や入院患者たちが関わっていく迷宮のようなストーリーが展開されていきます。

　刑事・今村を演じた生津徹さんはさまざまな映画やドラマ、舞台で活躍していますが劇場公開作で主演をつとめるのは『心魔師』が初めてで「ほんとに最初は驚きましたね。日中のスタッフの方たちにこういう機会をいただけたということで、ほんとに感謝しました。やるからには、映画が完成してみなさまのもとに届くまでこの身を尽くそうと覚悟を決めました」と主演をつとめた心境をコメント。
　オーディションでヒロインの入院患者・夕子役に選ばれた真崎かれんさんも映画初主演。複雑な事情を持つ設定の夕子を演じたいという想いが強かったためオーディションの数日前から役の設定について調べたり考えたりしてオーディションに臨んだそうで「オーディションに行ったときは最初から泣きそうな感じになっていて、お芝居（のテスト）が終わったあとも、監督の“昨日の夜、ご飯なに食べました？”とかそういう簡単な質問でも泣きながら答えていて、ヤバいかなって思っていたら“受かりました”って言われたので、安心しました(笑)」とオーディションを振り返りました。

　今村の先輩刑事・田島を演じた柳憂怜さんは、映画初主演の生津さんと真崎さんについて「とてもピュアな感じで一生懸命やられていたというのは、ぼくなんか適当にやって適当に帰るようなそんな人間なんで、心が洗われたというか、やっぱり仕事は一生懸命やらなきゃいけないんだなと勉強させていただきました」と、自分を落とす冗談で客席の笑いを誘いながらふたりの作品への真摯な姿勢を紹介しました。

　東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域出身の新鋭・今野恭成監督は「音楽の沈（佳女）さんは大学院の卒業制作のときに音楽をつけていただいていたり、編集の張丹妮という女性も同じ大学院の同期であったりとか、スタッフに関してはいままでやって来た人が多かったりしたので、柳さんも実は大学院の実習のときに出てもらったり（※オムニバス『リスナー』の一編として公開された「ブエルボ アル スール」）、生津さんも一昨年撮ったコメディ（※中編『レンコーンの夜』）でご一緒したりしたので、すごく安心感のある現場でした」と、以前の作品で組んだスタッフやキャストにも恵まれた現場についてコメント。
　舞台あいさつには音楽を担当した沈佳女（しん・かにょ）さんも急遽参加し、沈さんは最初に『心魔師』のために作った音楽に今野監督から「怖くないですね」と意見が出されたことを明かし「音の厚みとか盛り上がりよりも不気味さとか怖さを優先したいと（監督に）言われました。教えいただいてありがたいですね」と話し、今野監督について「とても音楽のセンスを持っている監督さんと思います。映画の画面に対しての音楽の把握はとても素晴らしいです」と評しました。

　また、日本と中国のスタッフの混成だった現場について、生津さんと真崎さんは「言葉の壁というのはありましたけど、話さなければいけないところはバイリンガルの人が何人かいたので特に問題はなかったと思います。いろいろコミュニケーション取ろうと思うんですけど通じないのはしょうがないなって感じなので、でも歩み寄ろうしてくれる気持ちがすごく励みになったのは覚えています」（生津さん）、「私はカメラがすごく好きで、現場に一眼を持って行ってたんですけど、中国のスタッフさんもカメラを持っていて、お互い写真を撮りあっていました。言葉はわからないので、ジェスチャーとかカメラで通じあっていました」（真崎さん）と、それぞれ印象を語りました。

　今野監督は「厚みのある役者層というか、個性のある役者さんたちがみなさん出ていただいて、それぞれにちゃんとした役割を持っているというストーリーなので、ひとりひとりの顔をよく観ていただきたいなと思います」、生津さんは「怖いだけの映画ではないので、いろいろなところをみなさんなりに楽しんでいただけたらなと思っています」、真崎さんは「たぶん１回観ただけでは謎が残ったままだったり、もっと掘り下げて観たくなるような映画だと思うので“どういうことだったのかな？”と思ったら、27日から公開なので、またぜひ足を運んでいただけると嬉しいです」と、それぞれ映画の見どころをアピール。
　そして登壇者の中で最も映画経験の豊富な柳さんは「ネタバレとかの話はでているんですけど別にそれだけの映画じゃないですし、むしろそういうことを気にせずに、自分で観たまま、感じたまま楽しんでいただければいいかなと思います。真崎さんがおっしゃったように、もう１回観たいと思えるような映画にもなっていると思うので、27日より（東京公開が）始まって、そこから全国に広がっていく予定なので、みなさんのお力でこの映画を育ててやってください」と呼び掛けて舞台あいさつを締めくくりました。

　かつてのサイコサスペンスやサイコホラーの名作を思わせるような雰囲気を漂わせ、緊張感溢れる映像の中で今村と夕子のドラマを描き出していく『心魔師』は、10月27日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開されます（配給：アルタミラピクチャーズ　配給協力：トラヴィス）。