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『トワイライトシンドローム デッドゴーランド』安里麻里監督・荒井萌さんインタビュー

柳明菜監督・柳裕美さん写真この夏「トワイライトシンドローム」の恐怖が日本を襲う! 人気ホラーアドベンチャーゲーム「トワイライトシンドローム」の最新作がニンテンドーDS用ソフトとして発売されるのにあわせ、2本のオリジナル劇場用映画が公開されます。
 その1本『トワイライトシンドローム デッドゴーランド』は、遊園地を舞台にしたノンストップ・アクションホラー。
 携帯ゲームを手に遊園地に集まった7人の若者。新作ゲームのイベントにやって来た7人だったが、そこで待ち受けていたのはコンピューターゲームではなく、命を賭けておこなわれる体験型ゲームだった! このゲームをクリアできるのはひとりだけ。果たして、殺人ゲームに挑戦することになった7人の運命は?
 恐怖のゲームに挑む主人公・メイを演じるのは、ドラマやCM、モデルとして活躍する13歳の荒井萌さん。そしてメガホンをとったのは『独立少女紅蓮隊』など、アクション演出で定評のある安里麻里監督。
 注目の美少女と異色の女性監督の組み合わせは、どんな作品を生み出したのか? 映画の内容からは意外なほど明るくパワフルなおふたりに、たっぷりと語っていただきました。

(写真左:荒井萌さん・写真右:安里麻里監督)

安里麻里(あさと・まり)監督プロフィール

1976年沖縄県出身。横浜国立大学在学中に映画美学校に一期生として入学。同学校卒業後、塩田明彦監督や高橋洋監督の作品で助監督をつとめる。2003年にオムニバス映画『帰ってきた! 刑事まつり』の1本「子連れ刑事 大五郎! あばれ火祭り」を監督。2004年に『独立少女紅蓮隊』で長編デビュー。ほかの作品に『日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場 地獄小僧』(2004年)、テレビシリーズ「怪談 新耳袋」第4シリーズ(2005年)など。助監督をつとめた『ソドムの市』(2004年/高橋洋監督)ではキャストとしても出演。佐々木浩久監督『学校の階段』(2007年)ではアクション監督をつとめた。

荒井萌(あらい・もえ)さんプロフィール

1995年埼玉県出身。2004年に函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞受賞作を映画化した『ノーパンツガールズ』(月川翔監督)、『ノーパンツガールズ外伝』(斉藤玲子監督)でデビュー。2007年放映のTBSドラマ「愛の劇場 愛のうた!」で楓役を演じ注目を集める。ほかの出演作に「新・キッズウォー」(2005年)など。CM出演や、雑誌「ラブベリー」のモデルとしても活躍中。
出演するNHKドラマ「キャットストリート」が2008年8月スタート。映画『誰も守ってくれない』(君塚良一監督)が2009年公開予定。

「B級感を楽しむことに徹して作ろうとした」(安里)

―― おふたりでのインタビューということで、初めて会ったときのお互いの印象から聞かせてください。

荒井:どっちから言います?(笑)

安里:じゃあジャンケン(笑)。(「ジャンケンポン、あいこでしょ、あいこでしょ」とジャンケンをする監督と荒井さん)じゃ、私から(笑)。最初は13歳っていう年齢を聞いて「13歳って中学生じゃん、主役で大丈夫かな」って(笑)。

荒井:あはっ、ヤバイ(笑)。

安里:でも会ってみたら、性格的にはまだ中学生の素直な元気な女の子なんですけど、役者さんとしてはとっても頭がよくって。

安里麻里監督・荒井萌さん写真

安里麻里監督(左)と荒井萌さん(右)。初めてだというふたりでの取材は和やかな雰囲気でした

荒井:頭よくないですよー(笑)。

安里:じゃあ、勘がよくって(笑)。年齢を感じさせない頼りになる役者さんで、現場ではまったく13歳には見えなかったですね。一緒に仕事ができてよかったなって、ほんとに思っています。

荒井:恥ずかしーい(笑)。

―― では、荒井さんからみた監督は?

荒井:一番最初に「優しそうだな」って思いました。私のやったメイは、最初は喋るときに言葉がうまく出ないんです。そういう役はやったことがなかったんですけど、監督がいろいろわかりやすく教えてくれたので、自分でも一生懸命できたかなと思います。

―― 『トワイライトシンドローム デッドゴーランド』はホラージャンルの作品ですが、荒井さんは怖い映画は好きですか?

荒井:えーと、観れません(笑)。でも幽霊がダメなだけなんで、『リアル鬼ごっこ』(2008年/柴田一成監督)とかは観られるんですよ。幽霊やオバケが出てくると無理ですね。映画だけじゃなくて、夏とかテレビでもよくやってるじゃないですか。もう、ひとりでお風呂に行けなくなるし、2階に行けなくなります(笑)。弟がいるんで、弟を連れて「早く! 2階行くよ!」って(笑)。

―― 監督はいままでもホラー系の作品を手がけていますが、今回はどういう怖さを狙っていたのでしょうか?

安里:いま、萌ちゃんも「幽霊が出るのは嫌だ」って言っていましたけど、これまで何本か心霊ホラーみたいなものをやってきたので、今度は幽霊が出てこないホラーをやってみたいなと思ったんです。ホラーという大きなジャンルの中でも、アメリカのB級ホラーみたいに“人はバタバタ死ぬけどちょっと笑える”みたいなものもあるし、そういうホラーもいま撮りどきではないかなと思って、幽霊は出さずに、B級感を楽しむことに徹して作ろうとした映画です。それから、私はホラーだとダリオ・アルジェントとかイタリアの70年代のホラーが好きですし、ホラー以外なら三隅研次とかアクション系の作品が大好きなんです。自分の本質的なところでそういう作品の影響を受けているので『デッドゴーランド』にもそういう影響は出ていると思います。

―― 荒井さんは脚本を読んだときどう思いました?

荒井:自分の役については、引きこもりという設定で、今までやったことのない役だったし、周りにお手本にするようなお友達もいないので、どうすればいいんだろうなっていうのが大きかったです。お話全体については、私は普段台本を読むときは、あんまり一気には読まないんですけど『デッドゴーランド』の台本をいただいたときは「次どうなるんだろう、その次はどうなるんだろう?」って続きが気になって、電車の中でずーっと読んで、すぐ読み終わっちゃったんです。すごい面白いなって思いました。

「自分じゃない人を演じられるのがすごく楽しい」(荒井)

―― 荒井さんの演じたメイは18歳という設定ですけど、年上の役を演じることについては?

荒井:普段でも年上の役が多いのと、映画の中ではっきり18歳ってわかるところがあんまりないから、そんなに気にしてはなかったんです。だけど、高校3年生で引きこもりっていうのは、いろいろな事情があったんだろうなって思ったんで、それをどう出せばいいのかなみたいなことは考えました。

―― メイは見た目も普段の荒井さんとは全然違ったイメージですよね。あの衣装についてはどう思いました?

荒井萌さん写真

普段はとっても明るい笑顔の荒井萌さん

荒井:衣裳合わせのとき、最初は革ジャンはなかったんです。でも監督が置いてあったのを「これ着てみようか」みたいな感じで。それで着てみたら「暑いな」って(笑)。格闘シーンとか走ったりするシーンとかが多いのはわかっていたので「あたし汗っかきなのに大丈夫かな?」って。もうその衣裳合わせのときから汗かいてたので、そこが心配でした(笑)。でも、普段は着ない洋服なので、新鮮な感じがして楽しかったです。「ええー、これ着るの?」みたいな感じじゃなくて、自分じゃない人を演じられるのがすごく楽しみでした。

―― 主人公をああいう地味なキャラクターにした理由はなんだったんでしょうか?

安里:とにかく、映画の頭とお尻でまったく違う顔にしたかったんです。実際そうなってると思うんですけど、なるべく差を出すために、最初のほうは黒縁眼鏡で、髪も前髪がバーっと垂れていて顔が見えないくらいで、目の下に隈のメイクもして。それが衣裳もメイクもどんどん変えていって、お芝居もどんどん変わっていって、最終的にはまったく喋り方も違うし、顔つきも力強くなっていくようにしようと思っていたんです。

―― 後半ちょっと服が破れたりするのも狙いですか?(笑)

安里:そうですね、膝が出たり(笑)。

荒井:あれって、着るたびにほんとに破けていっちゃうんです(笑)。これじゃ(シーンが)繋がんないから、気をつけて履かなきゃみたいな(笑)。

―― 映画の最初ではメイが目立たなくて、むしろほかの登場人物のほうが主人公っぽい感じですね。

安里:そうですね、そこはかなり注意していて、ほかの人物を主人公の撮り方で撮っていって、メイはなんなら「あれ? あの子どこにいたかな?」くらいの感じで。

荒井:出てきたけど、あたし通り過ぎちゃったみたいな(笑)。

安里:最初はほかの人物が物語を引っ張っていくようにしていたんです。増村保造監督の『陸軍中野学校』(1966年)という映画があって、主人公が市川雷蔵なんですけど、物語の中盤までまったく主人公として撮られていなくて、後半になって主人公として動いていくんですね。それをイメージしていて、メイは前半はあくまで受け身の人間なんだってことを徹底していました。

―― メイも含めて、登場人物全員がすごくひとりひとりはっきりしたキャラですよね。

安里:ええ、キャラをひとりひとり立たせるっていうことにすごく注意していたんです。とにかくひとりひとり詰めていって、それぞれの家族構成から考えていって、膨らませていく中で喋り方だとか癖とかも決めていったんです。マンガみたいなキャラクターだし、はっきり言ってベタなキャラクターなんですけど、私は基本的に中途半端が嫌で、コテコテなことをするのが好きなんですよ。だから、まだ足りないくらいに思っていました(笑)。

「萌ちゃんはスイッチの切り替えがすごい」(安里)

―― 遊園地が舞台であるとか、ゲームが登場するというのは最初から決まっていたんですか?

安里:そうです。最初にプロデューサー陣から「ゲームをもとにした企画で遊園地と船を舞台としたホラーを2本作りたい」ということで話がありまして「どっちやる?」と聞かれて「じゃあ遊園地」って(笑)。ゲームについては、映画の世界の枠として利用しようと思ったんです。私の中で「こういう画を見せたい」とか「こういう仕掛けをやりたい」というのが先にあったので、それを繋げていくためにゲームというかたちを利用していったという感じですね。遊園地が舞台のホラーというところだけ守っていれば自由に考えていいということだったので、脚本家の方やプロデューサー陣と喧々諤々やりながら脚本を作っていきました。

―― 撮影も実際の遊園地を使っておこなわれていますけど、荒井さんは、遊園地での撮影を体験していかがでした?

荒井:アトラクションの中で撮影したところがあるんですよ。だからそのアトラクションの仕掛けがいろいろわかったのが楽しかったです(笑)。普段は遊園地ってそんなにゆっくりは見られないけれど、普段できないところで撮影を体験できて面白かったです。

―― 撮影の中で印象深かったシーンは?

荒井:メイがジェットコースターのレールの上に立って、ボウガンを構えるシーンがあるんです。そこでレールに立ったのは印象深かったです。

―― じゃあ、撮影中でつらかったことは?(笑)

荒井:寝れなかった(笑)。監督も寝てなかったですし、あとは天候です。雨が降って、撮影できないのが大変でした。

安里麻里監督

映画のイメージからは意外なほど朗らかな雰囲気の安里麻里監督

―― 映画の前半は、昼間の明るい中で事件が起きていくというのが新鮮な感じがしました。

安里:タイトルも『トワイライトシンドローム』なので、トワイライト=夕焼けのシーンを印象的に出したいというのがあったんです。なので昼、夕方、夜、という枠を作っていこうと思ったんです。それで前半の昼は、あえて遊具の明るい音楽と太陽の光の中で人が死んでいって、そこで変なチグハグな怖さを出して行けたらいいなと。それで人数が少なくなっていったときに暗くなっていって、緊張感のあるナイトシーンになればいいと思っていたんです。

―― そういう明るい中で人が死んでいくシーンって、演じる立場だとどんな感じがします?

荒井:やっぱり、準備しているところを見ているので「すごいなあ」と思うのもあるし、逆に面白く思えちゃうこともあるんです(笑)。大きい風船に追いかけられるシーンがあるんですけど、普段は見ないような大きい風船を使っているんで、本番前は「触りたい!」って思って(笑)。でも、やっぱりテストに入ったり本番になったりすると「あれは怖いものなんだぞ」って思えて、気持ちは作れたと思います。

―― そうやって怖い気持ちを作るときって、どうやって自分の中で感情を高めていくんでしょう?

荒井:うーん、自分の中で設定とかを考えたり、誰かが目の前で死んじゃう、しかも自分を助けてくれた人が死んじゃったりするとどうなるんだろうって、実際にはないから全然わからないんだけど、自分の中で考えて……。もし、こんなことが実際にあったら、もう立っていられなくなっちゃうと思うんです。でも、それをわかりやすく「怖がっているんだぞ、すごく怖いんだぞ」っていうのを見せるために、ちょっとオーバーにやってみたり、自分が思っていることを全部ブワーって出して「うわぁ!」みたいにやってみたりしました。……あ〜、全然説明になってない(笑)。

―― いえいえ、すごくよくわかります。

安里:萌ちゃんはスイッチの切り替えがすごいんですよ。普段はこんなふうに元気で活発な女の子で、ちょっとのことですぐケラケラ笑っているんですけど「よーい!」ってかかると、あっという間に顔がガラッと変わるんです。役者さんっていうのはそういうもんなんですけど、萌ちゃんの変わりようはすごいんですね。それはすごく驚きました。

―― 荒井さんからも話が出た大きな風船のシチュエーションはすごく印象に残りますけど、あのアイディアはどこから出てきたんでしょうか?

安里:昔、イギリスのテレビドラマで「プリズナーNo.6」(1967年)というのがあって、主人公がある村に閉じ込められていて、監視役で白い風船が巡回しているんです。それで逃げ出そうとしたら風船が襲ってくるという、なんともいえないシュールな怖さが面白いなと思って、それをアレンジしました。

「すっごいドキドキしています。舞台あいさつが心配(笑)」(荒井)

―― メイは星井七瀬さんが演じるチカコと一緒のシーンが多いですけど、星井さんと共演されていかがでした?

荒井:ほんとの姉妹みたいに仲良くさせていただきました! いろんなことを心配してくださったし、お風呂とか一緒にいったり、ご飯とかも一緒に食べたりしたし、いっぱい話をしました。

安里:面白かったのは、メイが真後ろにストンと倒れるってカットがあるんです。倒れたらカメラのフレームから外れて映らなくなるんですけど、倒れたあと、萌ちゃんが横にいる星井さんに「私、大丈夫かな、OKかな」って感じで、お姉さんにすがるような目で確認していたのがすごい可愛かったです(笑)。

トワイライトシンドローム デッドゴーランド劇中スチル

『トワイライトシンドローム デッドゴーランド』劇中より、荒井萌さん演じるメイ(左)と、星井七瀬さんが演じるチカコ(右)

―― チカコに関してはどんなキャラクターを意図していたのでしょうか?

安里:基本的には、決して悪い子ではないんだけど、自分の性格の優しさみたいなのに気づいてないという人物ですね。冒頭では平気で人のものを奪っておいてヘラヘラ笑っているんだけど、でも他人とわけへだてなく接して、誰にでも声をかけるし、それを立派なことだと思っていない。無自覚に優しさがある人という設定でやりましたね。この映画で、一番お客さんの気持ちをひきつけて欲しいのはチカコなんです。

―― ちなみに、星井さんは制作記者発表のときに「霊感が強い」という話をしていましたけど、撮影中になにか特別な出来事はありましたか?(笑)

荒井:たぶん、なんか見えてはいたんだと思うんですけど「言いたくない」みたいな(笑)。なにか聞かされて怖がらせられることはなかったです(笑)。

―― 荒井さんは、映画初主演になるんですよね。いよいよ公開が近づいて、今の気持ちは?

荒井:すっごいドキドキしています。舞台あいさつがあるじゃないですか。そこでちゃんと喋れるかなって(笑)。自分の名前はちゃんと言えても、「今回の役はどうですか?」とか聞かれたら答えられるかなとか、そういう心配ばっかりしています(笑)。(※インタビューの数日後におこなわれた完成披露試写会では見事に舞台あいさつをこなしていました!)

安里:お芝居ができるんだから大丈夫だよ(笑)。

―― 監督は公開を前にした心境は?

安里:実はまだ完成していなくて(※7月11日時点)、もうあと数日で完成なんですけど、いまはそのことで頭がいっぱいです(笑)。

―― お忙しいところすみません(笑)。それから、今回は同じゲームをもとにした『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』と続けての公開で、しかも『デッドクルーズ』は監督が映画美学校の同期の古澤健監督ですけど、ライバル心ってありますか?

安里:もう、二十歳のころから長年のライバル意識がありますね(笑)。ただ、ライバルとしてだけではなくて、相談もしたりとか、切磋琢磨するいい関係だと思ってます。最初はせっかくふたりで撮るんだから「なんか2作で共通したものをやろうぜ」と何回か密談はしたんですけど、途中からお互いあまりの忙しさに自分のことに一生懸命になっちゃって(笑)。結局、お互い好きにやろうってことでまとまりました(笑)。

―― では、最後に映画の見どころをそれぞれお願いします。

安里:全シーン楽しんでほしいんですけど、笑ってよし、泣いてよし、怖がってよし、ほんとに娯楽作品として楽しんでほしいです。

荒井:映画全体だと、誰が生き残って、誰がミッションをクリアするのかっていうのが見どころです。私の役だと、一番最初のメイと、一番最後のメイが全然違うので、そこの違いを意識して観てほしいなって思います。

(2008年7月11日/フォスターにて収録)

作品スチール

トワイライトシンドローム デッドゴーランド

  • 監督:安里麻里
  • 出演:荒井萌 星井七瀬 ほか

2008年8月16日(土)よりシアターN渋谷ほか 全国順次公開

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