滝藤賢一さん主演で被災者と非被災者の分断を描いた中編『笑え』など、太田真博監督の初期作品3本が「太田真博監督初期作品集」として東京のシネマハウス大塚で5月25日に上映されることが発表されました。
新進気鋭の監督として注目を集めつつ2011年に不正アクセス禁止法違反などの容疑による逮捕を経験し、その自身の経験に着想を得た長編『エス』で2024年1月に長編劇場公開デビューを果たした太田真博監督。
「太田真博監督初期作品集」では、2006年に映画制作を始めた太田監督が2011年以前に監督し、映画祭などで上映されてきた自主映画3作品を1日限定で上映します。
上映作品のひとつ『笑え』(2008年)は、福井映画祭2008でグランプリを受賞し劇場上映も果たした太田監督の代表的作品。
阪神・淡路大震災を題材とした演劇を上演する俳優たちが雑魚寝する部屋を舞台にした一室劇の中編で、震災の被災経験を持つ座長と被災経験を持たない6人の俳優が一晩中モメまくる姿が描かれていきます。
主演をつとめているのは、現在テレビドラマや映画で人気の滝藤賢一さん。滝藤さんが演じる役の名前は「オオタ」で、太田監督は自身をモデルにしたというこの役について「どんな人とでも一瞬だったらわかり合えるんじゃないかと。当時も今もおそらく僕が人間関係に持っている唯一の希望がそれなんです。オオタの言動の裏にもそういうものがあったのではないかと想像します」とコメントしており、ひとつの部屋の中でモメる俳優たちの姿を通して、社会のあちこちに見られる分断を象徴したような作品となっています。
『ドリブラー』(2006年)は太田監督の処女作で、やはり滝藤賢一さん主演の中編。偶然に出会い一緒に生活を始める男女の姿が描かれていきます。
上映作のもう1本『LADY GO』(2009年)は、山形国際ムービーフェスティバル2010など複数の映画祭でグランプリを受賞した短編。亡くなった劇作家について劇団員やスタッフたちがそれぞれの想いを吐露していく内容で、不在の人物について周囲の人々が語るという構成は、のちの『エス』にも通じているかもしれません。
「太田真博監督初期作品種」は、東京のシネマハウス大塚で5月25日土曜日の14時30分よりスタート。入場料は無料で、上映後には太田監督のトークもおこなわれます。