舞台あいさつをおこなった髙石あかりさん、小中和哉監督、上村侑さん、福澤希空(ふくざわ・のあ)さん(WATWING)、桑山隆太さん(WATWING)(左より)
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高校生の8ミリ映画作りを描いた小中和哉監督の自伝的映画『Single8』が3月18日に東京・渋谷のユーロスペースで初日を迎え、主演の上村侑さんと共演の髙石あかりさん、福澤希空さん、桑山隆太さん、小中監督が舞台あいさつをおこないました。
『Single8』は、SF・ファンタジー映画の名手である小中和哉監督が、自らの高校生時代の実体験をもとに脚本を執筆した青春グラフィティ。1978年の夏を舞台に、当時日本で公開された『スター・ウォーズ』に衝撃を受けた映画好きの高校3年生・広志が、同級生たちとともに8ミリでの特撮映画作りに挑戦する姿が描かれていきます。
舞台あいさつは初回上映の終了後におこなわれ、小中和哉監督は「これでようやく1本の映画がスタートできたと思っております」とあいさつ。『Single8』は自主映画を経てプロとなった小中監督がずっと抱えていた「映画を作ることは映画を観ること以上に面白いということはぼくが一番よく知っているので、それをお客さんにも感じてもらえる映画を作りたい」という想いを実現させたと、作品が生まれた経緯を説明しました。
小中監督自身の分身といえる主人公・栗田広志を演じた上村侑さんは、役作りする上で「現場で一番近いところに見本がいるから、めちゃくちゃやりやすかったですね」と、現場の小中監督が参考になったと話しました。
また『Single8』はあらかじめカット割や俳優の動きをしっかり決めるのではなく、複数のカメラで俳優を追いかけ「どう撮られるかは意識しないで自由にやってねと」(小中監督談)いう、上村さん曰く「わりとドキュメンタリータッチ」で多くのシーンが撮影されており、上村さんは「アドリブにならざるを得ない瞬間とかもけっこうあって、そのときに役者同士の掛け合いみたいなものって大事だったりして、そういうのがわりとうまいことできたなと」と、撮影を振り返りました。
広志がひそかに想いを寄せる同級生で広志たちの映画に出演することになるヒロイン・山下夏美を演じた髙石あかりさんは、台本を読んだ時点と撮影に入って監督とも話をしてからでは夏美のキャラクターについて感じるものが変わったそうで「思ったより小悪魔なんだなとか、きっとなにか経験があったのかなとか(笑)、そういうのを感じながら演じさせていただきました」と、夏美のキャラクターについてコメント。同時に夏美は「みんなの中心にいるような芯のしっかりした女の子」でもあるため、広志に映画出演を依頼されても「戸惑いつつ、でもやると決めたらやるしかないから」という「一本の筋を通す女の子」の一途さも意識していたと話しました。
広志の親友で一緒に映画作りを始める小沢喜男を演じた福澤希空さんと、映画作りに参加する映画マニアの同級生・佐々木剛を演じた桑山隆太さんは、ダンス&ボーカルグループ・WATWING(ワトウィン)のメンバーとして活動しておりともに映画は初出演。
福澤さんは、役にはすんなり入れたものの、初体験のアフレコが「すごく難しくて、映像とタイミングを合わせなくてはいけなくて」と、初の映画での苦労を挙げ、楽しかったシーンとしては喜男が広志と学校の屋上にいるシーンを挙げて「学校の屋上って滅多に行けないなって思って、屋上に行ったときのワクワク感がすごかったです」。
桑山さんは「けっこう佐々木と似ている部分が多くて、表はクールだったりとかもしていたので、自分に寄せて役作りをすることはできたかな」と振り返り、印象的なシーンとしてやはり屋上で映画の打ち合わせをするシーンを挙げました。
小中監督は、撮影前に福澤さんと桑山さんと面談をして「本人のイメージと役のイメージがピタッと合ったので(キャラクターを)振り分けた」そうで、福澤さんと桑山さんが揃って役にスムーズに入れたと話しているのは「その狙いが当たったのかな」と感想を。
小中監督はさらに、桑山さんが演じた佐々木剛は小中監督の高校時代の映画研究部の同期で現在は俳優・映画監督として活躍する利重剛(本名・笹平剛)さんがモデルで「それまでは仲間内で、別に映画のことをどうこう言う詳しいやつらじゃなくて、みんなをかき集めてとにかく作ってきたのが、初めて映画論を語る友達が現れるというポジション」の役だと話しました。
劇中には広志たちが文化祭での映画作りを提案してクラスでプレゼンをするシーンがあり、上村さんはそのシーンが長々と話すシーンのため「回数を重ねるごとにセリフがグッチャグチャになっていたような気がしますね(笑)」と話し、福澤さんと桑山さんも「全然違うこと言ってたりしていたよね」と同意。小中監督は「その分、勢いが付いてきたかなって」と、台本通りにセリフを言うことより勢いを重視したと話しました。
その話を受けて髙石さんは、広志と夏美が視線を合わせながらすれ違うシーンで、上村さんの話すセリフが台本と違っていたため「私が笑ってしまったのが、(完成した作品に)使われています」という、上村さんら共演者や小中監督も知らなかった事実を告白。「(現場で)OKって出て、やってしまったなあ……って」という髙石さんに上村さんは「それは俺のせいやわ(笑)」。小中監督は「観るところが増えましたね」と、そのシーンも見どころになってるとフォローしました。
そして『Single8』が映画の熱中する高校生たちの物語であることにちなんで、それぞれが現在熱中していることが質問されました。
上村さんの答えは「筋トレ」。自宅に懸垂台や腹筋台も置いてジムのようにしているそうで「ムキムキになりすぎたら(役のイメージに合わなくなり)怒られるんじゃないかってビクビクしながら筋トレしています」と熱中ぶりをうかがわせました。
髙石さんは「靴下集め」で「地方に行ったら地方の靴下が絶対にぶら下がっていませんか? あれを集めています」と、ちょっと意外な趣味を紹介。
福澤さんは「筋トレ。(上村さんに)合わせたわけじゃなくて」と、たまにジムに行き「そのときは熱中しますね」と回答。
続く桑山さんの答えも「ぼくも筋トレなんですよ」。上村さんは「3人でジム行くか?(笑)」と笑い、桑山さんも「家で腹筋とか腕立て伏せをしていますね、だから3人でね、ジムに(笑)」と、キャスト同士の仲の良さをうかがわせました。
仲の良さを感じさせるトークを繰り広げる髙石あかりさん、上村侑さん、福澤希空さん、桑山隆太さん
舞台あいさつは、登壇者それぞれのコメントで締めくくられました。
「たくさんの人にこの映画が今日から届けばいいなと思っているので、ぜひぜひ拡散のほうよろしくお願いします。ほんとにあたたかい映画なので、さっき話した細かい部分だったり、きっとぼくたちの個人的なキャラクターみたいなものが反映されている映画だと思うので、そういう部分も楽しんで観て、感想とかをSNSだったりに載っけていただけたら嬉しいなと思います。本日はどうもありがとうございました」(上村侑さん)
「今日、観ていただいたということで、みなさんの感想がすごく楽しみで、どんな気持ちになったんだろうとか、昔のことを思い出されたのかなとか、そういうのがいま、すごく気になっているんですけど、もしよかったら #Single8 でぜひつぶやいていただけたら、私たちもチェックしますので、よろしくお願いします。今日はありがとうございました」(髙石あかりさん)
「朝8時に起きたんですか、みなさん?(※初回の上映は午前9時過ぎスタートでした) (客席の雰囲気を見て)もっと早いんですね、それは素晴らしいので、このあとまたなにかある人はがんばってほしいですし、すごい休んでほしいな、ゆっくりしてほしいなって思います。本日はありがとうございました」(福澤希空さん)
「1回だけではなく何回も観てほしいなと思うので、これから何回もたくさん観ていただけたらなと思います。あと、この『Single8』ではキャラクターたちが映画作りに熱中している物語だと思うんですけど、みなさんもなにか熱中しいているものとか真剣に取り組んでいることとかがあったら、それを諦めずに挑戦してほしいなというふうに思うので、これからぼくたちも一緒に、映画だったりとか、個人のものでね、(上村さんが「ジム行こうね」)ジムとか(笑)、諦めずにがんばっていきたいなと思います。本日はありがとうございました」(桑山隆太さん)
「『Single8』は、映画作りを、準備から、撮影から、仕上げから、そして上映までを描きました。これはぼくが自主映画時代に、お客さんに観てもらって上映会の反応があって、今回のはどうだったのかなと、そして次はこういうものを作ろうと、そういうのがひとつのサイクルだったんですよね。なので、映画作りって、ほんとに上映して観てもらうまでが含めて映画作りだと思っております。その最後の段階、今日お客さまに観ていただけて、そしていろいろな声が聞けるというのが、ぼくら作り手側のこれから次の作品への大きな力になりますので、ぜひ今日観ていただいた感想をいろいろなところでお聞かせいただけたらありがたいです。そして、またこの上映を支えていただけますよう、みなさまよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました」(小中和哉監督)
舞台あいさつ登壇者のほか、川久保拓司さん、北岡龍貴さん、ダンス&ボーカルユニット・lolの佐藤友祐さん、有森也実さんら、小中監督ゆかりのキャストが出演、小中監督と同時期に自主映画界で活躍した今関あきよし監督もスタッフとして参加し、普遍的な“もの作り”の楽しさを伝える作品となっている『Single8』は3月18日土曜日より東京・渋谷のユーロスペースほか全国順次公開。ユーロスペースでは、初日以降も小中監督とゲストによるトークイベントがおこなわれます。